好きだよ …っと
初々しい制服姿を彼女がLINEで
送ってきた
ぼくは 返信を返すと
仕事の休憩時間が終わり
いつも通りオンラインで打ち合わせ
彼女は年下で
今年の春から新社会人になった
ぼくで良いのか
ぼくは今年30になる
出会ったのは
昨年の夏
町内会で花火大会の屋台をする人間を
募っていると聞いて
ぼくは祭り事が好きなので
たこ焼きの屋台を番することになって
一緒に屋台の守りをすることになったのが
今の彼女だった
大人びていて ぼくは一目惚れした
しかし彼女からまだ学生と聞いて
ぼくは最初
諦めようと思った
しかし彼女もぼくのことが好きだと言ってくれて
付き合うことになった
その当時から
ぼくで良いのか
という彼女への疑問が
ふつふつと
浮かんでは沈むような
そんな感覚だ
彼女も社会に出たら
色々と忙しくなるだろうな
ぼくは少し寂しい気持ちになった
でも
ぼくと一緒に居る時の彼女の笑顔を
ぼくは信じている
また面接で落ちた
ぼくは海まで歩いた
そして
空に向かって
バカヤロウ!
と
叫んだ
海からの風が寒くて
ぼくは身震いすると
さ
帰ろう!
と
元気を出した
小さな頃のぼくの記憶
ある晴れた土曜日の午前中
ぼくは空にでっかいだるまや
招き猫がぷかぷか浮いてゆっくりどこかへ行くのを
見ていながら
学校の帰り道を歩いた
招き猫は紫色の座布団に座っていた
ダルマは手足が小さく出ていて
ぷかぷかと浮いてゆく中をジタバタしていた
ぼくは
ヘンなの
と思うだけで
特段不思議に思うことなく
家に帰った
ぼくはいつも平常心だ
他の人はどうかは知らないけれども
でも心を乱す時もある
図書室で感動する本と出会うと
心がざわつく
ぼくがぼくでいられない
なんてことだろうと思いながら
ページをめくる
ああ ぼくは
この時のぼくは
きっと泣いているけど震えているんだ
感動に巻き込まれて震えているんだ
ぼくはこんな感動できる文字を書きたい
でも大人にならないと
もっと本を読まないと
君との約束を
最後まで
守りたかったよ
僕は
そう言うと僕は離婚届にサインをして
指輪を外した
君は自由だ
お疲れ様
僕はそう言って 黙った
あなたには
世話を焼いたわ
元妻は
少し寂しそうに笑った
元気で
僕はそう言うと
家を出た
さあ
自分の道を自分に約束しよう