_好きな色_
__私はね、ピンク色が好き!
小学生の頃は、ピンクは可愛いイメージでとっても大好きだった。
ある日、トイレ待ちしている女子がやたら笑談していたので、わざとトイレから出ずドア越しから聞いていたら。
「ねーねー。ピンクってさ、ぶりっ子って感じしないー?」
「それなー、私ピンクもピンク好きな子も嫌ーい。」
「あーそういやあいつもピンク好きじゃなかったっけ?笑」
え…。
…私、結構皆にピンク好きって話た…よね?
…その日から、自分の好きな色を隠し続けていた。
「ねね!好きな色なにー?」
「…黄色が好きかな〜。」
「じゃあ今度の誕プレ黄色のキーホルダー買ってくるね〜」
別にピンク以外も好きだった。でも、過去の話を思い出すとどうも心が刺すような感覚がして、また馬鹿にされるんじゃないかって。
最愛で、大好きな人にもこの事を隠し続けていた。
「そう言えば、貴方は何色が好きなんですか?俺は緑が好きです。」
そういう彼は、笑顔で教えてくれた。
「私は…。」
あぁ、思い出しちゃった。分からない、この人は本当の私を知って嫌になるのかな?考えすぎなんかじゃない、私には、あんな過去のせいで…。
「私はっ…青色が好きかなぁ〜」
「そうなんですか。…嘘じゃないですよね?」
「えっ」
え、なに言ってるの…?嘘って、なに、?
「なんかその…いつも嘘ついている時の仕草に似ているなと思って…違いますか?」
…あぁ、そうだ。この人はそんな人じゃない。…私のこともしっかり見ていてくれる。
「…はは、そうだよ。黄色なんか、好きな色って思った事なんかないよ。」
「じゃあ、なんで嘘をつくんですか。」
___それから私は過去の嫌な思い出、隠すようになった事。全て彼に打ち解けた。
「…考えすぎって思ったよね。でも、私、私…っ」
「大丈夫です。」
彼はそっと私の頭を撫でてきた。
「俺もピンク色好きですよ。可愛いですし、それに貴方にとってもお似合いです。…俺は貴方の全てが好きですから。なにかあれば、俺にいつでも話して下さい…辛かったですよね、好きは人それぞれです。自分を追い込まないで下さい」
彼の優しい声と返しに一気に涙が溢れてきた。
これだ、私は、誰かに救われたかった。本当の自分を認めて欲しかった。
「…大丈夫ですよ。泣いても良いです。」
「…ありがとう…っ」
「…じゃあ今度、一緒にショッピングに行った時にピンク色の小物をプレゼントさせてください。貴方に本命で喜んで欲しいです。」
「うん…っ。ありがとう。」
私は彼にだけ、本当の自分でいようと決意した。
_あなたがいたから_
「ねぇ、貴方が居なくて、私が居なかったら私達今頃どうなってたんだろうね。」
「は?どゆこと?急にどうしたんw」
「ただちょっと考えただけ〜、」
「ん〜、…わからん。」
「え、なにそれ。本当にちゃんと考えてる?w」
「あぁ、考えてるよ。」
「じゃあちゃんと答えてよ。」
「俺の未来には、過去には、今お前がいない世界なんて考えられないから。」
「えっ…それって、つまり…どういこと?」
「…お前がいない。って事なんか考えた事ないから…。いないとか、会うはずもなかった。とか、絶対嫌だよ。」
「そ、そーなんだ…。貴方からそんな言葉が出るなんて考えもしなかったわ。」
「…それは酷くない?w」
「いやぁ〜?w…。ふふ、ありがとね。」
「…ん。」
_相合傘_
下校時刻、突然降り出した土砂降りの雨に私は呆然と突っ立っていた。
朝、お母さんから「今日、小雨だけど雨降るらしいよ〜、傘持っていけば?」って言われたけど、自転車通学だったし、小雨程度なら大丈夫だろうと、「ん〜、大丈夫。」で、流してしまった。折り畳み傘くらい持ってこればよかった。
雨宿りしようと雨が止むまで外をボーっと見ていると、ふと後ろから声が聞こえた。
「なにやってんの、ユキ。」
「んぇっあ、フユくんか。」
幼馴染のフユが私に声を掛けてきた。名前が"雪"と"冬"で、
初めて会った頃に似てるねって笑い合った時から徐々に仲良くなっていき、今じゃ親友と言ってもいい仲だった。
「いやぁ〜傘忘れちゃってね。」
「はぁ?天気予報観なかったのかよ。」
「えへへー…。」
フユくんは、呆れたように私を見ては、思いついたように言った。
「ったく、俺の傘入るか?」
「えっ、い、いいんですカ。…いやでもなんか悪いよ…。」
「なんだよ、まぁ嫌なら仕方ないな。じゃっ」
そう言って帰るそぶりをしたフユくんを私は全力で引き止めた。
「ま、まってまって、分かりました入れさせてください。」
「ふふーん、いいだろう。」
うぐ、うざいな。
「…はい、濡れたらごめん。」
「えっや、私が入れてもらってるんだから私が濡れなきゃいけないんだよ?」
「は、なに言ってんだよw」
最近、一緒にいる時間が少なくなったからちょっぴり照れくさいなぁ…。
「…最近一緒にいる数が減ったよな。だから、今話せてちょっと嬉しいかも。」
「えっ、私と同じ事考えてて笑うんだけど。」
「まじかw…なぁ、明日お前のクラス行くわ。」
「ん?まぁいいけど、私に会うためだけに?w」
「いや、そうだけど。」
「へ、あ、わかっ、りました…。」
なんか即答なのも、ちょっと照れるんだけどっ。
その後彼の傘で相合傘をしながら私の家まで送ってくれた。
…改めて優しい彼だなと思った。
_落下_
"一目惚れ"、少女漫画じゃあるまいし一目惚れなんてこの世には存在しない、よくそう思っていた。私には無縁の話だ。
両親が離婚して、親1人で仕事しなくてはいけなくなり、
小3年から、学童に通うことになってしまった。宿題も1人、遊ぶのも1人…尚更寂しくて、毎日が退屈でしかなかった。
自分の事を、1人でもいいから大切にして欲しい、誰でもいいから…。
人見知りで初めの頃は他校の子が沢山通っていて、何度か話しかけられたけどなかなか仲良くなれず、とうとうひとりぼっちになってしまった。
月日が経ち、六年生になった私は、新学期お祝い会で学童の何らかのイベントパーティーみたいなものが開催された。
先生が子供達の班を作り、班のみんなと協力して学童中に散らばっているクイズを解く、いわゆるお楽しみ会的な。
班分けされて、キャッキャいう女子たち。私はどこの班か呼ばれるまで黙ってるだけ。つまらない子すぎる。
私の班には、一、二年生の子供と、四年生の大人しい子と
一つ年下のクールな男の子。…そして私が班長…。殺す気ですか?ただでさえ人見知りで、なんか班の空気悪いしぃーーー…。
先生「班のみんなで協力して班長中心にクイズ解いてこいー!」
「よ、よしっ…みんな、がんばるゾー」
「おー!」「ん…。」「はーい。」
…死にたい…(泣)
_____数時間後
「もうそろそろで、時間だね。」
皆んなに話しかけるが誰1人として返してくれない。…皆んなして陰キャかよ…。一、二年生除いて…。
すると1人の2年生の男の子が突然急に走り出して、
「僕、最後のクイズ見つけてくるねーー!」
と、言って何処かへ行ってしまった。
「え」
「…は?」
「…え」
全員一瞬体をピタッと止めて、すぐに我に返り2年生を追いかけた。
「ちょ、ちょっとまってよっ…。」
やばいよ、私班長失格やん…。みんなに迷惑かけるし、班の子達全然楽しそうにしてなかったし…。
気がつけば、本当に勝手に涙が出ていた。
あぁ、そうだ、私は1人ぼっちが怖いんだ。本当は嫌なんだ。皆んなともっと楽しい話をしてみたかったんだ…。
必死になって学童中を探し回っている後輩達の中で、一つ年下の男子が、私が泣いているのに気づいてしまった。
「っ?!…。」
一瞬戸惑ってから、すぐに私のもとへ駆け寄ってきて、私を心配する様子で伺っていた。
「大丈夫ですか?…すみません、先輩ばかりに任せてしまって、大変でしたよね…。」
なぜか謝られた。え、えなんで?
「う、ううん。違うよ…いや違くないけど…。私、私のせいで皆んなに迷惑かけちゃって、その…。」
涙を流しながら、情けない姿を見せて、なにをすればいいのかわからない。…最悪じゃん。
「全然迷惑なんかじゃないですよ。むしろ俺たちのために進めてくれてありがとうございます。なので泣かないでください…。」
今度は褒められた、思考がうまく回ってない。彼が私の顔を覗き込んでいて、慌てて顔を隠した。
その時、初めて彼の顔をしっかり見た。そういえば、人見知りすぎて皆んなの顔すら見てなかったな…。
ドキッ
…彼の表情はとても心配している様子で焦っていた。こんな私のために心配してくれている。
そう思った瞬間。突然体に電気が走ったように脈が速くなって、また彼の顔を見れなくなった。
「さ、速く2年野郎を捕まえに行きましょ。」
「あ、う、うん。」
その後無事、2年生の子を捕まえて、彼が私の代わりに優しく説教してくれた。説教しているその姿は、凄く可愛く見えた。
なぜ、そう思ったのか自分でもよく分からない。…彼にお礼を言いたいな…。
___
__________
「あ、あの…っ。」
私は勇気を振り絞って、初めて私から声をかけた。
「?、はい。」
「今日は、あ、ありがとう、ございました。」
凄くぎこちなくなってしまった…。
「いや、大丈夫ですよ。俺も、ありがとうございました。」
その言葉をかけられ、また私の顔が赤くなった。…さっきからどうしたんだろう、私。
…学童でこの人が初めて私に笑顔を向けてくれた人。もっと話していたい。まだ話したい。そんな考えが頭をよぎる。
気づいた時には遅かった。彼の仕草を行動を目にした瞬間、胸が高鳴るこの感覚。私は彼に堕ちていた。
優しくしてくれたんなら、最後まで優しくてしてよ…。
また、会いに行っていいですか?
_未来_
余命三ヶ月と宣告された。自分でもまだその事が理解できなかった。俺にはまだやらなきゃいけない事がある。まだ彼女と結婚してまもない。彼女を本当に幸せにしてあげられない。
いやだ、まだ死ねない…彼女を置いていけない…。
家族にはこの事を伝えたが、彼女にはどうしても言えなかった。言わなきゃいけないのに、彼女とは、普通の暮らしをしていきたい。そう思ってしまった。
勿論家族には反対された。帰ってきなさい、と。
それでも俺は残り少ない人生のうちで、家族に感謝を告げ、彼女を選んだ。
「最近、ボーっとしてるね。なにかあったの?」
「あ、いや…何でもないですよ。」
彼女に心配されると、余計心が重くなる。こんなに優しい彼女と、もういられなくなると思うと、自然と涙が出てきた。
「えっ…⁈ちょっ…だ、大丈夫なの、?なにか嫌なことでもあったの?」
俺の顔を見ては焦りまくる彼女。なにやってんだ、俺は。
余計心配かけてどうするんだ…。
「…ふふ、すみません。貴方がどうしても優しく、つい感情が表に出てしまいました…。」
「そ、そんなことは…疲れてるのかな…。今日はもう寝よっか。」
彼女がそういうと、俺と一緒に寝室に行き、2人で一緒に寝る準備をした。
あぁ、こんな時間も明日にはもうなくなっているのかもしれない、絶対にいやだ…。
…そんなこと考えたってどうしようもない。俺が言わないって決めたんだろ。泣いてたってどうしようもないはずだ。
「…貴方は俺と一緒に過ごした時間。幸せでしたか、?」
「えっ?」
唐突に質問したので、一瞬戸惑ってからすぐに答えてくれた。
「当たり前だよ。貴方と一緒にいられたから、私は優しくなれた、貴方が居るからこそ、今すっごく幸せだよ。」
そういう彼女は飛び切りの笑顔を俺に向けた。
「良かった…。俺も今凄く幸せです。愛してます。」
「ふふ、急にどうしたのよ〜。やっぱり疲れてるのかなぁ、早く寝よっか!」
「そうしましょう、おやすみなさい。」
「うん、おやすみ。
」
この時間が、今一番大切な時間だ。俺は彼女と2人でベットに横になり、深い眠りについた。