失恋というやつか?
そう言ってすぐしまったと思った。
僕の何やらしょげたような表情を見て思わず口を滑らせたが、私も恋や愛情に類する感情を持っていると言う設定になっていることを忘れていた。
そんなんじゃない
私の心配を他所に僕は特に気づいておらず、その家を空ける時間の増えた同居人のことで頭がいっぱいのようだ。
ほお、
やめろ、俺の頭を覗くな。
なに、気にするでないよ
よう、神様。
なんだ、とこちらを一切見ることなく下界を見つめたまま不愛想な返事が返ってくる。
いや、特に用がある訳じゃない。
そう言いそうになってやめた、そう言うと間違いなくならばすぐ消えろと言われるのが目に見えている。
残念ながらこの神様はそんなにフレンドリーじゃない。
なにか共通の話題を探して神様が見ている景色を後ろから覗く。
ガラス玉のような丸いものの表面に色々な景色が目まぐるしく変わっていく。
時々そのひとつを思わしげに手を止めて拡大したり角度を変えたりして見つめている。
用事は無いのか
不意に神様から発された言葉に思わず焦る。
このままだと帰宅を促されるので次の言葉が出るまえにもし言葉が来ても上書きできるような声量で発した。
天気の話なんてどうだっていいんだ、私が話したいのは
薄ら赤いブルネットの髪を揺蕩わせる僕は地面から真っ直ぐに私を見上げていた。
その瞳は今から命を奪われる現実を真っ直ぐに見つめてそれでいて哀愁を孕んでいた。
なんてことは無い。予定されていた終わりを予定より遅れて迎えただけのこと。
「名残惜しいか」
「まあな」
ゆっくりとその喉笛に指を添わせる。
力を入れると共に気道はゆっくりと軋み空気の通り道を狭めていく。
僕は名残惜しく瞳を閉じその時を待っているようだった。
しかし、瞬く間にカッと瞳が開いて青色のそれがみえたかと思うと、いつの間にか私の手は僕をはなれ、私の胸部に強烈な痛みが走った。
「グッ、」
あまりの痛みにその場に頽れる。例えるなら鼓動する心臓を無理やり拳で握り込んで止めるようなそんな痛み
【ごめんな】
痛みにもがきながらも声がした方向、僕顔を見て理解した。
ああこれは罰かもしれない。