ところにより雨
いつからだろう。
限りなく広がる曇り空も、靴を汚すだけだった水溜りも。なんとなく、好きになったのは。
空が陰る度に、君はいつも言っていた。
「わたし、雨女だから。」
君の顔が曇る度に、僕はいつも言っていた。
「そうかなぁ、お天気なんて操れないから。」
「君のせいじゃないよ。」
空がご機嫌になって、虹が出る頃に君はこう言う。
「うわぁ、眩しいなぁ。」
君の顔が晴れて、僕はいつもこう言う。
「ほら、虹が出てるよ。見てみて!」
「晴れて良かったね。」
朧げに見える二重の虹と、君の眩しがる後ろ姿を僕はカメラで切り撮っておく。
何枚も、何枚も。
君が雨女なんかじゃない、っていう証。
ねぇ、知ってる?
僕と君が一緒に居ると、空はいつもご機嫌になるんだ。
どんな雨だって、僕が曇りくらいにしてあげる。
だからさ。
僕の隣にずっと居てくれないかな?
そんな言葉を水溜りの空に浮かべていた。
君が長靴で飛び込んで、跳ねた雨粒と一緒に、僕の言葉が小さな虹を作った。
なんだ、君も雨が好きだったんだね。
ところにより雨。
そんな日は、君と一緒に居られる。特別な日。
3/25/2023, 1:11:59 AM