軌跡を辿るように本を読む
そこに何も無いのなら自分の軌跡を
見るがいい
顧みた軌跡は
どうもこうもそこにあるのみ
立ち上がって軌跡を作っていく
どうもこうもない
ただの軌跡だ
懐かしい風景を夢で見て
泣きながら起きた
久しぶりに泣いた…
私は今の有様を信じることができないのだろう
父さん 母さん…
もう無い風景を
まだ追いかけている
私は 今から
しあわせを探すから
頑張るね
私はテッシュで鼻をかむと
着替えるために起きた
不器用な生き方しかできなくて
それでも
生きている
生かされている
だから
大丈夫
大丈夫
好きだよ …っと
初々しい制服姿を彼女がLINEで
送ってきた
ぼくは 返信を返すと
仕事の休憩時間が終わり
いつも通りオンラインで打ち合わせ
彼女は年下で
今年の春から新社会人になった
ぼくで良いのか
ぼくは今年30になる
出会ったのは
昨年の夏
町内会で花火大会の屋台をする人間を
募っていると聞いて
ぼくは祭り事が好きなので
たこ焼きの屋台を番することになって
一緒に屋台の守りをすることになったのが
今の彼女だった
大人びていて ぼくは一目惚れした
しかし彼女からまだ学生と聞いて
ぼくは最初
諦めようと思った
しかし彼女もぼくのことが好きだと言ってくれて
付き合うことになった
その当時から
ぼくで良いのか
という彼女への疑問が
ふつふつと
浮かんでは沈むような
そんな感覚だ
彼女も社会に出たら
色々と忙しくなるだろうな
ぼくは少し寂しい気持ちになった
でも
ぼくと一緒に居る時の彼女の笑顔を
ぼくは信じている
また面接で落ちた
ぼくは海まで歩いた
そして
空に向かって
バカヤロウ!
と
叫んだ
海からの風が寒くて
ぼくは身震いすると
さ
帰ろう!
と
元気を出した
小さな頃のぼくの記憶
ある晴れた土曜日の午前中
ぼくは空にでっかいだるまや
招き猫がぷかぷか浮いてゆっくりどこかへ行くのを
見ていながら
学校の帰り道を歩いた
招き猫は紫色の座布団に座っていた
ダルマは手足が小さく出ていて
ぷかぷかと浮いてゆく中をジタバタしていた
ぼくは
ヘンなの
と思うだけで
特段不思議に思うことなく
家に帰った