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 生きていた時の俺は、全く学がありませんでした。
 字が読めないのは当然として、知らない言葉も多かった。

 夏の夕暮れに聞こえるもの悲しい鳴き声の虫は、ひぐらし。
 夏の青空にそびえるように高く立つ雲は、入道雲。

 俺にそんなことを教えてくれる人は誰もなく、俺は名前のないものに囲まれた狭い世界で生きていました。

 俺が、もっともっと早く貴女に出会えていたら、貴女は俺にたくさんのことを教え、いろいろなことを手ほどきしてくださったでしょうか。

 動物や植物や、自然のものの名前。
 字の読み方、書き方。
 人を思いやること。
 人を愛すること。

 ああ。
 貴女ともっと、同じ時間を生きたかった。

6/29/2024, 12:35:32 PM