弓を弾き絞り、対象に向ける。
殺意の照準は、遠く離れた漆黒の化け物に向けられていた。
矢を放とうとしたその瞬間、背後から化け物の声が聞こえる。
まずい
後ろを振り向こうとしたその時、自身の横を何かが通る。
それは、すれ違い様に耳元でこう囁いた。
「こっちは任せろ」
音速のようにその人物は通り過ぎ、化け物が斬られる音と、化け物が苦しみ、倒れる音が背後から聞こえてくる。
馴染みある声の人物を信じ、前方の目標に向かって矢を放つ。
頭に命中して、化け物は倒れ込み、そして塵になって消えた。
一安心し、振り向く。
そこに居たのは、かつてすれ違い、今は同じ目標の為にすれ違った人物が居た。
お題『すれ違い』
10/19/2023, 11:09:16 AM