《未来の記憶》
私は未来予知が出来る。
突然、頭に声が聞こえるのだ。
私は酒見リツ、大学生になったばかりだ。
こんなチート能力を持っているので、もちろん良い事も多い。
ただ、身近な人の死など分かりたくない事も分かってしまう。
私が小学生の時に祖母が亡くなった。
その時も頭の中に未来予知の声が聞こえた。
「お婆ちゃんが明日大通りで車に轢かれて死んじゃうよ」
小学生だった私は両親に未来が見える事を言い、祖母が明日病院に行く時に近くの大通りで車にはねられてしまうから、他の道を通ってほしいと泣きながら喚いた。
両親は私の言う事を信じてくれ、事故にあう日は母が祖母に付き添い、別の道で病院に行った。
結果、祖母は事故にあわなかった。
だが、一月後、祖母は入浴後にヒートショックを起こし亡くなってしまった。
これは偶然なのか、それとも死という運命は変えられないものなのか、私には分かりえぬ事だった。
***
あれから数年、リツは大学生になった。
最近のリツには気になっている事がある。
未来予知に、「佐々木サラが刺されて殺されるよ」と言われたのだが、私は佐々木サラを知らない。
まだ知り合ってない友人か何かなのだろうか?
それとも知り合っているけど、名前を知らない人なのだろうか?
偽名を使っている?
謎は解けないが、その佐々木サラが明日の夜、人気のない公園の脇道で刺されるらしいのだ。
もし知り合いならば何としても助けたいと思った、それと、もし今回助けられたとしても祖母の時のように、やはり死は避けられないのか確認したかった。
***
私は夜の公園の脇道に来ていた。
リツは公園に隠れ、脇道の様子を伺ったが、人通りがない。
「うーん、未来予知、、もしかして間違えた?知らない名前だし」
怖いし、もう帰ろうと思って脇道に出たリツの背後から女の声が聞こえた。
「佐々木サラ死ね!!」
グサッ
刃物がリツの背中に刺さる。
「・・・え」
グサッグサッグサッ
女は何度もリツに刃物を突き立てる。
「ぎゃああーぁ痛っ、痛いっ」
道路にうつ伏せに倒れたリツを更に刃物が抉る。
リツは這いずるようにして逃げる。
「ひぃっ・・・ひいぃっ」
「お前がぁ・・・、お前がルイ君を寝取ったせいで!ルイ君と結婚の約束までしてたのに!!」
女はリツに馬乗りになり叫ぶ。
グサッグサッグサッ
道路にジワジワと血溜まりが広がっていく。
すでにリツの瞳孔は開いたままでピクリともしなかった。
***
殺人現場近くに住む主婦達が、先日の事件の話をしている。
「怖いわねぇ、こんな近くでまさか殺人が起こるなんて」
「ほんとほんと、怖くて子供を公園で遊ばせる事も出来ないわ」
「でも、まさか犯人が人違いで別人を殺してしまうなんて・・・」
「間違われた人、なんで殺されたか分からないだろうね」
《ココロ》【ホラー】
私は森岡ララ、28歳。
コンビニでバイトしている、所謂フリーターだ。
一度、事務職の正社員になったが人間関係が合わず1年で辞めてしまった。
以降、バイトを転々としている。
私は他人に言えない胸の内を、自分のココロに向かって話しかけていた。
「はぁ、お母さんったら、いつまでも実家にいるんだったら家事を手伝うとか、家に少しでもお金入れるとかしなさいだって。」
「化粧品だとか服とか買わなきゃだし、ゲームにも課金しなきゃいけないし、お金ないっつーの」
誰もいない所で、声に出して言う時もあれば、声に出さずココロに話しかける時もある。
(はぁっ!?なんで私がこんなトイレ掃除なんかやらなきゃいけないの?綺麗な仕事しかしたくないのに)
(店長うるさい、たかだか数分遅刻したくらいで注意してくるなんて器小さすぎる!)
バイト先で、声に出さずココロに話しかける。
ココロに話しかけると、ココロは私の頭の中に話しかけてくる。
『そうなの?大変だね』
『ララは頑張っててすごいね』
『みんな、ララにもう少し優しくしてくれるといいのにね』
ココロはララの欲しい言葉をくれる。
そうやって、ココロとの会話を続けていたある日の事。
バイトに行くため着替えようと服を脱いだララは自分のお腹に口がある事に気がついた。
「え!???なに?!?何でお腹に口があるの!?」
驚愕のため見開いた目でお腹に出来た口をジッと見る。
口の形に似たできものかもしれないと思って触ってみたが、感触は唇そのものだった。
唇をめくってみると、なんと歯まであったのだ。
「きもっ、怖っ!」
ララは顔を歪めた。
そうだ、お母さんに見てもらおう。
ララは2階の自室から出て、リビングの掃除をしていた母親に声をかける。
「お母さん!ララのお腹に口が出来たんだけど!」
「えぇ?何言ってるの?お腹に顔を書いたってこと?へそ踊りでもするの?」
笑いながら母が言う。
「違うって!本物の口が出来たの!ほら見て」
ララはトレーナーの裾をまくり、腹を出し母親に見せた。
「口なんかないけど・・・何?ドッキリなの?お母さん掃除で忙しいんだから邪魔しないでちょうだい」
母は邪魔だと言わんばかりに、掃除機をかけ始めた。
ララは視線を母から腹に向けた。
「え?さっきはあったのに!どうして?見間違えた?」
まくったトレーナーを下げ、階段を上がり自室に戻る。
壁際にある姿見の前に立ち、もう一度トレーナーをまくりお腹を見る。
「えっ!??」
そこにはやはり口があった、それと同時に目玉が1つ増えていた。
口がへその辺りにあり、目玉は右脇腹辺りにある。
目玉はギョロギョロと動き、目を凝視していたララと目が合った。
「ぎゃあぁああーっ」
悲鳴の声に驚いた母親がドタドタと急いた様子で階段を上がってくる音が耳に届く。
「どうしたの!?ララっ!」
ドアを開けた母親は、腰を抜かし床に尻餅をついているララの側に駆け寄る。
「目が!お腹に目がっ」
ララはトレーナーをまくるが、やはりララのへそ以外には何もなかった。
「ララ・・・、本当どうしちゃったの」
心配の中に呆れを含んだ顔でララを見る母。
***
母親は結局信じてくれず、この目玉と口は他の人が見ると消える事が分かった。
しかし、分かったところで常時腹を晒しているわけにはいかない。
病気を疑いネットで情報を調べたが、こんな症状の病気なんて出てこない。
ララはココロに話しかける。
「ココロ、なんとかしてよ。辛いよ嫌だよぉ、なんで私だけこんな目に、こんな体で生きていきたくないっ」
お腹の口が答えた。
「そう、じゃあ私が体をもらうから、あなたはもういらない。私もいい加減あなたの愚痴を聞くの疲れたの」
ぐぇええっ
その声と同時に、ララは見えない何かに首を絞められた。息が出来ずに手足をバタつかせてもがく。
「コッ、、ココロォ」
首元を締める何かを引き剥がそうと、自分の首を指で引っ掻きながら涙目でララが呻く。
「さようなら」
ララの体から力が抜けくず折れる。
***
母親side
「行ってきまーす」
ララは笑顔で母親に声をかけ、玄関扉を開け出ていく。
「いってらっしゃいララ」
あのお腹に口が生えてきたと言ってきた、一件からララが変わった。
甘えがなくなり、バイトもやめ正社員の仕事に就き家に毎月お金を入れてくれるようになった。
家事も率先して手伝ってくれるようになったし、会社でも上手くやっているようだ。
まるで、生まれ変わったみたい。
「なんてね」
《遠く・・・》
遠くから声が聞こえる
『たすけて・・・』
時折すすり泣きも聞こえる
まただ、また聞こえる。
深夜、シーンと静まりかえった時間に聞こえる声。
声だけだ、周りには何もいない、もしかして見えないだけかもしれないが、、
私は震えながら布団を頭までかぶり、耳をふさぎ、ただただ時が過ぎ去るのを待った。
私は雪沢カナ、大学生だ。
上京し、アパートで一人暮らしを始めてから、怪現象が起こりはじめた。
助けを求める声や、すすり泣きが聞こえる。
決まってシーンと静まり返った夜更けに聞こえる。
はぁ・・・、引っ越したい。
しかしやっと見つけたお手頃な家賃のアパート。
新生活を始めたばかりで、バイトもまだ探せてないカナは金銭的な事情で引っ越したくても、引っ越せないのだ。
お祓いとかしてもらった方がいいのかな・・・。
もしお祓いしてもらうにしても、土地勘のないところだ。
お祓いを請け負ってくれる人がいるのかどうかもわからない。
明日、大学の友達に聞いてみよう。
怖がりながらもカナは眠りについた。
***
大学に行ったカナは、友人のトモカを捕まえて、最近の怪現象を話した。
「ええ?何それ、怖いっ」
「私も怖いよ、、トモカどこかお祓いしてくれる所知らない?」
「お祓い出来るかどうかは知らないけど、私の知り合いに霊が見える人がいるよ、しょっちゅう見えるからお守りに数珠をつけてるって」
「その人紹介してほしい、お願いっ」
カナは手のひらを合わせて頼み込んだ。
「うーん、とりあえず聞いてみるよ、ただ見えるって言ってただけだから、祓えるかはわからないよ」
「ありがとう、トモカ恩にきるよ、今度なんか奢らせて」
「はいはい、んじゃまた連絡するね」
***
数日後、トモカから電話があった。
「あ、カナ?例の人OKだって」
「本当に!?ありがとう、毎日怖くて怖くて・・・」
「その人、河村さんっていって、最初は断られたんだけど、その夜に河村さんの枕元に亡くなったお婆ちゃんが立って、お婆ちゃんから行ってあげてって言われたんだって」
「その話がすでに怖い」
カナは身震いした。
「まぁなんにせよ、河村さんと週末行くね、明日カナの家の行き方教えて」
「わかった、本当に助かるよ、河村さんにもよろしくお願いしますって言っておいてね」
***
そして、トモカと河村さんが来る週末が来た。
怪奇現象の起こる夜に来てもらった。
「どうも、河村ヒロトと言います」
河村は同じ大学の先輩らしい、トモカとは家が近所だったとか。
「あ、初めまして、雪沢カナといいます、このたびは来ていただいて本当にありが」
「早速部屋に入らせてもらっていい?」
カナの挨拶を遮って河村は言った。
「あ、ごめん、亡くなった祖母が早く行った方がいいと言ってたから」
「わかりました、こちらです」
カナはアパートの階段をあがりながら自分の部屋に案内する。
カナの部屋は205号室。
2階には206号室まであり、201号室が手前で206号室が1番奥になっている。
扉を開け、カナを筆頭に河村とトモカも中に入る。
まだ引っ越して間もない、必要な物だけが最低限揃ったシンプルな部屋だ。
壁際にベッドがあり、中央のラグの上にテーブルがある。
「コーヒーでも入れます、座って待っててください」
河村とトモカがラグの上に座り、カナを待っていると、すすり泣きのような声が聞こえてきた。
「え!?なに?本当に聞こえるんだけど」
トモカが引き攣った顔をしながら騒ぐ。
「しっ、静かに」
河村がトモカを嗜める。
河村は目を閉じ、すすり泣きを聞いている。
「雪沢さん、この声は霊ではありません、この部屋にそういった類の霊は見えません」
河村は立ち上がり、壁に耳を寄せた。
「こっちから聞こえる、雪沢さん、隣の部屋は突き当たりの206号室でしたよね?」
壁に耳を当てたまま河村が聞く。
「はい、そうです」
壁に耳を当てる河村を訝しげに見つめカナは言う。
「206号室に行きましょう」
河村はそう言い、玄関ドアの方に向かって歩き出した。
206号室の前に来た3人。
河村が206号室の玄関の呼び鈴を押す。
返事がない。
もう一度呼び鈴を押すが、やはり返事がない。
(ドンドンドンっ)
ドアを叩くが無反応だ。
「警察に連絡して中の様子を確認してもらおう」
河村はそう言いながらスマホで警察に連絡し、状況を説明した。
ほどなくして、警察が慌てた様子でやってきた。
部屋の家主に警察が連絡したところ、繋がったもののこの部屋にはいない事が分かった。
この部屋には女性が1人と、3歳と5歳の子供が住んでいる。
女性がこの部屋にいないのに、この部屋から声がするという事は、子供だけがこの部屋に取り残されている可能性があるという事だ。
警察で緊急性が高いと判断され、鍵が開けられる事になった。
ドアを開け、中を調べると、中には倒れている子供が2人いた。
息はあるらしい。
私達はあとで事情を聞きますと言われ、一旦部屋に帰らされされた。
その後、警察に子供達は救急車で運ばれ、一命を取りとめたと聞いた。
隣の女は子供を3週間近くも放置し、男の部屋にいたとの事だ、許せない、自分の事しか考えてない女にカナは怒りを感じた。
子供はその間、水や菓子など食べられそうな物を全て食べ、なんとか生きていたが、いよいよ食べる物も尽きて危なかったところだったそうだ。
私たちがあと1日でも遅く行動していたら、と思うと恐ろしい・・・、子供達が助かって本当に良かった。
深夜帯にしか声が聞こえなかったのは、単純に昼間は外の雑音で声が届かなかっただけのようだ。
カナは河村とトモカにお礼を言い、後日お礼に食事をご馳走する事にした。
それにしてもこの部屋壁薄すぎ。
お金が貯まったらやっぱり引っ越そうと思ったカナだった。
《誰も知らない秘密》【腐向け】
学校が休みの日に、友人達数人で行った映画館。
映画のクライマックス、友人達がスクリーンに集中している隙を狙い俺は隣のカイトと手を繋ぐ。
ビクッとカイトの身体が揺れるが、周りは映画を見ていて誰も気づかない。
指を絡め恋人繋ぎにし、親指で手の甲をさする。
別の日、学校が終わり、カイトとマックに行く。わざと帰りの電車が満員電車になる時間帯にするためだ。
電車に乗り込む俺たち、満員なので遠慮なくカイトにくっつく。
電車の混み具合によってはキスしそうになるほどの距離感になる。
そのままキスしてしまいたい気持ちを抑え込む。
2人きりの時にゆっくりすればいい。
人前でベタベタするどころか、手を繋ぐ事さえ白い目で見られる男同士の俺たち。
たまにこういった遊びをする、誰も知らない秘密だ。
《静かな夜明け》※パロディ?※
静かな夜明けが急に壊された。
「きゃーーーっ」
絹を引き裂くような女性の悲鳴だ!
私は明智小五郎ならぬ、菊池五郎、探偵をしている。
地方に仕事に来ていて、宿屋に泊まっていたのだが、早朝にその悲鳴は宿屋中に響き渡った。
なんだなんだ!ゴキブリでも出たか?
それともこの探偵の出番か?
急く心を抑えながら、俺は悲鳴の聞こえた方向に走った。
廊下を走った先に見えたのは、藤の間の部屋の前で腰を抜かしたようにしゃがみ込んで震えている宿屋の従業員だった。
藤の間は、俺が宿泊している菊の間の又隣だ。
俺は従業員の女性の様子を確認しつつ、扉が開けっぱなしになっている部屋の中をのぞいた。
そこには布団の上で血だらけになっている女性がいた。
俺は慌てて部屋の中に入り、女性の口元に手をかざし呼吸があるか確認しつつ、扉前にしゃがみ込んだままの従業員に「警察を呼んでください!」と叫んだ。
ここは探偵、菊池五郎の出番かと思った時に奴は現れたのだ、、
小学生くらいのメガネをかけた男の子が!!
青いジャケットに赤い蝶ネクタイ、そして半ズボン。
その子供は早速、自分の推理を口にしながら、現場をうろうろして証拠を探している。
「わずかですが、死体の周り濡れた跡がある。この椅子、荒らされた室内でこれだけがちゃんと立っている」
はぁぁ、こいつが来たならもう俺の出番はない。
そして、眼鏡の子供と一緒にいる保護者らしき男。
こいつは俺と同業だ。
○むりの小五郎。
みんな明智小五郎意識しすぎー
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そして、真相究明は進み、モブとなった俺は○むりの小五郎がトリックを明かし、犯人を言い当てる場面にいた。
『あなたが犯人です!』○むりの小五郎が眠ったまま言う。
まったく口元が動いてない、怖い。
というかありえない、いっこく堂かっつーの。
俺の探偵としての勘なのか、○むりの小五郎とあの子供には何か秘密があるような気がして仕方ない。
今回は主役を譲ってモブになったけど、いつか暴いてやるからなー