目の前が眩しい
目を開くと、そこは普段と変わらない町が広がっていた。
さっきまでの漆黒の世界が、夢かのようにどこまで青い空が続いていた。
ふと、携帯の着信音が聞こえてくる。
画面を見ると、雪から電話が来ていた。
日常に帰ってきたのだと、ほんの少し涙腺が緩くなる。
あの世界がなんなのかという疑問を持ちながら、電話に出た。
お題『どこまでも続く青い空』
秋が来て、寒くなる。
肌寒い風が吹き、周りの人々が厚着になる季節。
一人の青年が、クローゼットから長袖を取り出す。
皮膚を寒さから守れるように鎧を身につけ、扉を閉じる。
自分の心が傷つかないように、周りからの声を聞かないように、コートと耳当てをする。
自分の心のもやもやを、外に出さないように、荷物を鞄に詰める。
変わった自分を見せるために、寝癖を整える。
変わったんだと、自分に言い聞かせるように、玄関の扉を開ける。
昔の自分に蓋をするように、鍵を閉めた。
お題『衣替え』
お互いの武器が、ぶつかりあう。
刀と短剣
白と黒がぶつかりあい、眩い火花が開花する。
もう、何時間経ったのだろうか。
お互いの気力が、体力が尽きるまで戦い続ける。
叫びながら、お互いの気持ちを声に出しながら、お互いに命を狙う。
傍から見たら、お互い狂っているのかもしれない。
どちらも、過去のことを引きずり、勝手に肥大化して、自身の重りとしたのだから。
もう喉がカラカラだ
刀を持つ手の感覚は無い
まるで接着剤でくっ付けているかのようだ
荒く一息を付き、殺意を形にして相手に斬りかかる。
私たちは、終わりが欲しかった。
それはきっと今なんだろう
体力が無くなるまで、気力が無くなるまで、命が無くなるまで、声が枯れるまで。
この戦いは続く
終わらせるために
お題『声が枯れるまで』
絶対に叶えたい夢があった
何を犠牲にしても
誰を犠牲にしても
世界を犠牲にしても
絶対に忘れられない 手放せない夢
こんなに心血を注いでも 夢は叶わなかった
全てを巻き込んでしまった
いくら後悔をしても
この舵は止まらない
この航海は終わらない
進み続けるしかないのだ
後ろには何も無い
目の前にある全てを薙ぎ倒そう
どんな手を使ってでも
「あーあ」
過去でも未来でもない
0でも100でもない
そんな場所から とある存在が、この光景を見ていた。
一人の男の、一つの世界の始まりを。
「やっぱり」
退屈そうで、嬉しそうで、悲しそうで、怒ったような声で独り言を呟く。
「始まりはいつも、狂った奴の結果なんだよね。」
お題『始まりはいつも』
弓を弾き絞り、対象に向ける。
殺意の照準は、遠く離れた漆黒の化け物に向けられていた。
矢を放とうとしたその瞬間、背後から化け物の声が聞こえる。
まずい
後ろを振り向こうとしたその時、自身の横を何かが通る。
それは、すれ違い様に耳元でこう囁いた。
「こっちは任せろ」
音速のようにその人物は通り過ぎ、化け物が斬られる音と、化け物が苦しみ、倒れる音が背後から聞こえてくる。
馴染みある声の人物を信じ、前方の目標に向かって矢を放つ。
頭に命中して、化け物は倒れ込み、そして塵になって消えた。
一安心し、振り向く。
そこに居たのは、かつてすれ違い、今は同じ目標の為にすれ違った人物が居た。
お題『すれ違い』