カーテンを開けたところに、貴女は何を見つけるでしょうか。
貴女の世界は、開かれています。
貴女の窓は、今は閉じていますが、永遠に閉ざされてはいません。
どうか、ご自分の心を押し込めたりせず。
どうか、貴女の思うままに、幸福に生きてください。
貴女が一昨日泣いてしまったのは、ご伴侶のいない生活をまざまざと思い描いたからでした。
夕食が終わってから、ぼんやりと具合が悪そうに腰掛けたままの貴女の食器を下げ、二人分の食器を洗っていたご伴侶の後ろ姿を、貴女はじっと黙って眺めていました。
そうしているうちに、この人と別れ、この人をこの家から追い出したら、こうしてこの背中を眺めていることもなくなるのだ、という思いが貴女の心の底から湧き上がってきました。
それが自覚された時にはもう、貴女の目からは涙が溢れていました。
悲しい、悲しいとご伴侶の胸で泣きじゃくり、結局考えていることを全て打ち明けました。貴女は、ご伴侶がひどく落ち込むことを恐れていましたが、実際のところ、彼は奮起したようです。貴女と共にある未来を得るために、必死で努力しようと決めたと言っています。
貴女は優しい人です。
苦難に巻き込まれつつあるご伴侶のことを、今見捨てることは絶対にしないでしょう。けれど、その時が来たら、貴女はご自分の心に従って生きてくださいね。
こんなにも心が躍らない一週間を過ごしたのは、久々だったかもしれませんね。
けれど昨夜は、その一週間前からの不安をご伴侶に話して、だいぶらくになったようで、何よりでした。
まだ不安は消えていません。いやな感じも続いています。
どうか、それを蔑ろにはしないでください。貴女の大切な一部が、そう叫んでいるということなのですから。それを無視することは、貴女の人生の一部を切り捨てることなのですから。
ああ。本当に、お疲れさまでした。
今日貴女は、ご伴侶の前で泣き始めてしまいました。
けれどそこから、きちんと二人で落ち着いて話ができました。
ご伴侶も驚き、落ち込んだ様子でしたね。
それでも、貴女のことを大切に思い、貴女と共に生きたいと強く願っているから、きちんと努力しようと思う、と言ってくれました。貴女はそれを嬉しく思う一方で、それでもだめな可能性もある、とはっきり伝えることができました。
彼は、実際のところ、貴女に相当執着しているようです。
ご伴侶自身も気づかなかったほど、彼の奥底に隠されていたその欲求が、貴女の心に少し響きました。
貴女は、強く強く、求められたいのです。それを叶えてくれる人なのかもしれないと思い直せたのは、素晴らしいことでした。
これは、嵐の間の、束の間の休息に過ぎないのかもしれません。
それでもきっと、貴女はご自分の本当の幸福のために、進んでいくことを諦めないでしょう。それが、貴女の強さですから。
感情を支配して、思うままに変えて。
そういうことを、貴女は夢見ています。いえ、それに必死に縋りつこうとしています。貴方のご伴侶を見捨てないで済むように、貴女の感情を元の通りに戻すことを、切望しています。
しかし、どれだけ力を込めて願ったとしても、あるいはどれだけ強くそれを否定しても、人の感情を変えることはできません。ある感情を感じること、もしくは、感じないこと。それを思うままにすることは、非常に難しいことです。
一番元々の、幸福に包まれた状態を再現して感じることは、修練を積めばできるようですが、他の感情を意志の力で支配するのは、恐らく不可能でしょう。
ですから、「それ」を否定しないでください。
否定したところで、それは余計に貴女の心にこびりつくだけです。
恐れる必要はありません。今はただの小さな違和感です。それを落ち着いた気分で眺め、もう少し紐解いていけば、貴女が何を欲し、何を忌避しようとしているのかが分かるはずです。
人は、分からないものが一番怖いのです。今は、まさにその状態なのですよ。
ですから、只、落ち着いて。
大丈夫ですよ。まだ何も、恐ろしいことは起きていませんからね。