夢が醒める前に
久しぶりの夢の国。
僕には子供に戻る魔法は効かなかったけど、夢を見ているような気分に浸ることができた。
「幸せ」を絵に描いたような時間。
その時だけは、現実から離れて夢を見ることができた。
でも、夢はすぐ終わってしまう。
それを知ってしまっていたから、僕は子供に戻れなかったんだな。
痛む頭を帽子で隠して、眩しい光の中を足早に歩いた。
誰も、僕の虚ろな心になんて気が付かないだろう。
皆、楽しそうに、心から夢を見ている。
暗闇で声がする。
「今を楽しめているか?」と。
僕は心の中の子供の自分をなだめながら、七色に光るライトを振った。
なんでだろう。まだ、頭が痛いや。
僕は、ちぐはぐな心と身体を繋ぎ留めるように、夜空に揺れる光を切り撮った。
そこには、魔法にかけられた僕の分身が写っている。
こんな夢ならまた見てもいいかな。
今度来るときは、心の中の子供の自分と手を繋いで、思い切り魔法にかけられてみよう。
そして会いに行くんだ。
世界中に愛されているあの人に。
あの人は「よく来たね!」と言ってくれるだろう。
夢を見させてくれてありがとう。
「またね」
僕は、心の中で大きく両手で手を振った。
そう、まるで子供みたいに。
3/20/2023, 12:28:47 PM