図書館に隣接する
古びたプラネタリウムは
土日ともなるとカップルや親子連れで
いつも賑わっている
僕はよく図書館に通い勉強をしている
高校一年の学生だ
夏休み手前の今から
自由研究の課題を探して居た
プラネタリウムに向かうカップルを見て
1人入りづらい僕は
長く図書館に通うものの
プラネタリウムに入ることは未だ叶わなかった
自由研究の課題という大義名分のもと
今日初めてプラネタリウムを利用する決意をした僕は
学校からの帰り
そのままプラネタリウムに入った
そこには感動があった
僕は初めて
たくさんの星に囲まれる体験を出来たのだ
うわあ…!!マジ星空って綺麗だ!
感動に浸って居て
プラネタリウムを出る頃に
あ!!!自由研究の課題だったのに
ただ観てただけだった…と
気が付いた
何してたんだろう…僕…
まあ…図書館で
星座の図鑑でも見るか…
僕…プラネタリウムで
何してたんだろうか…
その日は
星座に関する図鑑を隣接する図書館で借りて
まだ、星々の感動の余韻の残るうちに
家に帰って
図鑑を読み漁った
夜
自分の部屋の窓から見えた
オリオン座の三つ星に
見惚れた
自分は今度、転勤で東京に行く事になって
徐々に支度を整えている
早朝 近所のおじさんが散歩に出るところに出会して
幼少時代から自分のことを
よく見てもらって居た方なので転勤のご挨拶をしようと
声をかけると
おじさん
「おはようさん
なあ、にいちゃんはさ 神様っておると思うか」
自分「居ますよ きっと ところで…」
おじさん「転勤やろ?」
自分「え なんで」
おじさん「お前の神様が言うとったわ」
自分「あ…」
おじさん「まあ元気でな! 笑」
自分「家内ですか…」
おじさん「そうやあ〜 カミサマやぁ〜
大事にせーへんとあかへんで
カミサマだけしか知らんへそくりもあったりしてなあ」
自分「いつも家内共々お世話になって
ありがとうございました おじさんも元気で」
おじさん「わしゃもう年やからな」
自分「またまたー」
おじさん「散歩に行くのに邪魔せんといてー」
自分「あはは すみません また!」
おじさん「ほななぁ」
路地から抜けて裏通りを歩き
僕は小さな雑居ビルに入った
ここで僕たちは、小さく
何でも屋を営んでいる
ある日
オロオロとした様子のご婦人がやって来た
なんでも
猫を探して欲しいという
写真を数枚見せていただいた
オッドアイの白い美猫だ
誰かに誘拐されたんじゃないか
そんなことも話して居た
探しましょう
そういう事となった
先ずご婦人が住む自宅付近から
公園、学校付近
河原、公園付近の小さな林の中
犬の散歩する人などは見かけるものの
野良猫さえ見つからない
数日探し回り
焦りが出て来た
と
地図にない道を見つけ
車から降りると
細い道を歩き出した
両隣は閑静な住宅街である
雨が降り出す予報は外れることも無く
予定通り降り出した
僕はカッパを着て
道の隅々までじっと見ながら
ゆっくりと歩く
この道の先に小さな社と大木が見えた
こんな場所もあるんだな
などと見回しながら
社に手を合わせる
大木の上の方から
にゃあ
小さな声がした
あ!!
件のオッドアイの白い猫が
木の上で爪を研いでいた
降りられずに困っているようだったので
僕は車に一旦戻ると
ハシゴと網をとって来て
無事捕まえる事ができた
この社は
ご婦人の自宅から5キロも先の
場所だった
ご婦人は大層喜び
折り詰めまでいただいた
僕は久しぶりに
雑居ビルの真向いにある
こぢんまりとした
喫茶店で
お茶を飲んで
一息落ち着いた
-先生の憂鬱-
あれからどれほどの人が
戦争に駆り出されただろう
僕はとある小学校一年の講師を
担当させてもらっている
しがない学校の先生で、名はミタカと言う
今年で24になる
第三次世界大戦に於いては日本も巻き込まれて
ただでさえ少ない青年少女達が戦地に
赴くという
試練の時代である
僕は生まれつき虚弱体質で
考え過ぎると倒れてしまう
普通の生活がやっとという障害者のため
戦争に参加できない
失格者の位置付けがなされた
小学一年生では、図工の代わりに
プログラミングの授業が追加された
2040年、国の制定により
各学校は他国のサイバー攻撃から
子供達が自らで身を守るように
基礎防壁チップの入ったスマホを
支給する事になった。そのスマホを
学習の為、教材としても
扱うのである
まず子供達は配られたスマホと自分の
ナンバーを照合し自分のナンバーのスマホを
手にすると僕の授業で
基礎防壁チップの強化から
アップデートの仕方、基盤の改変方法など
覚えて行く。バックアップしながら授業を進め
体育では、他の講師と共に
災害時(敵軍の侵略時)からの
身の守り方と少数サッカーでチーム適性力と
マインドフルネスによる呼吸法で
落ち着き方を覚えさせている
低学年中学年で
マインドフルネスのマスターをさせて
プログラミングでの期末試験合格者に
自分の家のネットワーク防壁を作らせ
上級生にそれをアップデートさせたり
新たな防壁の開発をさせている
4年生、この時期になってくると
サイバー攻撃の仕方を知りたい学生が急増する
僕は戦地には赴けなかった分、学生達に
戦地に赴かせる授業をする事が
僕の心の澱となり
心痛で頭痛が絶えない今日この頃だ
講師を辞することも考えて
しかし、まだ働いている
この戦争で各国は大きな金の動きがある為
ロシアとアメリカとフランスが大々的に動き
歪み合い
戦争をやめないでいるのだ
人口の少ない日本は
しかしながら僕らのプログラムする
サイバーAIの人口で他の追随を許さず
アメリカの後ろ盾となって働いている
国々は肉弾戦に限っては傭兵を取り合いながら
ほぼサイバー領域での戦争を続けていて
近年は核AIの発動も辞さないとアメリカが
主張し出した
核AIというのは
米日のプログラマーチームが開発した
ひとつの国の
全ての電源が落とされてしまう大停電AIと
あらゆる電子機器の内部の基盤が焼かれ
2度と使い物にならなくなる
電子機器キラーAIが搭載されており大規模かつ
復旧にはおよそ
290日間もかかると言われる
核AIシステムである
これが使われた国は
想像するより早く大混乱が避けられないだろう
今の時代、公共交通機関、車、室内設備、施設
ほぼ全てが電気で賄われている
亡命しなければならない人で溢れかえることが
予想に難くない
戦争は本当に怖い
僕は最近
幼少期を思い起こしている
懐かしいまだ平和な頃
僕は絵を描くのに夢中だった
あの頃…
死んだじいちゃんや
ばあちゃんに
会いたい
暑い陽射しを浴びて
渓流で泳ぎ
スイカを食べて
風鈴の音色に耳をそば立てて
キャンプの傍ら
河原で絵を描きたい
魚が泳ぐのを見たい
僕はまた背伸びをして
次の授業の支度をする
了
10年前のこの病棟
この部屋で私は看護師のイトウさんから
時期が来たら
付き合おう。
と言われ
当時彼氏が居た私は
ありがとう。
と返事して居た
冬の日の出来事だった
あれから10年
また同じ病院に入院する事になった私は
もう当時の彼氏とは別れて
1人になって居た
若い日を思い出し
苦笑する
何と無く病室の窓の外を見やる
雨が風に煽られ窓を叩いている
(あの人は、今はどこに居るんだろう。)
懐かしい気持ちと
今のほろ苦い気持ちで複雑な心境だ
コーヒーを飲む。
窓ガラスに映る自分の顔がやけに老けて見えた
考え込むと眉間に皺を寄せてしまうせいか、
(とっくの昔に、結婚して
幸せで居てくれてるといいな…)
窓越しに見える大きなハナミズキの木が
雨に濡れている
私は不治の病で
今回は一時的な病気の悪化
10年の月日を経て
今こうして2回目の入院に至る
もうすぐ入院してから一年を迎える
いろんな人に出会い
様々なことを教わり
人の退院を見送り
そうして繰り返す日々に
多少は慣れてきたことと思う。
1年前の自分は
酷い暮らしっぷりだったなぁ
入院してすっかり
前の自分を他人事のように見て居た。
もう
退院まであと少し
出逢い、別れて
それはセットになっているから
誰にでもある
特別な事
日常に隠れる
特別な出来事
出逢い、別れて
また出逢う
この繰り返しで人は成長するのかもしれない
両親は元気にしているだろうか、
久しぶりに父さんに
電話をかけてみよう
父さん、喜ぶかな
了