赤い糸-天使と悪魔-
寝ていたのか、目を覚ますと
白い布団で寝ていたようだった
幻覚だろうか?
天井からニュッと
大きな蛇が頭をもたげて
こちらを見下ろしている
「生きたいか?」
と訊かれる
幻聴だろうか、母や父の声が聞こえてくる
(目を覚ましな‼︎ジュンコ‼︎…ジュンコ‼︎)
(ねえちゃん、なんでだよ…)
弟の声だ。懐かしい
久しく弟には会っていなかった。
何があったのか分からない
声に気を取られていたが
気付くと蛇が大きな口を
カアッと開けて
今にも私を頭から飲み込もうとしている。
私は、咄嗟に
「い、生き、生きたい!」
と、小さく叫んだ
蛇の血生臭く生暖かい息が
ふあっと顔にかかり
思わず顔を背ける
蛇のよだれが肩にダランと垂れた
「早う、それを言え。」
蛇は言うと私から離れた
「本当にとんでも無いやつだよ、お前は。」
蛇は言うと
私がキョトンとしているのを見て
唖然とした様子で
「お前は一度死んでおるのだ、俺が喰らって
お前は生まれ直す予定なのだよ。
俺はヤマタノオロチだ。」
ヤマタノオロチはそう言うや否や
あんぐりと口を開けた。
ー気付くと四角い小さな窓のある
白い壁の6畳ほどの部屋に倒れていた。
立ち上がろうとすると眩暈がして
私は立ち上がることができないで居た
暑い。
部屋の窓に誰かが覗き込んだ。
「ガブリエルと言う。覚えなくてもいい」
よく見やると、白い羽が生えている。
…天使?
「お前は、魔物の子か?」
ガブリエルが訊いてくる
「訳がわかりません。」
私は正直に言うと
「メタトロンからマモンの再来があると聞いて
出向いてきたのだ。」
と言う
「正直に言え。魔物の子がこのまま地上に生まれ
落ちると地上に禍いが訪れる。未然に防がねば
ならんのだ。
今は天使と悪魔の戦闘の時代だ。
こんな時期の地上に
お前が降って来ようとしているのだ。
もう少しで大気圏突入だ。
正直なことを言え。そこで目が覚める前に
お前に何があったのだ」
私「蛇に喰われ…」
ガブリエル
「魔物の子じゃないか‼︎」
私「嘘!?」
ガブリエル
「何が嘘なものか。蛇と人間の子はいかん!
悪いがここで…」
ガブリエルが光る矢を構えた
私「ややヤマタのオロチに喰われ…」
ガブリエル
「何?あの神だと!まだ元気なのかあいつ…!?
我々がこの部屋を地上まで守る。お前が
地上に降りるまで悪魔から守るからな!
お前は突如として我らの救世主になったのだ」
訳がわからない。
ガブリエル
「お前はこの部屋ごと
地球の引力で今大気圏を越えて重力で
落下しているところだ。
現に立ち上がることができないし身体の自由も効くまい
お前の名はジュンコだ。
ジュンコ、地上に無事降りたら
我らのひとまずの任務は達成する
天からのジュンコがここに居るとなると
もう1人のジュンコ、魔物の子はどこだ…
メタトロンによると
ジュンコは2人対で生まれることになっていて
もう1人は魔物の子だと言うことだ。
皆で探し回っていて
悪魔の手に渡る前に見付けなければならない。
それはジュンコ、お前の使命でもある。
対決出来るのは、お前だけだ!」
窓の外が何か騒がしくなった
他にも天使が来ているらしい。
ガブリエル
「どうやら自害した母親からひとりでに生まれ
部屋を出て行った赤子がいるらしい。
魔物の子だとの情報だ。
ヤマタノオロチの子よ、
我々と共に戦うのだ!」
ガブリエルはそう言うと
燃える槍をこちらに向けた。
部屋の暑さと眩暈によって
倒れて動けないまま目が回り
私は目を閉じた。
しばらくの間
夢なのか白昼夢なのか
光の中を漂って居た
ハッと我に返ると
暗い部屋
畳の上で人が血の海に倒れているのを
見下ろして居た。
(あれ?この場面ってもしかして例の天使が言ってた…?)
産まれた赤ん坊が泣きもせず
今まさに歩こうとしているところだった。
思わず
光の中から私は
赤ん坊を抱きしめた
私「1人きりで怖かったね。一緒に生まれようね」
魔物のジュンコ (…アタタカイネ、アリガトウ)
そうして天使と悪魔の間に
神様が赤い糸で結んだ
2人で、1人となって
「人」として、また
生まれ直した私は
今
ここにいる。
了
6/30/2024, 10:23:56 AM