白糸馨月

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2/13/2025, 3:41:10 AM

お題『未来の記憶』

 小学生の頃、未来の出来事をふざけてノートに書いたことがあった。
 その頃は本当に起こるなんて思わなかったんだ。
 あれから成長して、一応いい大学出て、大手企業に就職したけどそこがまぁブラック企業で、それで地元に逃げ帰って、今、実家のコンビニの店長として働いている。
 あの頃は二十世紀少年にハマってたけど、まさかその主人公と似たような末路を行くとは思わなかった。
 いや、今はそこまでだったら良かったんだ。
 空が急に暗くなっているのが宇宙人の秘密基地で、UFOがいくつも散らばっては人間を攻撃している。
 たしかノートにそんなことを書いた気がする。
 俺は恐ろしくなって実家に戻って、わめく母さんをなだめながらその場をやり過ごすことにした。

 と、ここまで思い出した。
 自分の中に急に流れ込んできた記憶は、未来のものだった。
 こんなのはいやだ! 書き換えないと。
 僕はタイムカプセルに埋めたノートを取り出すと、悪い記憶が書かれているところを破り捨て、新しく書き換える。
 そう、何も起こらず、友だち全員が幸せになるハッピーエンドの話だ。

2/12/2025, 3:28:17 AM

お題『ココロ』

 この単語からぱっと浮かぶのは、ボカロ曲だ。
 大体二十年近く前かな。というか、もうそんなに経つのかと驚く。
 ココロとかいうそれはそれはとてもエモくて、泣けるストーリーが曲内で展開されていたことを思い出す。ボーカロイドの機械的な歌い方と、ココロを得た後の人間っぽい歌い方の対比が印象的な曲だ。
 初めてその曲を聴いた学生時代の私は、感動して泣きそうになった。
 そもそもこの時代は、劇中劇みたいなボカロ曲が多かった気がする。
 今は、メンヘラだったり病んでる女の子の歌が流行るのかなといった印象。
 何年経っても未だにボカロ曲を聴いたり、人が歌ってるのを好む私は、いつの間にか移り変わってた時代を改めて感じるのだ。

2/11/2025, 3:11:15 AM

お題『星に願って』

 小学生くらいの頃、おまじないにはまっていたことがある。
 たとえば当時家で購読していた雑誌についてた女神の絵が描いてある小さなシールを鏡に貼ると綺麗になるとか、好きな人の似顔絵と自分の名前と好きな人の名前を書いた紙を常に持ち歩くと願いが叶うとか。
 そういえば星に願う系もあったなぁと思い出す。
 たしかなんだっけと今ネットで調べたら、最初に願い事を書いた紙に塩をふりかけて燃やして、その灰をトイレに流すとか出てきた。知らないおまじないだ。
 だけど、思い返す。そういえばおまじないをして願い通りになったことってあったっけ、と。
 いや、ないな。と思って、おまじないはこれからも興味本位だけで調べることにした。

2/10/2025, 5:24:40 AM

お題『君の背中』

 足の速さじゃ勝てないから、せめて勉強だけは彼に勝ちたいと思った。
 僕には憧れているクラスメイトがいた。
 成績優秀で、足も速くて、明るくて、みんなの人気者だった。
 僕は、せめてそんな彼といて遜色ないようにしたかった。だけど、足だけはどうにも速くならず、明るい性格にもなれそうにない。せめて勉強だけは頑張り続けた。
 そしたら中学になって、追っていたはずの彼の背中をいつの間にか追い越してしまった。運動会では彼はまだ活躍できていたからいいけど、彼は勉強に関してはそこまで努力してなかった。
「俺、近くの高校通うわ」
 と言った時、僕のなかでなにかがさめていく感覚がした記憶がある。
 それから高校からはなれて、大学で東京に出て、正月に地元へ帰った時、久々に会った彼はあの頃の面影がなかった。
 地元で通ってたファミレスで
「あー、小学校の頃にもどりてー!」
 と小学生時代と同じように手足をバタつかせているのを見て、僕は過去の憧れに心のなかで終止符を打った。

2/9/2025, 2:11:36 AM

お題『遠く……』

 テレビなんて久しぶりに見る。たまたま音楽番組をつけていた母親が「●●ちゃん、今日も頑張ってるわねぇ」なんて感慨に耽っていた。●●は、俺の幼なじみだ。
 あいつは、地元の中で一番可愛かった。絶対に本人に言うことはなかったし、ましてや噂話するにしても俺は絶対に乗らなかった。だってそうしたらあいつの中で俺の存在感が埋没してしまう気がして、ひょっとしたら俺があいつを特別に思うのと同じように俺を見てほしかったのかもしれない。
 それが事務所にスカウトされて、今では誰もが名前を知るアイドルグループのメインメンバーに選ばれたことで俺はその他大勢になってしまった。
 幼稚園の頃から一緒にいたのに。家だって隣だったのに。小さい頃、結婚の約束をしたのに。もう近くにいることは叶わないのだ。
 テレビで歌って踊って活躍する幼馴染の姿を一瞬視界にいれ、俺はリビングから自分の部屋へと戻っていった。
 自分の気持ちを素直に伝えられなかった後悔がまた胸のなかを埋め尽くして痛かった。

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