考える葦になりたい鳥

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5/10/2023, 7:36:57 AM

忘れられない、いつまでも。

心地よい記憶なら、どれだけ良いだろう。

残念ながら、僕の忘れられない記憶は痛々しいものばかりだ。口から幾度となく零れ落ちて、僕をまた傷付けていく。



でも、大丈夫。

「人間は忘れていく生き物」



…本当に?



あぁ、そうか。

僕はまだ人間になれない、愚かな鳥だった。



自分で自分の翼を傷付けるような、愚かな飛べない鳥。



扉の開いた鳥かごで、陽気な歌を囀る。
いつか、この場所から飛び立つ日を夢見ながら。



いつまでも。いつまでも。


3/25/2023, 1:26:17 PM

好きじゃないのに

この人はこう考えて、こう想って、こう行動して、今はこうで、きっとこの後こうするだろう。

その理由はこうで、こういうことがあったからだ。



これは僕の推測、あるいは想像、はたまた空想かもしれない。それはその人に対する、紛れもない、何かしらのの想いだ。

名前を付けるなら「愛」かもしれない。
あだ名をつけるなら「情」ともいうかな。



「好き」は不思議。

好きになって、恋して。
愛してほしくて、恋愛して。



愛されたら、愛して。

愛情が生まれて、好きが分からなくなっていく。



愛から目覚めて、情が残る。



好きじゃないのに。
心変わりして、愛が離れていく。

恋をしている時が、一番幸せで、一番残酷だった。
愛に溢れている時、一番辛くて、寂しかった。

情が残ったこの時、あなたの全てが分かる気がした。



ちゃんと愛せなくて、ごめんね。
好きで居てくれて、ありがとう。

ごめんね。

もう、あなたに僕がしてあげられることはないのかもしれない。ごめんね。

3/25/2023, 1:11:59 AM

ところにより雨

いつからだろう。

限りなく広がる曇り空も、靴を汚すだけだった水溜りも。なんとなく、好きになったのは。



空が陰る度に、君はいつも言っていた。
「わたし、雨女だから。」

君の顔が曇る度に、僕はいつも言っていた。
「そうかなぁ、お天気なんて操れないから。」
「君のせいじゃないよ。」



空がご機嫌になって、虹が出る頃に君はこう言う。
「うわぁ、眩しいなぁ。」

君の顔が晴れて、僕はいつもこう言う。
「ほら、虹が出てるよ。見てみて!」
「晴れて良かったね。」



朧げに見える二重の虹と、君の眩しがる後ろ姿を僕はカメラで切り撮っておく。
何枚も、何枚も。



君が雨女なんかじゃない、っていう証。



ねぇ、知ってる?
僕と君が一緒に居ると、空はいつもご機嫌になるんだ。

どんな雨だって、僕が曇りくらいにしてあげる。

だからさ。
僕の隣にずっと居てくれないかな?



そんな言葉を水溜りの空に浮かべていた。

君が長靴で飛び込んで、跳ねた雨粒と一緒に、僕の言葉が小さな虹を作った。

なんだ、君も雨が好きだったんだね。



ところにより雨。
そんな日は、君と一緒に居られる。特別な日。

3/20/2023, 12:28:47 PM

夢が醒める前に

久しぶりの夢の国。

僕には子供に戻る魔法は効かなかったけど、夢を見ているような気分に浸ることができた。



「幸せ」を絵に描いたような時間。



その時だけは、現実から離れて夢を見ることができた。

でも、夢はすぐ終わってしまう。

それを知ってしまっていたから、僕は子供に戻れなかったんだな。



痛む頭を帽子で隠して、眩しい光の中を足早に歩いた。
誰も、僕の虚ろな心になんて気が付かないだろう。

皆、楽しそうに、心から夢を見ている。



暗闇で声がする。
「今を楽しめているか?」と。

僕は心の中の子供の自分をなだめながら、七色に光るライトを振った。


なんでだろう。まだ、頭が痛いや。



僕は、ちぐはぐな心と身体を繋ぎ留めるように、夜空に揺れる光を切り撮った。

そこには、魔法にかけられた僕の分身が写っている。



こんな夢ならまた見てもいいかな。



今度来るときは、心の中の子供の自分と手を繋いで、思い切り魔法にかけられてみよう。

そして会いに行くんだ。
世界中に愛されているあの人に。

あの人は「よく来たね!」と言ってくれるだろう。


夢を見させてくれてありがとう。

「またね」

僕は、心の中で大きく両手で手を振った。
そう、まるで子供みたいに。

3/18/2023, 10:33:30 AM

不条理

突き刺さるような不条理に、どこまで耐えられるのだろうか。僕は自分に問う。

感謝はあれど、謝罪のないそれは、僕にとってはもう「当たり前」になりつつある。

感情の波が立たないほどに。

いくら水面を叩かれようとも、僕のまっさらな感情の湖には、波紋ひとつ、付けることすらできない。

あなたはそれにまた苛立って、どこにもやり場のない感情を投げ捨てる。



「またか」



そんな言葉を淀んだ空気と一緒に吸い込んで、まっさらな水面を思い浮かべる。



「大丈夫、大丈夫。」



魔法の言葉を唱えながら、僕は目を瞑った。

この世の全ての不条理から、僕を隠すように。

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