少しでも好きな人の好みを知りたいと思うのは誰でもある。
少年は大好きな青年がいつも飲んでいるコーヒー飲むことで近づきたいとつい買ってしまった。
初心者にはいきなりハードルの高いブラックで。
存在感の放つコーヒーにしり込みしていると、青年が少年に気づき声をかけた。慌てる少年とコーヒーを見て青年は何となく理解をし、飲み物を取りに行った。
少年はじっとコーヒーを見て覚悟を決めコーヒーを飲んだ。
が、初心者にはやはりハードルの高い苦さで。悶絶していると、青年が飲み物を持って戻ってきた。
少年の名を呼び青年は向かいに座りじっと様子を見た。
悶絶から少し回復した少年はコーヒーおいしいなと、少し泣きそうになりながら言った。
青年は持ってきた飲み物を少年に間違えてしまったから取り替えないか?と言われた。
少年が青年の飲み物を見るとココアであった。
好きじゃないのにと少年は不思議に思ったが飲み切れる自信がなかったのでありがたく交換した。
美味しそうに飲む少年をほほえましく見ながら青年はコーヒーを飲んだ。
少年にとって特別な青年
本当によく笑うようになったな。
この仕事場に先に来たのは少年のほうだった。まあ、見目は少年だが実際の年齢はもっと言っているかもしれない。それは彼だけに限らないが。
ここで働く人は主に特殊な人間が多い、少年も例外ではなかった。
基本的に少年は一人で動くことが多く、ここ食堂に食べに来るときはほぼ一人であった。
整いすぎている顔は温度を感じす交流もあまりとろうとはしていなかった。
周りがやきもきしていたある日のこと、新しい人が入った。
青年が初めて食堂に来た時、少年が新人である青年の左裾を引きながら笑顔で入ってきた。
話に聞くとずっと探していた青年と漸く再会できたと嬉しそうに話していた。
その顔を見て心から安心できる特別な存在が隣に帰ってきたのだなと二人のやり取りを見てほほえましくなった。
色々とオススメを青年に説いている少年のオーダーを聞こうと俺はカウンターについた。
いつものように依頼を終え、依頼完了の報告を待っているときに依頼をたまにしてくる彼がこちらに来た。
彼は二人を見、一枚の招待券を渡し今回はこのようなイベントを始めたからやるとほぼ押し付けて帰っていった。
青年と少年は顔を見合わせ、後日行くことにした。
開催していたのはスポーツアトラクション。かなり盛況で人が多く人気であった。
青年と少年は始めてのイベントに表に出す差はあれど胸が高まった。
タイムアタックでは様々な障害を乗り越え一番にたどり着く際は、小回りの利く少年に利があり偏差で青年は負けてしまった。
少年は大いに喜び青年は悔しかったものの、晴れ晴れとした表情をしていた。
最近、気が落ちていたがそれがバカらしくなるほど楽しくて。
考えすぎるのも考え物だなと少年は思った。
帰りはおいしいものを食べながらアトラクションの話をして帰った。
私はその時あったことを忘れない。
ある日のこと。
私は自分に自信があった。お願いすれば大抵の願いは叶ったし、男も私に夢中になっていた。
だから今回も同じようにお願いすればすぐに聞いてくれると思っていた。
息抜きに散歩に出た先にいた彼の整った顔立ちに目がいき、彼と一緒に過ごそうと思い声をかけた。
私の声気付かず通り過ぎる彼に焦り、腕を掴み漸く彼を振り向かせた。
そこで彼は自分に声をかけていたのだと気づきぱちくりと目を瞬いた。思ったより幼い反応に少し驚きつつ一緒に共にしてほしいと声をかけた。
いつもなら大抵の男性は、意図を読み了承し一緒に店に入る流れだが、彼は意図を理解できず困惑した顔で私を見た。
彼は連れがいるのでと断り、私の手をやさしく外し離れようとしていたので追いすがろうとした。
ら、彼の後ろから彼の名であろう少女?少年の声がし、彼は振り返った。
彼の連れであろう、私よりも美しい少女?少年は一瞬私を鋭い目で見てきた。
身をすくませた私に興味をなくした少女?少年は彼の腕を掴み無邪気に笑いながら、離れていった。
彼も仕方ないと言いながらも柔らかい笑みを浮かべ一緒に離れていく。
あまりにも二人だけの世界に、この日初めての敗北と新たな胸の高まりに私は混乱した。
気にしていないと言ったらウソかもしれない。
両親が亡くなる前よりは起きたことが衝撃過ぎて記憶があいまいだ。
そのせいかしばらくは己の感情をどのように出せばいいかわからず周りを困らせていたと思う。
中にはあまりに気味悪く思ったのであろう、心無い言葉を浴びせてきた者もいる。
子供大人関係なく。
そんな中でも己の何が気に入ったかわからないが兄と慕う義理の妹ができ、君は優しいと言う唯一の友である少年と一緒にいるようになってから心がほんのりと温かくなっていく。
毎日の小さな幸せが積み重なる。
怒り、笑い、悲しみ、笑う。どこに行くにしてもいつも一緒であった。
心情的なせいで味覚も薄くなっていた上、食も細かった俺は三人で作り食べた握り飯を食べた時ぼろりと気付かずに涙をこぼしていた。
あたふたしてる二人を見て漸く俺が泣いていることに気づいた。
涙のせいもあるのか、はっきりと塩辛く感じたのはこの時が初めてで。
暖かくて、両親が死んだときに泣けなかったのが漸く泣けて心の底からほっとした。
夢が覚める前にとは言わない。
少しでも今を感じ生きていこうと慰めるために両側から抱き着いてくる二人を抱きしめながら心が少し埋まるのを感じた。