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6/30/2024, 10:23:56 AM

赤い糸-天使と悪魔-



寝ていたのか、目を覚ますと
白い布団で寝ていたようだった

幻覚だろうか?

天井からニュッと
大きな蛇が頭をもたげて
こちらを見下ろしている

「生きたいか?」

と訊かれる

幻聴だろうか、母や父の声が聞こえてくる

(目を覚ましな‼︎ジュンコ‼︎…ジュンコ‼︎)

(ねえちゃん、なんでだよ…)

弟の声だ。懐かしい
久しく弟には会っていなかった。

何があったのか分からない

声に気を取られていたが
気付くと蛇が大きな口を

カアッと開けて
今にも私を頭から飲み込もうとしている。

私は、咄嗟に

「い、生き、生きたい!」

と、小さく叫んだ

蛇の血生臭く生暖かい息が
ふあっと顔にかかり
思わず顔を背ける

蛇のよだれが肩にダランと垂れた

「早う、それを言え。」

蛇は言うと私から離れた

「本当にとんでも無いやつだよ、お前は。」

蛇は言うと
私がキョトンとしているのを見て
唖然とした様子で

「お前は一度死んでおるのだ、俺が喰らって
お前は生まれ直す予定なのだよ。
俺はヤマタノオロチだ。」

ヤマタノオロチはそう言うや否や
あんぐりと口を開けた。

 ー気付くと四角い小さな窓のある
白い壁の6畳ほどの部屋に倒れていた。
立ち上がろうとすると眩暈がして
私は立ち上がることができないで居た

暑い。

部屋の窓に誰かが覗き込んだ。

「ガブリエルと言う。覚えなくてもいい」

よく見やると、白い羽が生えている。
…天使?

「お前は、魔物の子か?」

ガブリエルが訊いてくる

「訳がわかりません。」

私は正直に言うと

「メタトロンからマモンの再来があると聞いて
出向いてきたのだ。」
と言う

「正直に言え。魔物の子がこのまま地上に生まれ
落ちると地上に禍いが訪れる。未然に防がねば
ならんのだ。

今は天使と悪魔の戦闘の時代だ。
こんな時期の地上に
お前が降って来ようとしているのだ。

もう少しで大気圏突入だ。
正直なことを言え。そこで目が覚める前に
お前に何があったのだ」

私「蛇に喰われ…」

ガブリエル
「魔物の子じゃないか‼︎」

私「嘘!?」

ガブリエル
「何が嘘なものか。蛇と人間の子はいかん!
悪いがここで…」

ガブリエルが光る矢を構えた

私「ややヤマタのオロチに喰われ…」

ガブリエル
「何?あの神だと!まだ元気なのかあいつ…!?

我々がこの部屋を地上まで守る。お前が
地上に降りるまで悪魔から守るからな!

お前は突如として我らの救世主になったのだ」

訳がわからない。

ガブリエル
「お前はこの部屋ごと
地球の引力で今大気圏を越えて重力で
落下しているところだ。

現に立ち上がることができないし身体の自由も効くまい

お前の名はジュンコだ。
ジュンコ、地上に無事降りたら
我らのひとまずの任務は達成する

天からのジュンコがここに居るとなると
もう1人のジュンコ、魔物の子はどこだ…

メタトロンによると
ジュンコは2人対で生まれることになっていて
もう1人は魔物の子だと言うことだ。

皆で探し回っていて
悪魔の手に渡る前に見付けなければならない。

それはジュンコ、お前の使命でもある。

対決出来るのは、お前だけだ!」

窓の外が何か騒がしくなった

他にも天使が来ているらしい。

ガブリエル
「どうやら自害した母親からひとりでに生まれ
部屋を出て行った赤子がいるらしい。
魔物の子だとの情報だ。

ヤマタノオロチの子よ、
我々と共に戦うのだ!」

ガブリエルはそう言うと
燃える槍をこちらに向けた。

部屋の暑さと眩暈によって
倒れて動けないまま目が回り

私は目を閉じた。

しばらくの間
夢なのか白昼夢なのか
光の中を漂って居た

ハッと我に返ると
暗い部屋
畳の上で人が血の海に倒れているのを
見下ろして居た。

(あれ?この場面ってもしかして例の天使が言ってた…?)

産まれた赤ん坊が泣きもせず
今まさに歩こうとしているところだった。

思わず
光の中から私は
赤ん坊を抱きしめた

私「1人きりで怖かったね。一緒に生まれようね」

魔物のジュンコ (…アタタカイネ、アリガトウ)

そうして天使と悪魔の間に
神様が赤い糸で結んだ
2人で、1人となって
「人」として、また
生まれ直した私は



ここにいる。



6/30/2024, 4:11:00 AM

夏に影

未曾有の大地震によって
突如として全部を失った。
命までも…

 -気が付くと、ずっと昔に見て覚えていた
古いアルバムの当時30代の父と母が
その当時の若かりし姿で手を繋いで
笑い合って私の目前に立っていた

「おうジュンコ!お前も自由に元気にやれよ!」

父さんがそう言い母と顔を合わせると
2人仲睦まじく歩き出し
私の背中に手を振って
歩いて行った

母の父である
祖父、亡くなっているはずのおじいちゃんが
にこにこ笑い
遠くで手を振る

私は突然の開放感の中で
多少は戸惑いながらも
自分の命が尽きていることを知った

まるで歩行者天国を歩くように
人の交差し合う白いモヤの往来の中を自分も
どこへ行くのかわからないまま歩いた

フラフラと行く当てもなく
モヤと人の中を歩くと
一つの行列に出会した

人の川のように連なる一本道
周りの白いモヤが突如として消え
周りには蝉の鳴く田園風景が現れた
遠くには山々がそびえている

青い空とそこに浮かぶ入道雲

何事もなかったかのように
トンビが鳴く

細い舗装もされていない一本道を
人は歩んでいる。まるで登山にでも
出かけるような出立ちの人もいれば
浴衣姿にうちわを持つ人も居る

反対方向に降って来る人もいて
道幅はそんなに広く無いので
往来の最中お互いどちらかが
道を譲り合う場面もあった

小鳥の声が聞こえてくる
風がゆるゆるとそよいでいる
向かい風だけどごく弱い風だ

暑いけれど汗ばむほどの暑さではない
風が通るおかげだろうか

時々道祖神と共に
大きなどんぐりの木も生えている

歩いて行く途中
小さな子が水風船で遊びながら
お母さんとみられる女性に連れられ
こちらをチラチラと、
まんまるな目をしながら見やると、
女性に「はようせい」と、手を引かれ
たったか歩いて行った

ヒグラシの鳴き声が聞こえる夕刻頃
空は橙色に染まっていた。かと思うと
行く手のもう少し向こうから閃光が
小さくヒュルリ躍り出るや否や
どんっ!と音が鳴った
夕方からの花火か。花火大会かな…

気が付くと辺りでカエルの合唱が聞こえ出して
一番星も見えた。

のどかである。
田んぼでカエルが鳴いている

だんだん薄暗くなる道を登って行くと
T字路になり
土手の先に川が流れているようだ
さらさら水音が聞こえる。

いよいよ花火が大きく川の向こう岸で
花開いている

ヒュルル…どんっ!パチパチパチ…

花火は上を見上げて見ながら土手に座った
ふ、と気付くと川から
蛍の光がちらほら見えている
宙を漂いながら、ふうわり光って
ふうわり暗くなる

周囲に目を遣ると

人が楽しげに
話し込んでいたり、花火に
見とれている人も居る

川のこちら側の人がちらほら
透き通っているような気がする

どの人も花火に見惚れながら
思い思いの時間を過ごす中

私は、花火を見ながら
何故か泣けてきて

ただいま、戻りました。と
呟いた。

と…身体の中を風が駆け巡るような
感覚がした途端、指の先から足の先から
髪の毛まで段々と感覚がなくなって行く

重力も感じないし、ここの空気に
身体が溶け出しているように感じた

身体が風になって行く…

私は次の瞬間
雲の中を駆ける風になっていた
ぐるぐると雲を駆け巡る
稲光りを間近に見た。

気分はどこまでも行ける幸せを感じて
しかし再び重力を感じ始めて
あっという間に雨粒のひとつとなると

地面にぴしゃんと落ちた。

染み込んだ先に草の種が有り

今風にそよぎ、ふわっと揺れて
笑ったのが今の私

勿忘草。