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10年前のこの病棟
この部屋で私は看護師のイトウさんから

時期が来たら
付き合おう。

と言われ
当時彼氏が居た私は

ありがとう。

と返事して居た

冬の日の出来事だった

あれから10年
また同じ病院に入院する事になった私は
もう当時の彼氏とは別れて
1人になって居た

若い日を思い出し
苦笑する

何と無く病室の窓の外を見やる

雨が風に煽られ窓を叩いている

(あの人は、今はどこに居るんだろう。)

懐かしい気持ちと
今のほろ苦い気持ちで複雑な心境だ

コーヒーを飲む。

窓ガラスに映る自分の顔がやけに老けて見えた

考え込むと眉間に皺を寄せてしまうせいか、

(とっくの昔に、結婚して
幸せで居てくれてるといいな…)

窓越しに見える大きなハナミズキの木が
雨に濡れている

私は不治の病で
今回は一時的な病気の悪化

10年の月日を経て
今こうして2回目の入院に至る

もうすぐ入院してから一年を迎える

いろんな人に出会い
様々なことを教わり

人の退院を見送り

そうして繰り返す日々に
多少は慣れてきたことと思う。

1年前の自分は
酷い暮らしっぷりだったなぁ

入院してすっかり
前の自分を他人事のように見て居た。

もう

退院まであと少し

出逢い、別れて

それはセットになっているから

誰にでもある

特別な事

日常に隠れる

特別な出来事


出逢い、別れて

また出逢う

この繰り返しで人は成長するのかもしれない

両親は元気にしているだろうか、

久しぶりに父さんに
電話をかけてみよう

父さん、喜ぶかな




7/1/2024, 10:35:48 AM