─窓から見える景色─
君と昔、幸せに住んでいたこの家。
今でも残る、君の香水と思い出の品。
捨てようとしても、捨てられない。
君との時間が、無駄に感じてしまうから。
それに、捨てることが物理的に無理な物もあるから。
例えは、海の方面にある窓。
あの窓から見える景色は、綺麗な青色の海だった。
夜に海へドライブに行き、貝殻を集めて写真を撮った。
でも僕も君も、写真は壊滅的に下手で。一緒に笑ったんだっけ。
この海の見える窓は、君との思い出が詰まっている。
自分でも分かっているつもりだ。
捨てられないんじゃなくて、捨てたくないんだって。
いつか君が、ただいまって帰って来ないかな、って淡い期待を抱いて。
今まで通りに、何もなかったみたいに。
そんなこと、あるわけないと頭で分かっていながら。
今日も僕は、海の見える窓辺で眠る。
─形の無いもの─
何時からかは分からないけどさ、
君と居ると胸の奥で、何か感じるんだ。
それが一緒に居るに連れ大きくなってきてさ。
形の無いものから、何か分からない物が大きくなって。
最初はそれが何か分からなくて、病気かと思ったよ。
でもね、最近。やっと分かったんだ。
この胸の不思議な物が何なのか。
これはさ、『愛情』なんだって!
でも気づいた時には遅かったんだよ。
それが大きすぎて、僕を狂わせた。
君を殺したいと思うほどに。
だからさ、この大きい愛情を、受け取って?
そう言い包丁を持った友人に、僕は刺された。
友人はさ、一つ間違ってる。
その胸の感情はさ、愛情なんて綺麗なものじゃなくて、
独占欲って言う物なんだよ。
でももう、それを指摘することはできない。
君も僕も、もう手遅れなんだから。
─ジャングルジム─
ジャングルジムから君を突き飛ばした。
君の涙が太陽の光を反射して、美しく見えた。
大きな音と同時に赤い液体が君から流れる。
高さが2メートル程あれば、小学生が死ぬには十分。
動物特有の血の臭い。鉄の臭い。
ふと香るその臭いに、人間もやはり動物だと思い知らされた。
学校から先生が走ってくる。その顔は今まで見たことの無いものだった。
君が悪いんだよ。僕に言うから。
辛いなんて。死にたいなんて言うから。
家庭内の問題を僕に任せないでよ。
暴力?虐待?暴言?虐め?
僕には関係ない、筈だけど。
君だったから、殺した。大切な、君だったから。
申し訳ないなんて思わない。むしろ清々しい。
やっと君の願いを叶えることが出来たのだから。
良かったね。嬉しいね。大切で、大好きな君。
これが僕の『幸せ』を知った瞬間の話。
─秋愛─
夏よりはるかに涼しくなった。
でも相変わらず彼は、
いつものベンチで本を読んでいる。
秋の暖かい日差しを浴びて、
くれなゐに染まった葉が彼の読書を邪魔する。
こちらに気づいた彼が手を振ってくれた。
この秋の、今の瞬間しか味わえない恋。
私は彼と季節を巡るたびに、恋をする。
何故なら、彼のあの嬉しそうな表情は、
今しか見られないのだから。
題名【秋愛】
今家族と幸せなのも、
今友達と笑っているのも、
今生きているのも。
いくつもの偶然が重なりあってできる、
ただ一つの奇跡。
─大事にしたい─
私ね、友達が大好きなの!
家族が居ない私にとっては、
友達が家族で、とっても大切なの。
大切で、大好きで、大事なの。
それなのにさ、友達がね、こんなことを言ったの。
『貴方って、冷たくて酷い人。』って。
言われた時、意味が分からなかったの。
私はこんなに大好きで、沢山遊んで、大事にしてるのに。
「何でそんなこと言うの?」って聞いたの。
そしたらね、私以外に冷たいんだもの、って言われちゃった。
確かに友達以外はどうでもいいから、冷たくしてた。
でもそれだけで冷たいとか酷いって言うの?
そんなこと言うのは友達じゃない。
そんな友達、いらない。
気付けば友達だったものは、赤く、冷たくなっていたの。
冷たくて酷いのはどっちよ。
私じゃなくてアナタでしょ?