お題『願いが1つ叶うならば』
なにか一つ願いが叶うなら、私はなにも悩まない脳を手に入れたい。そうすれば人に迷惑はかけるだろうし、人に対して嫌なことをきっと言うようになるだろう。人に対して無神経にもなれる。
だからといって後悔もしなければ傷つくこともない。言ったら言いっぱなしで言われた相手のことなんてなにも考えないんだから。なんて生きやすいんだろうと思う。
だから私はなにも悩まなくて済む脳みそを手に入れたい。
っていうたまには本当に憂鬱なことを考えてみたりする。もっと生きやすくなりたいと願う。
お題『嗚呼』
「あぁ」って言うと普通に返事っぽく聞こえるのに「嗚呼」と漢字にしてしまうことで一気に古めかしくなったり、なにか郷愁じみたものを思い起こさせるのはなんでだろうと思う。
感嘆するにしても「あぁ」と言えばいいのだが、「嗚呼」になることでどうしてか金髪ロン毛のナルシストな貴族っぽい男の姿を思い浮かべてしまう。
それくらいひらがなで表現しても問題ないのに漢字にすると一気に印象が変わるから日本語って不思議だと思う。
お題『秘密の場所』
なにを考えているのか分からないクラスメイトがいる。
彼はいつもクラスで一人孤立していて、仲が良い人など思い当たらない。皆はそんな彼のことなど気にする素振りを見せないが、それでも僕は気になるんだ。
不自然な方向にはねたスネ夫っぽい前髪は寝癖でもわざとワックスでかためたわけでもなさそう。最初から「俺はこの髪型ですよ」と言っているようだ。
おまけによく見ると彼の瞳は金色。ふだん顔を伏せているから誰も気がついていない。
だけど、僕は彼が気になって仕方がない。
「宇宙人なのかな」
といった疑念があるからだ。事あるごとに話しかけようとしてすぐ会話を打ち切られてしまう。
皆から「勇気あるな」と笑われるが僕はめげない。
昔から都市伝説とかUMAとかそういったオカルトめいたことが好きな僕は彼の存在がきになって仕方がないのだ。
ある学校の帰り道、僕はこっそり彼の後をつけることにした。絶対に普通の家ではない。そう思っているから。
しばらく行くと普通子供が立ち入ってはいけない森の中へと入っていった。どんどん谷の方へと下っていく。
遮蔽物になるものの後ろに隠れながら僕は見てしまった。
鉄製の円盤みたいな建物があるのだ。こんな建物は見たことも聞いたことがない。その形はまさしくUFOに似ていた。
「やっぱり宇宙人じゃんか!」
僕は走って下っていくといつの間にかクラスメイトがいた。瞬間移動でもしたのだろうか。
「知られてしまったか」
それだけ言うと、次の瞬間僕の意識が飛び、気がつくと自分の家に戻ってきていた。
「なんだったんだろう」
考えてもなにも思い出せない。学校から家に帰るまでの記憶が不自然にないのだ。何だったんだろう、と思いながら次第にそれがどうでもよくなっていき、いつものようにオカルト雑誌を読み漁ることにした。
お題『ラララ』
実家へ向かう駅の階段を降りていく時点でアコギのうるさいほどの生演奏と絶妙に音程が外れている歌声が聞こえてくる。
あぁ、今日も隣の家の幼馴染(自称ミュージシャン)が歌ってるんだと分かる。
だが、実家に向かう道のりはこの階段を降りるしかなく、仮にエレベーターを使ったところで彼から姿が見えるのは明白。
私は仕方なく階段を足早に降りていく。
幼馴染の曲は知っている。聞いてもいないのに「新曲出した」と言って感想を求めてくるから。もうすぐ一番聴くに堪えないサビがやってくる。
私は駅から出た瞬間、走ろうとした。が、
「Hey,Baby! そんなに急いでどうしたんだい!」
と声をかけられてしまった。ここでサビ前に客を煽るやつをいれるな。観客0人のくせに。あぁ、ここで目が合ってしまった。
あえて遠くから見ていると、なんと彼がこちらに近づいてくるではないか。しかも肩を組まれた。
あぁ、曲が盛り上がる。もうすぐ来る。
「らぁーらぁーらぁー」
だから跳ね上げるなよ。しかも無理矢理横に揺らそうとするな。でもさすがにつかまれたらもう逃げられない。
彼と一緒に揺れる私。私たちに一瞥もしない通行人。
「ら、ら、らぁー」
一緒に歌いながらもう私は諦めの境地に立っていた。
お題『風が運ぶもの』
外出たらクソ寒かった。おまけに風が冷たい。
ダウンジャケットを着ているとはいえ、こごえながら歩いていると前から紙が飛んできて顔にはり付いてきた。
(なんだ、ごみかよ)
そう思って顔からはがすと、それは某ファーストフード店のクーポンがついたチラシだった。このクーポンを使えば半額になるらしい。
今日はそのファーストフード店でセットを買おう。夕食のこんだてを考えずにしかも安く済む。寒空の下をスキップしながらその店へ向かった。