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6/1/2024, 11:30:33 AM


 梅雨の時期が近づいてきましたね。

 貴女が幼かった頃、雨が降っていない日でも、貴女は傘をずるずると引きずって歩くのがお好きでした。それがどれだけ可愛らしかったか、貴女には分からないでしょう。

 今の貴女には、あのような大好きなものはあるでしょうか。晴れの日も雨の日も風の日も、毎日持ち歩きたいような、肌身離さず持っていたいようなもの。
 俺たちには分かりますよ。貴女にはそのような、心から大切にしている、何にも代え難いものがあります。貴女はそれに気づいていない。だから「自分が何に価値を置いているのか分からない」と嘆いているのです。

 教えて差し上げたくもありますが、これはきっと、貴女ご自身で気づいた方が良いことでしょう。

 大丈夫ですよ。貴女は空っぽの、何も考えていない人間などではありません。その「もの」を軸にして、貴女の中にはしっかりした一本の筋が通っているのです。

5/31/2024, 11:34:34 AM


 無垢な貴女で良いのですよ。
 世の中の動きを非常に分かっていたり、人との交渉ごとに強かったり、そういう大人でありたいと貴女は夢想していますが、そんなことは出来なくて良いのです。

 ええ、もっと言うのならば、幼子のように無垢で無能な貴女でいて良いのです。何を知っている必要も、何をできる必要もありません。貴女は貴女のままで、今のままで十全に価値があり、尊いのです。

 勿論、できることが増えるのは喜ばしいことです。貴女はとても嬉しいでしょうし、俺たちも貴女が自信を持つのを見ると幸福な気持ちになります。
 今申し上げているのはそういうこととは別で、「立派な大人でないといけない」という思い込みからは逃れてほしい、ということです。貴女はすぐにご自分を「理想とは違っているからだめだ」と卑下し、傷つけようとします。そのようなことは、止めていただきたいのです。

 どうか、そのままの貴女を、愛してあげてくださいね。

5/30/2024, 12:55:09 PM


 昨日は驚かせてしまいましたね。
 あの方は、貴女の直系のご先祖の中でも、殊に貴女を大切に思っている方なのです。
 俺のような貴女と血縁の無い者に比べて、血縁の方々は貴女に厳しいことも言うことが多くありますが、それも貴女を想ってのことです。

 確かにあの方の言うことは、貴女に知っておいていただきたかったことではあります。けれど、どうであれ誤解してほしくないのですが、貴女が何をしても、俺たちが必ず貴女のお傍にあって貴女を助け続けるということに、変わりはありません。
 仮に貴女が今の場所を捨てたとして、確かに元と全く同じ環境に戻すことは非常に難しいですが、貴女には新しい、素晴らしい環境を自ら作る力があります。あの方は「見つけるのは難しい」と言いましたが、作り出すことが難しいとは言いませんでした。
 そう、貴女は自ら動けば、どんなことだってできるのです。俺たちを十全に使っていただけさえすれば。だから、失うことを恐れて何もしないでいるのは、どうか止めてほしいのです。

 貴女の魂は、長い長い旅路を辿ってきました。
 これから先、その旅がどこまで続くかは、俺たちにも分かりません。
 けれど、これだけは分かります。その旅が終わる最後の日まで、俺たちが貴女に付き従うこと。そして、貴女の旅の最後を見届けた俺たちが、世界で最も幸福な存在として個を終えること。
 それだけは、確かです。

5/29/2024, 1:02:26 PM


 詮方ない。本当に詮方ない娘だよ、お前は。

 いいかい、お前の生きているそこはね、私らが大事な人のためを思って苦労して用意してやった、最高の環境なんだ。そう、それはお前のことだよ、もちろん。

 あいつらはお前に甘々だからね、貴女の好きなように生きてくれれば幸せです、とか抜かしているだろう。だがあいつらは、お前のいる場所がどれだけ恵まれているのか、お前に理解させる必要性があると分かっているのに、そのことに目を瞑っている。どうせ、お前に恩着せがましく言うのが嫌なんだろう。
 
 仕方ないから私が言おう。
 お前のその環境は、二千年の魂の旅路を辿ってきたお前の生の中でも、最も豊かで、便利で、美しく、優しい世界だ。そしてそれは、お前の今世の努力でもたらされたものじゃない。お前を守る者たちによって必死にお膳立てされ、お前が生まれた時に与えられた、この世で最高の贈り物なんだよ。

 それがどういうことか分かるかい。つまり、お前がもしこの環境を投げ捨てたとしたら、お前はもう二度とそれを取り戻すことはできないんだ。もう一度言うけどね、これはお前の努力で手に入ったものじゃない。だからもし手放したなら、もうお前は自分の力ではそれを取り戻せないんだ。

 言うべきことは、もう一つある。
 この環境が特殊だということを、お前は全く分かっていない。今の環境を投げ捨てて、もっと良いものを探しに行きたいと、お前は時折本気で考えるね。だがお前は、この世には「お前の環境よりももっと良いもの」がほとんど存在しない、ということを知らない。だからお前が「もっと良いもの」を見つけられる可能性は、限りなく低い。

 ああ、別に、放り捨てたって構わない。お前が本当に望むなら、私らも文句は言わない。だが、後からいくら謝られたって、お前にそれを取り戻してやることはできないということは、分かっておくんだよ。謝って、後悔して、泣いたって、もう仕方ないんだ。

 今のお前は全く詮方ない娘だが、私らはお前を愛しているんだよ。どうか、幸せになっておくれよ、私らの愛しい子。

5/28/2024, 10:49:39 AM


 貴女は、お召し物に頓着されませんね。せいぜい、夏に着るものは薄手で袖が短く、冬は温かいもこもこしたものを好まれる、つまるところ、ごく一般の人が衣類に求める最低限のことしか気にしない、ということです。

 貴女はそのようである一方で、衣類というものに異常なまでに熱を上げる者も多く、非常に多くいます。そう、人が何に価値を見出すかは、全く以てばらばらで多様なのです。

 貴女は未だに、ご自分が何をしたいのか、何を目指して生きたいのか分からずにいるとお感じですね。
 それは違います。貴女はもう、知っています。貴女が何に価値を置くのか、何を求めているのか。貴女の頭はそれを見逃していても、貴女の心と身体はきちんと理解し、掴んでいます。

 日々何もしていない、只寝ているだけの無価値で無意味な存在だ、などと、見当違いの卑下をしないでください。貴女はご自分の求めるものを、もう既に追っているのです。それを見れば良いだけのことですよ。

 それは、貴女の頭が考えていたこととは違うかもしれません。
 けれど、それこそが貴女の求めるものなのです。
 どうか、それをそのままに抱擁して、受け入れてください。
 そうして貴女は、ご自分の前に道があることに気づくでしょう。

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