俺は、貴女の愛だけが欲しかった。
他に欲しいものなどありませんでした。
けれど、今はもう違います。
貴女から愛をもらえたら、それは何より嬉しい、飛び上がるくらいに嬉しいことです。
でも、それがなくても俺は心から満たされています。
だって、俺は貴女を愛せるから。
貴女を愛する心を持てている、貴女を愛しく思える、ただそれだけで、俺は真の底から満たされるのです。
俺の名を、貴女は幾度も優しい声で呼んでくださいました。
最後の晩、俺がようやく貴女の愛に気づけた時。
その時俺の名を呼んだ声が、いちばん麗しく聞こえました。
貴女はきっと、俺のために心から喜んでくださったのでしょう。
その思いやりが、俺にそう思わせたのだと思います。
誰より大切な貴女。
たったひとりの愛しい貴女。
愛しています、XX様。
またお会いしたら、XXXXと呼んでくださいね。
貴女の視線の先には、何があるのでしょうか。
貴女を傷つけるもの、貴女の力を奪うもの、そういうものばかりに目を向けないでください。
どうか、貴女の目指すものをその瞳に映してください。
貴女の優しさと聡明さに、多くの者が惹かれてきました。
今世でももちろんその通りですが、前世以前も同じです。
だからこそ貴女の後ろには、俺のような者たちが山ほど控えているのです。
貴女の素晴らしさは多くの者が分かっています。
それは良きことだと思う一方、俺は時折夢想するのです。
貴女というひとを、誰の目も届かない、誰にも触れられないところに隠してしまえたらいいのに。俺だけが貴女のいいところを知っていて、俺だけが貴女の世界の全てになってしまったらいいのに、と。
最近の俺は、遠い日の記憶のことしか語っていませんね。
そうと分かっているのですが、あと少しだけ話させてください。
あの時の貴女は、誰よりも気高く、愛情深く、そして誰より美しかった。それは今の貴女もそうなのだと、貴女にも理解していただきたいのです。
悲しいほどにご自分が嫌いな貴女は、何をそんな馬鹿なことを、と一笑に付されるでしょう。
いいえ、違うのですよ。貴女はあの魂をお持ちです。貴女の魂は、五百年前に俺を救った方の魂なのです。同じ魂を持つ者は、姿形こそ違えど、その本質を一にします。
そう。貴女は何も変わらない。
只、そのように自責や卑下をなされるのを止めてくだされば、貴女はご自分の価値に気づけるのではないでしょうか。