ストック

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7/16/2023, 12:54:09 AM

お前は自分の歪んだ理想を果たすために何人、いや何十人、何百人の人間を犠牲にした?
どれだけの人間の心を踏みにじった?
俺はお前を信じていたのに、最初から利用するつもりだったのか?
お前にどんな事情があるかは分からない。
だが、これ以上、お前に世界を破壊させるわけにはいかない。


貴様はどれだけ馬鹿なんだ。
人間は、この世界は腐っている。それは貴様だって分かっているだろう?
どうして分からない。この世界に価値のないことが。何度自分が傷ついても世界の為に闘うのは何故だ?
正義感?信念?そんなものに縛られてこれからも闘い、傷つき続けるのか?
ならば、ここで決着をつけてやろう。


「終わりにしよう」
決して交わらない二人の言葉が奇しくも重なった。


~ Imagining Resident Evil 5 ~

7/14/2023, 3:44:45 PM

僕らはいつも一緒だった。
嬉しいときも悲しいときも、楽しいときも辛いときも、どんなときも手を取り合って分かち合ってきた。
そんな日々がずっと続くのだと無邪気に信じていた。

いつからだろう、僕たちの道が別れてしまったのは。
どちらが正しいのか間違っているのか、それに答えはないのだろう。
ただ、もう君の手を取れないことが、僕はひどく悲しかった。

それでも君は、ずっと僕の手をずっと取ろうとしてくれた。
道が別れてしまっても、こうして僕が武器を構えて対峙していても。
そんな君の優しさが、僕には眩しく羨ましかった。

最期に取った君の手は、出会った頃と変わらず温かかった。


~ With respect to 幻想水滸伝 II ~

7/13/2023, 12:27:11 PM

優越感と劣等感。それはコインの裏表だ。
昨日まで抱いていた優越感は、明日は劣等感に変わっているかもしれない。
薄氷の上に存在している優越感に縋ってなんとか毎日をやり過ごしている私は、さぞかし滑稽に見えるだろう。

ある人は「周囲と比べても意味はない、上にも下にもいくらでも人はいるんだから」と言う。
別の人は「自分は自分でいいと思えればそれで十分。人と比べる必要なんてない」と言う。
あなたたちは、とても強い人間なんだね。

私にとっては自分を支えにして歩いていくことはとても難しい。
自分を信じることはとても難しい。
「人は存在してるだけで価値がある」「誰もあなたの代わりにはなれない」
そんなこと、どうやって証明できるの?
誰かと比べた方が、手っ取り早く答えが手に入るじゃない。

「それじゃあ自分が苦しいだけじゃない」「自分を大事にしてあげなよ」と人は言うけれど、それはあなたが輝いているからじゃないの?
私みたいな弱い人間には、そんな言葉は眩しすぎるよ。

7/12/2023, 11:39:00 AM

「もし、これまでずっと生きてきた世界が突然なくなっちゃったら、どうする?」

彼女の突然の問いかけに、俺はすぐに答えを返せなかった。
さっきまで、他愛ない話をして笑い合っていたのに。

「どうしたんだよ、急に?」
「ねえ、貴方だったらどうする?」
彼女は尚も食い下がる。こうなった彼女は答えを聞くまで諦めないのは経験上わかっている。

「そうだなぁ…。そりゃ戸惑うし悲しいだろうな。今までの常識が全部変わっちゃうんだから」
「……」
「でも、結局は少しずつ受け入れていくしかないんだろうな。それが新しい世界なら」
「……そんな簡単に、割りきれるものかな」
「最後は割りきるしかないんじゃないのかな。泣いたって喚いたって、これまでずっと生きてきた世界は、もう手が届かなくなっちゃったんだから」
「貴方は強いんだね」

彼女は、車椅子に目を落とすと小さくため息をついた。
交通事故が原因で、彼女は足を失ってしまったのだった。

「俺は強くなんかないよ。今だって想像で喋ってるだけだから、本当にそんなことになったら、泣き喚くかもしれないし、立ち直れないかもしれない」
「……」
「でも、すぐには難しいと思うけど、新しい世界では以前は気づかなかったことに気づくかもしれない」
「……」
「それに変わってしまった世界でも、変わらないものだってあるはずだから」

俺は彼女の手をそっと握った。
手の甲に温かい水滴がポタポタと落ちてくるのを感じた。

7/10/2023, 11:33:30 AM

目が覚めると、もう日がずいぶん高く昇っていた。
休日だからって寝すぎてしまったな、なんだか損した気分だ。
今週はとても疲れたから、まあ仕方ないか。

リビングに来てみたけど誰もいない。
君はまだ寝ているみたいだね。
電気ポットでお湯が沸くのを待ちながら、白い蕾をつけた球根に水をやる。
そろそろ花が咲きそうだ。

インスタントコーヒーを入れて、君の部屋をノックする。
返事はない。
入るよと一声掛けて、ドアを開けて君の部屋に入る。
君はぐっすり眠っている。せっかくの休日だ、もう少しそのままにしておいてあげよう。
片づけは、まあ明日でもいいだろう。


スノードロップは、日を浴びて静かに蕾を揺らしている。

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