人さがし

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10/12/2023, 7:24:00 PM

─放課後─

今日も授業が終わり、部活が始まる。

一目散に教室から出て、職員室へ向かった。

「失礼します。美術室の鍵を貰いに来ました。」

先生はあまり居なかった。

静かに鍵を取って、礼だけして職員室を出る。

私の学校は美術室が三階にあるため、

階段を駆け上がり、美術室前まで急ぐ。

準備室も美術室も鍵が似ているため、

二つの鍵のどちらかが合うよう、交互に試す。

やっとのこと扉を開けると、

秋でも暑いと感じるほど空気の流れが悪かった。

その流れを変えるため、窓を全部開ける。

新しく涼しい風が美術室を変える。

その風には、ほんの少しだけ金木犀の香りも混じっていた。

この秋に染まった美術室を感じる為に、今日は急いで美術室に来た。

縦長い美術室の一番後ろから、見渡す。

夕暮れに染まり、金木犀がふと香る。

誰も居ない、私だけの美術室。

この時期の美術室が、私を魅了する。

10/11/2023, 1:27:16 PM

─カーテン─

下校のチャイムが鳴る。

玄関に行き、靴を履き替え、歩く。

自転車に乗り、家までゆっくりと走る。

どうでもいいことを考えていると、あっという間に着いた。

玄関を開け、誰かに聞こえるよう声を出す。

「ただいまー。母さん、今日テスト返されてさ、」

…何か違う。静かすぎる。出掛けてるのか?

「母さん?リビングに居るの?」

リビングにはいつも通り電気がついていた。

「居るなら返事してよ、母さん。」

その言葉と、ドアの開くタイミングは同時だった。

そこにはゆらゆらと揺れる、母さんだったものがあった。

「…は?母、さん?え…?」

窓は開いていて、カーテンを揺らしていた。

同時に、ぶら下がった“それ”も。

意味が分からない。ぐるぐるする頭で考える。

どうして?何で?僕のせい?誰のせい?

考えても息が荒くなるだけ。

涙が溢れるだけ。

その日のリビングには、

僕の嗚咽と、風の吹き抜ける音が木霊していた。

10/7/2023, 1:38:07 PM

─力を込めて─

怖くないと言えば嘘になる。
後悔が無いと言うのも嘘になる。
おかしいな。
だって俺は元々死ぬつもりだったんだぞ。
変わらなきゃって思わなかったら、
きっとあのまま自堕落な生活をループするだけだった。
好きなアニメを見て、夜中までゲームをして、
そんな同じような一日を繰り返して。
そこに何の意味があるのかを考えた時、
自分が存在している理由は分からなかった。
そもそも意味なんて無くても本当は良かったのかもしれない。
でも考え尽くしたからこうして必死になっている。
必死で。必死で、この重たい身体を。
ほら、俺は大勢の前で光と注目を浴びている、
今この世で一番かっこいい勇者だ。
だからもう、死にたいなんて言わないよ。

レゾンデートルの祈り 楪 一志さん
第六章【その時、彼は勇者になった】

オススメの本のあるページです。
誤字、脱字があるかもしれません。
彼は人の為に、そして自分の為に力を込めて。
必死に人生を変えようとしている。
これはそれの序章に過ぎない文です。
死にたいと思ったことのある人にはとてもオススメの作品です。
以上、オススメ本紹介でした。

10/7/2023, 8:14:23 AM

─過ぎた日を想う─

どうすれば良いのだろうか。

幸せだった生活を懐かしむこの気持ちは。

君と過ごした、楽しい日々を想うこの気持ちは。

どこに捨てようか、誰に譲ろうか。

毎日考えて、でも意味なくて。

楽しかったのは事実で、

好きだったのも事実で。

過ぎた日を想うことが、

無意味だというのもまた事実で。

どうすれば良かったのかな。

どうすれば幸せだったのかな。

どうすれば、笑っていられたのかな。

全ては君しか、解決出来ない問題。

僕だけでは、どうにも出来ないんだ。


題名【無力な僕】

10/6/2023, 7:36:40 AM

─星座─

夏のある日。

星が凄く綺麗に見えた。

星座がはっきり見える、

月明かりのない、静かな夜だった。

ちょっと気を抜いて、歩いていた。

あまりにも星達が綺麗で。

だから気づかなかった。気づけなかったんだ。

トラックが猛スピードで走って来ているのに。

気づいたのは、もうトラックと1メートルもない時。

その時『あぁ、死ぬのか。』と、それだけが理解できた。

人は死ぬとき、呑気になるのだと聞いたことがあった。

それを自分で実感するとは思わなかった。

僕が最後に見たのは、明るく輝く青の信号と、

それと同じくらい輝く、オリオン座だった。

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