人さがし

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4/8/2023, 4:11:14 PM

お題【これからも、ずっと】
タイトル【自殺】

私は人を殺しました。
誰も起きていない、深夜1時に。

彼女は、自由が好きでした。
小説や絵など、自由に書けるものが好きでした。
彼女は、束縛が嫌いでした。
勉強や学校など、何かに縛られるのが嫌いでした。

彼女は、とても優しかったです。
自分が悪いと思って、「ごめんなさい」が口癖になっていました。

彼女は、自由に生きていました。
それはとても楽しそうに。

そんな彼女を、殺しました。
彼女の好きな自由を取り壊し、
好きな絵も、小説も、何もかも壊しました。

彼女は泣きました。
それはとても辛そうに。

私は自由だった自分を殺しました。
全てを自分の手で壊し、辛くて泣きました。

このままずっと自由だと、いつか限界が来てしまう。
ただでさえ、人間関係でストレスが多かった。
家族から「勉強しろ」と言われ、普通のことだけど辛かった。
だから死んでしまう前に自分で殺した。

自由な私は、消えてしまった。
これからも、ずっと自由な私は現れないのだろう。
できれば、自由な人生を送りたかった。


4月9日 1時04分 私は私を殺しました。

4/7/2023, 12:37:58 PM

お題【沈む夕陽】
タイトル【言いたかったこと。】

いつもの屋上。
いつもの景色。
いつもの二人。

変わらない日常に飽きていると理解したのは、
随分と前の事だった。

いつも通り朝6:30に起きて、
朝ごはんを食べて、
みんなと同じ制服を着て、
みんなと同じスクールバックを持って。

世間に合わせて、嫌われないように、置いてかれないように。
俺は別に嫌われてもよかった。
ただ、世間の集団圧力に負けて、つまらない日々を送っている。

でも、今はつまらないとはあまり思わない。
だって二人がいるから。

部活をサボり、いつもの集合場所へ行く。
いつバレるかわからない緊張感もありながら、非常階段をかけのぼる。

時計は五時を差していた。
沈む夕陽を横目に見ながら屋上へ行った。
そこにはいつもの二人が楽しそうに笑っている。

『あぁ、いいなぁ』

いつバレるかわからない緊張感、日常からはみ出て、自由になったような解放感。
こんなこと考えているのは俺だけだろう。
二人には秘密にしておこう。

────鮮やかな橙色の光が僕達を照らす。
こんな綺麗な夕陽なら、二人に言えるかもしれない。
ずっと前から言いたかったことを。
勇気を振り絞って、二人を見た。

『俺をつまらない日々から助けてくれてありがとう。』
そう沈む夕陽を眺めながら微笑む二人に言った。

4/6/2023, 4:25:16 PM

お題【君の目を見つめると】
タイトル【君のわがまま】

好きだった。
君のことが。
だから君の想いを知ってしまった時、
僕は君を見たんだ。

君はクラスの人気者。
僕なんか釣り合わないことはわかっているつもりだった。
周りからも、『諦めろ』『夢にも程がある』と馬鹿にされた。
でも僕に優しくしてくれた君を忘れることなど、
弱い僕には到底できない行為だった。

君への想いを拗らせていた時、君が声を掛けてくれた。
「放課後、教室に残ってくれない?」
何か言われるのだろうか。
それとも何かを押し付けられるのだろうか。
こんな僕に話し掛ける用途など、それくらいしか思い付かない。
でも、もしかしたら。
その『もし』に賭けることにした。

放課後。
クラスの奴等は部活へ向かった。
いつもの騒々しさのない教室には、ただ一人。
寂しさを纏った、男子生徒だけ居た。

嗚呼、やっぱり悪戯だったか。
好きな人に仕掛けられるなど、僕も不幸な者だ。
否、これは神様からのお告げなのかもしれない。
『お前には釣り合わない。諦めなさい。』
神様もそう言いたいのかもしれない。
神様にまで見捨てられるとは。
本当僕は不幸な者だ。
君にはもう『もし』なんて賭けたりしないよ。

僕の想いが枯れかけていたところだった。
「ごめん!私今日、日直だったからさ。」
遅れてごめんね!と僕に言った。
そして君は僕の前に来た。
少しの沈黙の後、君は言った。

「私ね、あと1ヶ月しか生きられないの。」

僕は驚いた。
ただ君は、そんな僕に目もくれず続けた。
「××病って言ってね。治る確率がとても低い病気なの。」

「...なんで僕にそのことを話したの?」
「わかんない。誰かにこの事知って欲しかったのかも。
余命がわかってたら、笑顔で...笑って送ってくれるかなって。」
彼女が言うにはこうだ。
自分が死ぬ時は笑顔で送ってほしい。
笑顔で送ってくれるほうが嬉しいから。
そして最後にこう言った。

「最後までわがままでも、笑顔で許してほしいから。」
その時、君は空を見ていた。
僕は君の目を見つめた。
よく見ると、涙がたまっていた。
それを見て、僕はこう言った。
「どんなにわがままな君でも許すよ」

君は死ぬのが本当は怖かったんだ。
でも周りを心配させない為に我慢してたんだ。
そんな君に掛ける言葉はあっていたか分からない。
でも、君のことは忘れないよ。
あの時、君が僕に笑いかけてくれたから。

優しい君のいる空に、今日も言った。
『どんな君でも愛してる。』





4/5/2023, 2:11:27 PM

君は覚えてる?
あのとても暑い夏の夜。
沢山の綺麗な星が輝く夜。
星空の下で言ったことを。

夏と言うのにぴったりな、とても暑い日だった。
君は白いワンピースに麦わら帽子。
まるでアニメの主人公みたいな格好をしていた。
君は僕に言った。
「今日の夜、あの場所に来てね!」
君があまりにも急に言うものだから驚いたよ。
でもその癖はいつものことだ。
僕は驚いたことがばれないよう、少し間を開けて言った。
「...わかった。」
その時の君は、僕に向かってとても嬉しそうに微笑んだ。

あの場所とは、僕と君がいつも夜に会う公園のことだ。
向日葵が咲き誇る公園。
いつも賑わっている公園。
しかもこんな真夏の公園だから人が多い。
でも夜になると、昼とは違った公園が見える。
中学生の僕には、その公園がまるで裏の顔のように見えた。

夜になった。
公園は誰も居ない。
綺麗な星や月が、公園を静かに照らしていた。

数分後、君が来た。
昼に見た格好ではなかった。
雰囲気がいつもと違う。
いつもの笑顔じゃなかった。
先に口を開いたのは君だった。
「...ごめんね、こんな夜中に。」
「いや、大丈夫。」
君の声は、凄く冷たかった。
「今日はね、伝えたいことがあったの。」
心臓の鼓動が速く感じた。
とても嫌な気配がした。
君のその言葉の続きを聞きたくない。
「...。」
思わず黙ってしまった。
君から言われた言葉は、僕が想像していたもの。
まさにそれだった。

「ずっと前から好きだったんだ。」
その言葉が僕の頭の中で木霊する。
どういう意味か聞こうとした。
君はそれを遮った。
「付き合ってほしいとは言わない。
最後に伝えたかっただけだから。」
君はそう口早に言って、帰って行った。

それから数日後、君は死んだ。
死因は“自殺”だったらしい。
その知らせを聞いた時、僕は君が言ったことの意味がわかった。
君が言った“最後”って、この事だったんだ。
それを知っていたら、僕も伝えられたのに。
あの公園のように、君の裏を知っていたら。
「君が好きだ」って、言えたのに。
とても後悔した。
後悔しても、君は戻ってこない。
この想いは伝えられない。
そんなことわかっているのに。

嗚呼、僕っていつまでも引きずるような奴だったんだな。
君が死んでから十年も経ってるのに、未だに忘れられない。
君のことを。
愛していた君のことを。
僕を好きと言ってくれた君のことを。
世界は君を忘れた。
もう過去のこと。
そんな言葉にまとめてしまった。
でも僕は忘れない。君のことを。
そうすれば、君は僕の中で生き続けるから。
いつか君に、面と向かって言いたいことがあるから。
だから今日も君に届くかなって、君と居た公園の星空の下で呟いた。
『いつまでも好きだよ。君のことが。』

お題【星空の下で】
タイトル【今日もまた】

4/4/2023, 2:20:36 PM

「それでいい。」
先生はそう言ってくれた。
真夏の、とても暑い日の部活で。

僕の家は、他の家庭とは違った。
お母さんもお父さんも高学歴だった。
だからお母さんは、僕も高学歴にする為、
「勉強、部活、全てにおいて優秀であれ」と僕に強要してきた。
何も出来ない僕には、お母さんが全てだった。

一日5時間勉強しろと言われたら一日5時間勉強した。
辛くても学校に行けと言われたら学校に行った。
そんな風に、お母さんに従っていた。

そんな僕は、勉強や部活は、いつも優等生だった。
ある一つを除いて。
その一つとは、人間関係だった。
何でもできる僕に自分みたいな奴が関わってはいけないから。
僕の学力が妬ましい、羨ましいから。
多分、そんな理由だろう。
ただ、そんなに辛いとは思わなかった。
人生に人間関係は必要なものだけでいいとお母さんが言ったから。
だから中学の友達なんてどうでもいい。

夏休み。
とても暑い日に部活があった。
その日は体調が悪かった。
だけどお母さんには言わない。
意見を言う権利なんて僕にはない。
だから今日も部活へ向かった。

いつも通り。
そのはずだった。
僕は倒れてしまった。

気がつくと、白い天井。
どうやら保健室に運ばれたみたいだ。
数分して、部活の顧問の先生が来た。
僕が起きたことに気づいた時、先生は驚いていた。
でもすぐにいつもの笑顔に戻った。
「お!やっと起きたか!」
先生は僕の寝ていたベッドの横にあった椅子に座った。
「先生、倒れてしまってごめんなさい。」
先生は不思議そうに僕を見た。

「なんで謝るんだ?」
「だって、迷惑かけて、」
その言葉を先生は遮った。
「お前は迷惑なんかかけていない。
倒れるなんて誰しもあることなんだから。」
いつもとは違う、優しさも含まれている真面目な顔だった。
「今まで倒れず頑張ったお前は凄いよ。
よく今まで頑張ったな!」
そう励ましてくれた。
「倒れるのが普通なんだ。
それでいい。それでいいんだよ。 」
肩を掴んでいた手を離し、先生は言った。
「お前は頑張った。
無理しないでいいからな。」
去り際に先生は言った。
その言葉にどれだけ救われたか。
先生は知らないまま生きるのだろう。

いつの間にか僕の頬には一粒の水滴が流れていた。
それは暖かく、そして少ししょっぱかった。
その涙がばれないよう、保健室を出ていった先生へ小さく呟いた。
「ありがとう。先生。」


お題【それでいい】
タイトル【救いの一言】

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