お題【君の目を見つめると】
タイトル【君のわがまま】
好きだった。
君のことが。
だから君の想いを知ってしまった時、
僕は君を見たんだ。
君はクラスの人気者。
僕なんか釣り合わないことはわかっているつもりだった。
周りからも、『諦めろ』『夢にも程がある』と馬鹿にされた。
でも僕に優しくしてくれた君を忘れることなど、
弱い僕には到底できない行為だった。
君への想いを拗らせていた時、君が声を掛けてくれた。
「放課後、教室に残ってくれない?」
何か言われるのだろうか。
それとも何かを押し付けられるのだろうか。
こんな僕に話し掛ける用途など、それくらいしか思い付かない。
でも、もしかしたら。
その『もし』に賭けることにした。
放課後。
クラスの奴等は部活へ向かった。
いつもの騒々しさのない教室には、ただ一人。
寂しさを纏った、男子生徒だけ居た。
嗚呼、やっぱり悪戯だったか。
好きな人に仕掛けられるなど、僕も不幸な者だ。
否、これは神様からのお告げなのかもしれない。
『お前には釣り合わない。諦めなさい。』
神様もそう言いたいのかもしれない。
神様にまで見捨てられるとは。
本当僕は不幸な者だ。
君にはもう『もし』なんて賭けたりしないよ。
僕の想いが枯れかけていたところだった。
「ごめん!私今日、日直だったからさ。」
遅れてごめんね!と僕に言った。
そして君は僕の前に来た。
少しの沈黙の後、君は言った。
「私ね、あと1ヶ月しか生きられないの。」
僕は驚いた。
ただ君は、そんな僕に目もくれず続けた。
「××病って言ってね。治る確率がとても低い病気なの。」
「...なんで僕にそのことを話したの?」
「わかんない。誰かにこの事知って欲しかったのかも。
余命がわかってたら、笑顔で...笑って送ってくれるかなって。」
彼女が言うにはこうだ。
自分が死ぬ時は笑顔で送ってほしい。
笑顔で送ってくれるほうが嬉しいから。
そして最後にこう言った。
「最後までわがままでも、笑顔で許してほしいから。」
その時、君は空を見ていた。
僕は君の目を見つめた。
よく見ると、涙がたまっていた。
それを見て、僕はこう言った。
「どんなにわがままな君でも許すよ」
君は死ぬのが本当は怖かったんだ。
でも周りを心配させない為に我慢してたんだ。
そんな君に掛ける言葉はあっていたか分からない。
でも、君のことは忘れないよ。
あの時、君が僕に笑いかけてくれたから。
優しい君のいる空に、今日も言った。
『どんな君でも愛してる。』
4/6/2023, 4:25:16 PM