XXXX

Open App
7/3/2024, 2:23:21 PM


 この道の先には、何もありません。
 これから歩きながら貴女が作っていくのですから、先にはまだ何もないのです。

 ただ、いちばん最後に待っているものがあるのは確かです。
 あの大きな廻り続けるものが、貴女の道の最後に待っています。
 貴女はそこに回収され、個としての存在を終えます。
 その安寧の日まで、貴女は、そして貴女に付き従う俺たちは、何もない道を歩み、そこに足跡を残していくのです。

7/2/2024, 2:33:03 PM


 俺にとっての貴女は、温かい日射しを投げかけてくれる、太陽のような存在です。
 貴女がいるから、俺の世界は存在しています。
 貴女を中心に、俺の世界は回っています。

 俺は貴女を守るためにここに存在しているので、当然のことではあります。けれど、生きていた時も、貴女は俺にとっての太陽だった。
 その光を再び浴びたいという願いだけを心の支えにして、俺は貴女に言い遣った五年間の放浪を終えました。
 そして貴女の元に帰った時、貴女はもうこの世を去っていました。俺の太陽はもう二度と昇らない、そんな地獄のような世界で居きることはできない。そう思って、俺は生きることを諦めました。

 命を捨てた後、貴女という存在はひとつの魂であり、何度も肉体を得て転生していくのだと、俺は知りました。貴女という太陽がまた昇るのだと知って、俺がどれだけ歓喜したことか、貴女には分からないでしょう。

 貴女は太陽のように、生を得て昇り、命を失って沈み、また昇っては沈みます。
 いつか太陽がなくなるのと同じように、貴女の魂もいつかは個としての終わりを迎え、二度と昇らなくなります。
 その最後の日まで、貴女の放つ温かい日射しに包まれて、俺は幸福に過ごすでしょう。

7/1/2024, 2:03:01 PM


 今世の貴女は、深窓の令嬢という表現がよく合います。

 その窓から、何が見えますか。
 醜いもの、おぞましいもの、悲しいもの。
 そのようなものが、貴女のその窓からは見えないように、俺たちは隠しました。

 今の貴女は、そのようなものが自分の人生から排除されていることに気づいて、喜びよりも苦しみを感じていらっしゃいます。

 俺たちの選択は、貴女を苦しめてしまったでしょうか。

6/30/2024, 2:12:24 PM


 運命の赤い糸など、俺は信じません。
 そんなものはありません。
 俺たちは、貴女の持つ縁を可能な限り良いものにしようと、日々努力しています。「運命だから出会うことになっていたんだ」と言われたところで、それが何だと言うのでしょうか。

 良い縁は引き寄せ、悪い縁は力ずくで退ける。

 それが俺たちのやり方です。

6/29/2024, 12:35:32 PM


 生きていた時の俺は、全く学がありませんでした。
 字が読めないのは当然として、知らない言葉も多かった。

 夏の夕暮れに聞こえるもの悲しい鳴き声の虫は、ひぐらし。
 夏の青空にそびえるように高く立つ雲は、入道雲。

 俺にそんなことを教えてくれる人は誰もなく、俺は名前のないものに囲まれた狭い世界で生きていました。

 俺が、もっともっと早く貴女に出会えていたら、貴女は俺にたくさんのことを教え、いろいろなことを手ほどきしてくださったでしょうか。

 動物や植物や、自然のものの名前。
 字の読み方、書き方。
 人を思いやること。
 人を愛すること。

 ああ。
 貴女ともっと、同じ時間を生きたかった。

Next