ネジが外れたウサギ

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10/30/2024, 7:43:47 AM

大きな成功を収めたあの実業家にも

恋というもう一つの物語では大きな失敗を

したこともあるだろう

きっとそれがまた別の誰かの心を動かして

きっとそれがまた別の事業の幹として生きる

10/29/2024, 6:19:29 AM

押入れの中に隠れて夜が明けるのを待っていた。

時間帯の夜ではなく

地獄という夜が明けるのを待っていた。



誰かが「もういいよ」と言ってくれるのを

暗がりの中でずっと待つしかなかった。



押入れの外では父親が兄に暴力を振っている。

「助けたい」

そう思っても動けなかった。


怖くて、悲しくて、怯える毎日。


ある日。それは起きた。

父親が突然苦しそうな声を出してもがき

僕のいる押入れの扉にもたれながら

ドスンと大きな音を立てて倒れた。



兄は倒れた父親を引きずって押入れの扉を開けた。

「もういいよ」

その時の兄の顔はあの頃の兄ではなかった。

もう、無数のあざと血が流れていた。

僕は幼な心に分かった。



兄は父親を刺したのだ。

父親の胸にナイフが刺さっていた。



兄は言った。

「ごめんな、アキラ。

これからは二人で新しい暗がりの中で

生きていかなきゃいけないんだ。

大丈夫。兄ちゃんがいるから。兄ちゃんが守るから」



新しい暗がりの中は

少しだけお日様の光を差し込んでいるように思えた。

10/28/2024, 7:39:26 AM

彼女が淹れる紅茶の香りが好きだった

ラズベリーのような甘酸っぱい香り。

「それを柔軟剤にできたら」

そうすれば彼女とともに生きていける気がするから。

チェーン店のドラッグストアでは見つけられなかった

けど、異国の地の郊外の雑貨屋で見つかった。


「フランボワーズの声色」

花言葉の通り、『優しい』彼女の声が聞こえてきた。


「これからずっと思い出を大切にするよ」

心からそう願った。

10/27/2024, 6:05:46 AM

「愛してる」をそのまま言わぬ君こそ俺限定の作家になれよ

二人だけで通じる「待ってるね」を作りたいよ、秘めた約束

10/26/2024, 4:07:19 AM

根暗な私はクラスの中の影のような存在だった。

写真を撮ると心霊写真の主役みたいな私。

ずっとその幽霊の役割を果たさなくてはいけない、

そう思っていた。

彼女に出会うまでは。



中学二年の夏。

ある日その子は転校生としてやってきた。

「初めまして、◯◯と申します。

ふつつか者ですが、よろしくお願いします」

(なんて丁寧な子なんだろう)

私はそう思った。

その丁寧さが誠実さの表れだった。

彼女の着飾らない素直で積極的な性格と可愛らしさが

相まって彼女はすぐにクラスのみんなと打ち解けた。


私だけやっぱり彼女とも話せなかった。

でも、彼女を見ていると

「何か行動に移さなきゃ」と思わせる魅力を感じる。

その『何か』がわからず私はもがいていた。

(あの子と仲良くなりたい。でも、どうすれば)

そう思っていると私はふと思い立った。


彼女がクラスの子とくすぐり合っているのを見て

私はふと椅子から立ち上がり

彼女に精一杯の大きな声で

「かめはめ波」と言いながらポーズを決めた。

それを見た彼女や他のクラスメイトは、あぜんとした。

そして、沈黙の後に爆笑の渦が沸いた。


かめはめ波をやったのをきっかけで

私は少しずつ彼女と気兼ねなく話せるようになった。

その様子を見たクラスメイトは

「◯◯さん変わったね」

と言われて、徐々にみんなと親しくなれた。


あのたった一つの行動で

彼女とはクラスの中で一番仲の良い友達になれた。

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