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-先生の憂鬱-

あれからどれほどの人が
戦争に駆り出されただろう

僕はとある小学校一年の講師を
担当させてもらっている
しがない学校の先生で、名はミタカと言う
今年で24になる

第三次世界大戦に於いては日本も巻き込まれて
ただでさえ少ない青年少女達が戦地に
赴くという
試練の時代である

僕は生まれつき虚弱体質で
考え過ぎると倒れてしまう
普通の生活がやっとという障害者のため
戦争に参加できない
失格者の位置付けがなされた

小学一年生では、図工の代わりに
プログラミングの授業が追加された

2040年、国の制定により
各学校は他国のサイバー攻撃から
子供達が自らで身を守るように
基礎防壁チップの入ったスマホを
支給する事になった。そのスマホを
学習の為、教材としても
扱うのである

まず子供達は配られたスマホと自分の
ナンバーを照合し自分のナンバーのスマホを
手にすると僕の授業で
基礎防壁チップの強化から
アップデートの仕方、基盤の改変方法など
覚えて行く。バックアップしながら授業を進め
体育では、他の講師と共に
災害時(敵軍の侵略時)からの
身の守り方と少数サッカーでチーム適性力と
マインドフルネスによる呼吸法で
落ち着き方を覚えさせている

低学年中学年で
マインドフルネスのマスターをさせて
プログラミングでの期末試験合格者に
自分の家のネットワーク防壁を作らせ
上級生にそれをアップデートさせたり
新たな防壁の開発をさせている

4年生、この時期になってくると
サイバー攻撃の仕方を知りたい学生が急増する

僕は戦地には赴けなかった分、学生達に
戦地に赴かせる授業をする事が
僕の心の澱となり
心痛で頭痛が絶えない今日この頃だ

講師を辞することも考えて
しかし、まだ働いている

この戦争で各国は大きな金の動きがある為
ロシアとアメリカとフランスが大々的に動き
歪み合い
戦争をやめないでいるのだ

人口の少ない日本は
しかしながら僕らのプログラムする
サイバーAIの人口で他の追随を許さず
アメリカの後ろ盾となって働いている

国々は肉弾戦に限っては傭兵を取り合いながら
ほぼサイバー領域での戦争を続けていて
近年は核AIの発動も辞さないとアメリカが
主張し出した

核AIというのは
米日のプログラマーチームが開発した
ひとつの国の
全ての電源が落とされてしまう大停電AIと
あらゆる電子機器の内部の基盤が焼かれ
2度と使い物にならなくなる
電子機器キラーAIが搭載されており大規模かつ
復旧にはおよそ
290日間もかかると言われる
核AIシステムである

これが使われた国は
想像するより早く大混乱が避けられないだろう
今の時代、公共交通機関、車、室内設備、施設
ほぼ全てが電気で賄われている
亡命しなければならない人で溢れかえることが
予想に難くない

戦争は本当に怖い

僕は最近
幼少期を思い起こしている

懐かしいまだ平和な頃

僕は絵を描くのに夢中だった

あの頃…

死んだじいちゃんや
ばあちゃんに
会いたい

暑い陽射しを浴びて
渓流で泳ぎ
スイカを食べて
風鈴の音色に耳をそば立てて

キャンプの傍ら
河原で絵を描きたい

魚が泳ぐのを見たい


僕はまた背伸びをして
次の授業の支度をする



7/2/2024, 10:08:10 AM