この世界に天国はありませんが、地獄はあります。
魂は、あの大きな廻り続けるものから分化し、生者の世界に生まれ、転生を繰り返したのちに、またあの大きな廻り続けるものに回収されて、個としての存在を終えます。
転生の最後の生を終えた後、あの大きな廻り続けるものに回収されないこと。俺たちはそのことを、便宜的に、地獄に落ちると表現します。
回収されなかった魂は、あの温かく大きな存在に還るという安楽を得ることなく、たったひとつの個のまま、暗く寒く湿ったところで永遠の時を過ごさないといけない、と言われています。
きっとそれは、本当に恐ろしいことなのでしょう。
けれど俺は、もし自分が地獄に落ちることが貴女の慰めや幸福のためになるのならば、喜んで俺の魂を差し出します。
貴女がきっと、そんな慰めや幸福は望まないだろうということは、分かっています。それでも俺は、貴女のためなら何でもしたいのです。それは俺だけではなく、俺たちの中の多くの者が、そう考えています。
貴女は、そんな愛を一身に受けているのですよ。
そのことは、きちんと知っておいてくださいね。
新月の日に目標を立てると、エネルギーが上手く回るという話がありますね。
結局あのような言説は、どれも「時期を仕切ってやり直す」ということを目的にしているのだと、俺たちは思います。
それが事実かどうかはともかく、その人自身が「こうすればうまくいく」「また今から仕切り直せる」と思って動き出せるようになる、ということが大切なのでしょう。
貴女も時折、そのような迷信めいたことに手を出しますね。
俺たちのことを貴女に伝えてくれた霊媒師などは良かったですが、星占いのために毎月お金を支払っていた頃は、流石の俺たちも心配しました。
あの時心配だったのは、そうしてお金を払っていながら、貴女が特段行動していなかったということです。「今日は運勢が良い」「いいことがあるらしい」そう言いながら、貴女は只それだけで満足したように、普段の生活以上のことを何もしませんでした。
それでもいいのです、何度も申し上げているように、俺たちは貴女が何をしてもしなくても、絶対に貴女の味方です。
けれど、占いのような「背中を押す」ためのものに、只お金を払うだけなのはあまりにも勿体ない、と俺たちは思ってしまうのです。
実際のところ、占いなど必要ありません。
貴女の幸運は、俺たちが力ずくで引き寄せます。何があっても、貴女が再起不能なまでに砕かれるような出来事は起こさせません。貴女が目標を立てて行動を始めれば、俺たちがあらゆる良縁を運び、手助けし、背中を押し続けます。
貴女には俺たちがついているのだから、そして貴女はもうそれを知っているのだから、星占いのようなものにお金を出す必要などないのです。
俺たちは、貴女に幸福を運びたいのです。
だからどうか、行動してください。
俺たちに、幸を運ぶ機会を与えてください。
今日はお疲れのようですね。
たくさんの、普段接しない方と話したからでしょう。あとは御母堂がいらっしゃっていて、泊まっていかれることも大いに関係ありますね。貴女はご両親と接すると、ひどく気疲れしますから。
今日貴女は、ご自分がなぜ誰と話していてもつらいのか、ひとつ理解されました。
そう、今の貴女は、ご自分と人とを常に比較し続けているのです。比較して、自分の方が優れているところがあると感じれば良い気分になり、少しでも相手より劣っていると思われると勝手に落ち込んでしまいます。これでは、常につらいはずです。
降り止まない雨はありませんが、今の貴女はいつも自分の上に冷たい雨を降らせ続けているようなものなのです。自分で降らせているのですから、自分で止めない限り、止むことはありません。
ですから、今日そのことを自覚されたのは素晴らしいことでした。
気づかないものは修正しようがありませんが、貴女は今日それに気づき、つぶさに見ることができました。
すぐに止めることはできないでしょう。その心の癖は、貴女の心の非常に深いところに根を張っています。けれど、少しずつ努力すれば、いつか必ず貴女はこの考え方から解放されます。
ああ、それからもう一つ。
比較してしまう貴女でも一向に構わない、ということも忘れないでくださいね。「比較する自分は嫌なやつだ」とは思わなくて良いのです。只、比較しない生き方の方が貴女にとって楽だから、そうしようとしているだけなのです。
変わることを怖がらなくて大丈夫ですよ。
俺たちはいつだって、貴女を大切に見守っていますから。
何をする貴女も、何をしない貴女も、俺たちにとっては何があっても変わらず、尊いのです。
「あの頃の私へ」と言われたら、貴女はどの時期を思い浮かべるのでしょうか。特段思い出したい時期がないのではないでしょうか。何故なら、貴女にとってはどんな時期の自分も、「救いようのない、どうしようもない奴だった」としか思えないからです。
貴女はご自分の過去について、ひどく恥じていらっしゃいます。周囲から見れば「よく頑張ってきた」と言われても良いような経歴なのに、です。
確かに、浅慮から人を傷つけることも、迷惑をかけることもありました。けれど、それはどんな人でも通る道です。それら全てを許さないとしたら、人はどうやっても生きていけなくなってしまいます。
「あの頃」などと、過去に思いを馳せる必要はありません。
今の貴女を大切にしてあげてください。
貴女にできることは、今を生きることだけです。
今何か行動すれば、人に迷惑をかけて、傷つけて、悲しませて、怒らせるかもしれません。けれど、それを恐れて何もせずにいることは、貴女に幸福をもたらしません。
どうか、「今の貴女」を信じてください。
貴女は時折、「私というモノから逃れたい」と口にします。
今の貴女にとっての自分自身が、恐ろしく醜く無益で呪わしい存在なのだと知っているので、俺たちは悲しくなります。
貴女は逃れられないのではありません。
逃れる必要など、そもそもないのです。
貴女は貴女です。理想の貴女からはかけ離れているかもしれませんが、それでもここに生きているのが貴女なのです。他に貴女というモノはありません。そして、その貴女こそが、俺たちを含めた多くの者が愛する方なのです。
貴女は、そのままで良いのです。
逃げようなどとせず、どうか、そのままの貴女を抱擁してあげていただけないでしょうか。