君は覚えてる?
あのとても暑い夏の夜。
沢山の綺麗な星が輝く夜。
星空の下で言ったことを。
夏と言うのにぴったりな、とても暑い日だった。
君は白いワンピースに麦わら帽子。
まるでアニメの主人公みたいな格好をしていた。
君は僕に言った。
「今日の夜、あの場所に来てね!」
君があまりにも急に言うものだから驚いたよ。
でもその癖はいつものことだ。
僕は驚いたことがばれないよう、少し間を開けて言った。
「...わかった。」
その時の君は、僕に向かってとても嬉しそうに微笑んだ。
あの場所とは、僕と君がいつも夜に会う公園のことだ。
向日葵が咲き誇る公園。
いつも賑わっている公園。
しかもこんな真夏の公園だから人が多い。
でも夜になると、昼とは違った公園が見える。
中学生の僕には、その公園がまるで裏の顔のように見えた。
夜になった。
公園は誰も居ない。
綺麗な星や月が、公園を静かに照らしていた。
数分後、君が来た。
昼に見た格好ではなかった。
雰囲気がいつもと違う。
いつもの笑顔じゃなかった。
先に口を開いたのは君だった。
「...ごめんね、こんな夜中に。」
「いや、大丈夫。」
君の声は、凄く冷たかった。
「今日はね、伝えたいことがあったの。」
心臓の鼓動が速く感じた。
とても嫌な気配がした。
君のその言葉の続きを聞きたくない。
「...。」
思わず黙ってしまった。
君から言われた言葉は、僕が想像していたもの。
まさにそれだった。
「ずっと前から好きだったんだ。」
その言葉が僕の頭の中で木霊する。
どういう意味か聞こうとした。
君はそれを遮った。
「付き合ってほしいとは言わない。
最後に伝えたかっただけだから。」
君はそう口早に言って、帰って行った。
それから数日後、君は死んだ。
死因は“自殺”だったらしい。
その知らせを聞いた時、僕は君が言ったことの意味がわかった。
君が言った“最後”って、この事だったんだ。
それを知っていたら、僕も伝えられたのに。
あの公園のように、君の裏を知っていたら。
「君が好きだ」って、言えたのに。
とても後悔した。
後悔しても、君は戻ってこない。
この想いは伝えられない。
そんなことわかっているのに。
嗚呼、僕っていつまでも引きずるような奴だったんだな。
君が死んでから十年も経ってるのに、未だに忘れられない。
君のことを。
愛していた君のことを。
僕を好きと言ってくれた君のことを。
世界は君を忘れた。
もう過去のこと。
そんな言葉にまとめてしまった。
でも僕は忘れない。君のことを。
そうすれば、君は僕の中で生き続けるから。
いつか君に、面と向かって言いたいことがあるから。
だから今日も君に届くかなって、君と居た公園の星空の下で呟いた。
『いつまでも好きだよ。君のことが。』
お題【星空の下で】
タイトル【今日もまた】
4/5/2023, 2:11:27 PM