白糸馨月

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お題『秘密の場所』

 なにを考えているのか分からないクラスメイトがいる。
 彼はいつもクラスで一人孤立していて、仲が良い人など思い当たらない。皆はそんな彼のことなど気にする素振りを見せないが、それでも僕は気になるんだ。
 不自然な方向にはねたスネ夫っぽい前髪は寝癖でもわざとワックスでかためたわけでもなさそう。最初から「俺はこの髪型ですよ」と言っているようだ。
 おまけによく見ると彼の瞳は金色。ふだん顔を伏せているから誰も気がついていない。
 だけど、僕は彼が気になって仕方がない。
「宇宙人なのかな」
 といった疑念があるからだ。事あるごとに話しかけようとしてすぐ会話を打ち切られてしまう。
 皆から「勇気あるな」と笑われるが僕はめげない。
 昔から都市伝説とかUMAとかそういったオカルトめいたことが好きな僕は彼の存在がきになって仕方がないのだ。

 ある学校の帰り道、僕はこっそり彼の後をつけることにした。絶対に普通の家ではない。そう思っているから。
 しばらく行くと普通子供が立ち入ってはいけない森の中へと入っていった。どんどん谷の方へと下っていく。
 遮蔽物になるものの後ろに隠れながら僕は見てしまった。
 鉄製の円盤みたいな建物があるのだ。こんな建物は見たことも聞いたことがない。その形はまさしくUFOに似ていた。
「やっぱり宇宙人じゃんか!」
 僕は走って下っていくといつの間にかクラスメイトがいた。瞬間移動でもしたのだろうか。
「知られてしまったか」
 それだけ言うと、次の瞬間僕の意識が飛び、気がつくと自分の家に戻ってきていた。

「なんだったんだろう」
 考えてもなにも思い出せない。学校から家に帰るまでの記憶が不自然にないのだ。何だったんだろう、と思いながら次第にそれがどうでもよくなっていき、いつものようにオカルト雑誌を読み漁ることにした。

3/9/2025, 2:40:38 AM