流行曲で救えない命

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1/7/2026, 11:52:36 AM



すっと消えそうな白い肌をなぞっていた。
指先に柔い感触とどうしようもない冷たさが返ってきて、ああ、もうこの体にいたひとはもう帰ってこないのだと静寂の中で現実味を帯びたあの人の死がわたしの頭の隅で揺れた。

赤色が滲んで目に刺さる。雪が赤色に触れて緩やかに溶け、まるでかき氷にかけられたシロップのようだった。
赤が雪に流れ出ていくのに比例して、ただでさえ白かったあのひとの肌が雪と同じ白に染まる。

失われていく、その事実を眺めていた。
「…………」
言葉は出なかった。言葉なんて、出るわけが無かった。
胸の奥で感情たちが言葉を得られないままに喉奥まで押し寄せ、結局言葉にならないまま呼吸だけが目の前の白い景色に溶けていく。
ただ、じっと眺めていた。慟哭さえもできないまま、眺めていたんだ。

1/6/2026, 10:47:56 AM

君と一緒に

終わらない夢を見ている。文字通り永遠に終わらない夢を。
夢の終わりが次の夢の始まりを呼んで、一つの夢が終わる度に世界は白に還る。
この世界では時間という絶対的な理すら意味を成さない。命という存在意義すら曖昧だった。
その夢の終わりを目指して、わたしたちは歩いている。

一つの夢が終わる。ぱきぱきと宝石に亀裂が入るように景色が崩れ落ちていく。
「良い夢だった」
終わりゆく夢の中、あなたがそう呟いた。
「……これがあなたにとって良い夢?」
「うん、良い夢だったよ」
あなたは奇麗に笑う。今の夢の何処が良い夢だったのだろう、わたしにはわからなかった。
「ねぇ、次はどんな夢を見ようか」
あなたがそう問う。どんな夢を見たいか、わたしにはわからない。
「……あなたが一緒なら、どんな夢でもいい」
そう答えたわたしの髪をあなたの指先がやわらかに撫でた。

「次は一緒に終われたらいいね」
終わりない夢を見ている。文字通り永遠に終わらない夢を。
いつまでも続く夢のなかで、あなたとふたりで共に終われる結末を探している。

1/5/2026, 11:39:47 AM

あなたの目に、この世界はどう映るのでしょう?
あなたが見続けた世界の姿を見てみたい。あなたがふれた世界の形に触れてみたい。
密やか願いを抱えながら、そっとあなたの瞳に映った青を見上げる。
空は澄んだ冬晴れだった。澄んだ青は綺麗だ。綺麗、なのに。
……こうやって自分の目で見るよりも、あなたの瞳越しに見た青の方が奇麗だと思えてしまったのは何故なのでしょうか。
分からない、分かるようになってみたい。そうやって伸ばしたかけた指先は投げ出されて、代わりに湿度の無い風があの人の頬を撫でていった。

1/4/2026, 12:52:49 PM

幸せとは

わたしにとって、それはあなたがいてくれること。あなたが傍で呼吸をしてくれている、それだけでしあわせだった。それがどんな間違いだって、どんなにおかしいと言われても。
共に未来をみてくれた。共に明けない夜の底を歩いてくれた。弱さも晒せた。あなたがいてくれたから、わたしは生きてこられた。
あなたに生かされていた命だった。確かに、しあわせだった。

「ね、しあわせになって。しあわせになって、はやく私のことを忘れてね」
――それなのに、今。あなたはそうやって緩やかにわたしの頬を撫でていなくなった。

「…………わたし、は……」

何かが壊れて、世界の音がひどく遠くなる。まるでこの世界の全部、全部色褪せてしまったみたいで。
あなたがいない世界では、わたしは呼吸さえ上手にできないの。
あなたのいない明日に、わたしは生きる意味すらないの。

「……ねぇ、わたし、わたし……」
粒になって溢れた涙が頬を濡らして、泣き声にすらなれない透明な声で喉が引き攣る。

――あなたと手を結んで死にたかった。それはもう、叶わない願いになってしまったけれど。

1/4/2026, 5:21:42 AM

日の出

世界が呼吸を始める。
薄闇に光が差して、眠っていた世界が動き出す。
いつもこの瞬間が少しだけ苦手だ。今として呼吸していたはずの昨日が過去になって、残酷な時間の流れが今日を連れてくる。
「…………」
微かな時明かりに染まるカーテンを指でなぞった。その指は震えている。
このカーテンを開くも開かないも、今、世界が呼吸を始める前のこの瞬間は、全て自分次第と思えるような気がした。。
『大丈夫だよ』
投げ出しかけた指先がそっと誰かに支えられた気がして、カーテンを開け放つ。
「……会いに来てくれたの」
まだ空は微かに暗い。

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