彼の背中を見る。
彼は幼き頃に魅入られた剣のせいで、現世で生きにくい思いを押し殺している。
彼は賢かった。そのせいで己は異質だと理解した。理解し、世にとってどのような振る舞いが善であり求められているのかわかってしまった。
己の本当の願いを押し殺すことによって。
渇望が年々ひどくなったとしても必死に己の思いを押し殺している。
押し殺しているところしか知らない知人は彼を善良な人だと評する。
本当はそんなことはないのに、彼はそういうものなのかと周りからの評価を受け入れる。
けれどそれはあまりにも不条理で。
彼を知り大事に思っているものからは、もっと自分に正直に生きればいいのにと歯がゆく思う。
いつか彼が押しつぶされないよう、彼の隣にいつもいる。
3/18/2024, 11:34:06 PM