そう言って念ずればすぐさま衣服が変わっていく。
純白のブーツはスニーカーへ。動きやすさを重視した道着は、対照的にピッタリと体の線が浮かぶジーンズに。半衣はゆとりのあるスーベニアジャケットに変わり露出されていた腕は光沢のあるジャケットの布地にゆったりと覆い被せられてしまって鍛え上げられた体躯は見えなくなった。
「おお、これ神様の好み?」
手袋を失ってむき出しの手のひらを眺め、ジャケットの裾を捲りながら訝しげに自身の着衣をまじまじと見ている
「馬鹿なことを言うな、おまえに似合うものを誂えた」
ふーん、と鼻を鳴らし、それって同じじゃない?と言いたげな顔をしているが断じて違う。
『でもさ、俺思念体だし、ここ神様の頭の中だから。全部神様の妄想だぞ?』
頭の中で何かが爆ぜるような感覚がした。
目の前の僕はいつものように口角を釣りあげニヤリと笑った。なんてことない純新無垢な笑顔。
だがそれはいまとなってめいっぱいの不気味さを孕んでこちらを真っ直ぐ見つめている。
瞬間、
ぐにゃりとその姿が歪み始める。
ああ、あ、あ
次の瞬間起こることを本能的に察知した私は固く目を閉じその場に屑折れた。
地面に伏せた私の頭上、すぐこそでばしゃん、ばしゃんという泥を叩きつけるような音が響く。
時折粘度のある重たい液体が顔に飛沫する。
消して目を開けては行けない。そう頭の中で警鐘がなるが先程までそこにあったそれが、愛しいそれが、日常であると信じたそれが目を開ければそこに平然とあると信じたい一心でゆっくりと目を開けた。
「貴様はその色が好きなのか」
山吹色のインナーに紺碧の道着を見て感想が口をついた。
「そういう訳じゃないが、あいつらはずっと同じの着てたから愛着はあるだろうな」
あいつら、とは素体になった2人のことだ。
ブーツや手袋も素体の身につけていたものと同じだ。
「別にこの服じゃなきゃいけないわけじゃない、ただ他のを着る気にもならないだけだ。」
「そうか、ならばたまには違うものも着るといい」
そう言って念ずればすぐさま衣服が変わっていく。
純白のブーツはスニーカーへ。動きやすさを重視した道着は、対照的にピッタリと体の線が浮かぶジーンズに。半衣はゆとりのあるスーベニアジャケットに変わり露出されていた腕は光沢のあるジャケットの布地にゆったりと覆い被せられてしまって鍛え上げられた体躯は見えなくなった。
「おお、これ神様の好み?」
手袋を失ってむき出しの手のひらを眺め、ジャケットの裾を捲りながら訝しげに自身の着衣をまじまじと見ている
「馬鹿なことを言うな、おまえに似合うものを誂えた」
ふーん、と鼻を鳴らし、それって同じじゃない?と言いたげな顔をしているが断じて違う。
未来に渇望したのはいつぶりだろうか
我が慢心によりしばらくは全てが我が思うままになると信じていた。
だがどうだろう。どれだけの力を手にしても邪魔が入り続けた。時にそれは時空をも超えた。
遂にその野望が砕けた時、私は未来に渇望した。再び彼らを打ち砕く日を。
粉塵に帰してそのあとを踏みつけてやると。
「私の好きな本」
今日は珍しく私について書こうと思う。
何を隠そう乙一氏の本である。学生の頃、毎日ひとりぼっちで馴染めなかった私は、多読家ではなかったものの目に付いた本は一通り読んだ。それしか娯楽がなかったのである。
司書の話はほとんど聞いてなかったしどういうきっかけだったかは何一つ覚えていない。短編集だったきがしてきた、ひとつおもいだした。
とにかく乙一氏の文章は私にとって魅力的で、校舎の気の甘い匂いがたらふく吸い込まれた図書館の本の表面ふわりと浮き上がり、視神経を通って私の脳の表面に吸い付くようだった。
描写はまるで今そこに私が追体験しているように景色を描くが決して助長すぎない。
しかし世の中を見てみれば村上春樹氏のように崇拝されていない。なぜだ。
ともすればきっと
目に入ったものを思考するスピードや反芻するリズムそれらがきっと私のそれと合ったのだろう。
人の料理も人の味覚も千差万別であるように
文章への味覚もまた千差万別であるのだろう。
私かこんなにも感動した乙一氏も他の人間からすればただの文章なのであろう。
だが私はいまここに書き連ねている。それは彼の文章に興味を持ち手に取る人が少しでも生まれてくれればと思っているからだ。
1人の読者として心動かされた分を返したい。
そしてあわよくば某氏の創作意欲を掻き立ててしまいたい。
だがそんな本音は置いておいてどうか毛嫌いせずに色んな本を読んで欲しい。なんのも面白みもない表現だが、きっと運命の出会いはある。
地平線まで続く荒れ狂った大地。
それを眼下に眺めながら物思いにふけっていた。
はるか昔私の胸に芽生えたとある野心はそ知らぬ顔をしているうちにむくむくと成長を遂げ、やがて私に師の命を奪わせた。
逆らうものは今この瞬間の世界だけでなく、他の次元からやってきたが全て亡き者にした。
1人を除いて。
最初こそ猛攻していたがいつの間にか抵抗をなくし私の半歩後ろを亡霊のごとくついてまわるようになった。
何がそうさせたのか、嫁と子を目の前で殺した時ですら苦悶の表情をみせその身を怒りで震わせたものの抵抗することは無かった。
世界の終わりに君と