遊橙

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3/21/2024, 11:22:11 PM



私はその時あったことを忘れない。

ある日のこと。

私は自分に自信があった。お願いすれば大抵の願いは叶ったし、男も私に夢中になっていた。
だから今回も同じようにお願いすればすぐに聞いてくれると思っていた。

息抜きに散歩に出た先にいた彼の整った顔立ちに目がいき、彼と一緒に過ごそうと思い声をかけた。
私の声気付かず通り過ぎる彼に焦り、腕を掴み漸く彼を振り向かせた。
そこで彼は自分に声をかけていたのだと気づきぱちくりと目を瞬いた。思ったより幼い反応に少し驚きつつ一緒に共にしてほしいと声をかけた。
いつもなら大抵の男性は、意図を読み了承し一緒に店に入る流れだが、彼は意図を理解できず困惑した顔で私を見た。

彼は連れがいるのでと断り、私の手をやさしく外し離れようとしていたので追いすがろうとした。
ら、彼の後ろから彼の名であろう少女?少年の声がし、彼は振り返った。
彼の連れであろう、私よりも美しい少女?少年は一瞬私を鋭い目で見てきた。
身をすくませた私に興味をなくした少女?少年は彼の腕を掴み無邪気に笑いながら、離れていった。
彼も仕方ないと言いながらも柔らかい笑みを浮かべ一緒に離れていく。

あまりにも二人だけの世界に、この日初めての敗北と新たな胸の高まりに私は混乱した。

3/21/2024, 3:04:17 AM



気にしていないと言ったらウソかもしれない。

両親が亡くなる前よりは起きたことが衝撃過ぎて記憶があいまいだ。
そのせいかしばらくは己の感情をどのように出せばいいかわからず周りを困らせていたと思う。
中にはあまりに気味悪く思ったのであろう、心無い言葉を浴びせてきた者もいる。

子供大人関係なく。

そんな中でも己の何が気に入ったかわからないが兄と慕う義理の妹ができ、君は優しいと言う唯一の友である少年と一緒にいるようになってから心がほんのりと温かくなっていく。

毎日の小さな幸せが積み重なる。
怒り、笑い、悲しみ、笑う。どこに行くにしてもいつも一緒であった。

心情的なせいで味覚も薄くなっていた上、食も細かった俺は三人で作り食べた握り飯を食べた時ぼろりと気付かずに涙をこぼしていた。
あたふたしてる二人を見て漸く俺が泣いていることに気づいた。

涙のせいもあるのか、はっきりと塩辛く感じたのはこの時が初めてで。
暖かくて、両親が死んだときに泣けなかったのが漸く泣けて心の底からほっとした。

夢が覚める前にとは言わない。

少しでも今を感じ生きていこうと慰めるために両側から抱き着いてくる二人を抱きしめながら心が少し埋まるのを感じた。

3/19/2024, 11:39:19 PM

何だこの状況は。

少し用があり離れていた隙に、青年が酔いつぶれたので回収してほしいと二人の上司から話を聞き、慌てて青年の元へ戻った。

青年に飲ませた本人であろう少年にとって苦手な彼女がそばにいた。ひきつる頬でその人物に声をかける。酔いにより気分がいい彼女は少年に気付きにこにこ笑いながら彼いい飲みっぷりねーと宣う。

慌てて青年を見やると顔を真っ赤にした青年が頭をぐらぐらさせていた。
少年はすぐに青年をあてがわれた部屋に連れていき、寝床へ突っ込んだ。
うつらうつしている青年に気分は悪くないかと聞くと潤んだ目で少年を見て舌足らずな言葉で少年の名を呼び、少年の頭を撫でた。
普段笑わない青年のふにゃふにゃした笑顔に少年はかつてないほど胸が高まる。

固まったままの少年に青年は首を傾げ、いきなり少年の腕を掴み寝床へ引きずり込んだ。
油断していた少年はびっくりして気が付いたら青年に抱きしめられ身動きができない。

慌てて青年を見ると、青年は安心しきった顔で寝ていた。
少年は諦めそのまま青年に火照る顔を隠すように抱き着き寝ることにした。

次の日青年が驚き固まってしまったのは言うまでもない。

3/18/2024, 11:34:06 PM

彼の背中を見る。

彼は幼き頃に魅入られた剣のせいで、現世で生きにくい思いを押し殺している。
彼は賢かった。そのせいで己は異質だと理解した。理解し、世にとってどのような振る舞いが善であり求められているのかわかってしまった。

己の本当の願いを押し殺すことによって。

渇望が年々ひどくなったとしても必死に己の思いを押し殺している。
押し殺しているところしか知らない知人は彼を善良な人だと評する。

本当はそんなことはないのに、彼はそういうものなのかと周りからの評価を受け入れる。

けれどそれはあまりにも不条理で。
彼を知り大事に思っているものからは、もっと自分に正直に生きればいいのにと歯がゆく思う。

いつか彼が押しつぶされないよう、彼の隣にいつもいる。

3/18/2024, 8:29:18 AM

遠い記憶でいつだったかもうわからない。

どうしてその記憶だけ覚えているのか、はたまたただの幻影かはわからない。

けれど、確かに言えることはそれはとても大切で美しかったことだけはわかる。
この記憶は間違いなく自分であって自分ではない、本来なら覚えていないはずのものだ。

この世の何よりも美しくて、届かなくて、でも諦められなくて。
そんな自分に気づいた唯一が、悲観したけれど何も言わず己自信を見てくれていた。

泣いているように見えたのであろう。そういわれたが己はそんなつもりはなかった。

泣かないよ

それを聞いて唯一はただそっと隣によりそった。

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