お題『永遠の約束』
永遠なんてものはないと思う。その最たるものは結婚である。
人がいる前でいわゆる『永遠の愛』を誓い合う。
夫婦の相性が良ければ死ぬまでずっと続くが、もし途中でどちらかが約束を反故にしだしたり、どちらかの親が夫婦に対して金銭を要求してきたり、夫が家事してくれないとか妻が子供にかまけてばかりだとか……そういういろんな要因があって、結婚生活が破綻した人を見たことがある。
友人から結婚生活についての愚痴を聞かされ、この間ついに離婚を果たした時
(永遠なんて約束できないよねぇ)
なんて思ってしまった。
お題『やさしくしないで』
「もう私に優しくしなくていいよ」
私は銀製のナイフを手に、彼女を見据えてこう言った。
すると、目の前の友達は一瞬目を見開く。すこしの沈黙が流れた後、今度は顎を上げ、私を見下ろすように視線を下にした。
「なんだ、気づいてたの?」
「昨日、ね」
私は昨日の夜、彼女がクラスメイトの首筋に噛みつき、貪り食っているところを見てしまった。
あの時は気が動転してその場から逃げ出した。あんなに自分に対して優しくしてくれた人が吸血鬼だったなんて。
私の正体はヴァンパイアハンターだ。仕事の関係上、いろんな場所を転々としなければいけない私たち一族は、その関係で友達を作りにくかった。
今の学校で、いつの間にか友達の作り方を忘れた私の前に目の前の彼女が現れたのだ。
だけど、その友だちが討伐すべき相手だったなんて。
今までの優しい笑みが嘘みたいに残酷な顔を浮かべて笑ってる友だちに私はナイフを手にその場から駆け出し、彼女に攻撃をしかけた。
お題『隠された手紙』
幼馴染が事故で亡くなった。ずっととなりの家に住んでた。
大学に入って一人暮らしを始めてからずっと会っていなかったけど、彼は家族のように身近な存在だった。心に急に大きな穴があいたみたいだ。
彼の葬式に参列すべく、地元に帰ったら隣の家のおばさんから手紙の束を渡された。
全部、彼から私宛の手紙だった。おばさんは「読んであげて」と言ったきり、家に戻ってしまった。
私は自分の部屋に急いで戻り、便箋を開く。中身はおせじにもきれいとは言えないルーズリーフの数々だった。
内容を読んで思考が一瞬停止した。彼から私に対する思いが書かれていたからだ。それをつづっては、途中で消し、また新しいノートを用意して書く。
ただ一言、「好き」と伝えてくれればそれでよかったのに、そういえば思い出した。
『俺、お前とちがって頭悪いからよぉ』
口癖のようにそんなことを言ってたっけ。だから、一生懸命背伸びしたような文章がいっぱい綴られていた。
もう後悔しても遅い。彼は二度と帰らない。
彼の気持ちに気づいてあげられていたら、もっと違ったのかもしれない。彼が死ぬこともなかったかもしれない。家族みたいに大事だったのにな。
それでも泣くことができず、ようやく泣いたのは火葬まで済ませた葬式の後、東京へ帰る新幹線の中だった。
お題『バイバイ』
今度こそ、あの子を死なせないと決意した。だから、生まれ変わったんだ。
夕方になり、隣の村に住んでいる友達が
「帰らなきゃ」
と立ち上がる。僕はその手をつかんだ。彼女が不思議そうな顔をして僕を見る。
「ねぇ、村まで送らせてよ」
そう言うと、彼女が恥ずかしそうに笑った。
僕はこの後の顛末を知ってる。
この場で「バイバイ」と別れた後、彼女とは何年も会えなくなる。次に彼女の姿を見たのは十年後、ボロ布だけをまとったやつれた姿で人買いに売られているところだった。
隣の村は貧しく、その周辺では子供を狙った人攫いが横行していた。
僕はずっと後悔を胸に生きてきた。
だから別れの挨拶をする前にせめて彼女を無事に送り届けようと決めた。それは、彼女がある程度成長するまで続けられた。
お題『旅の途中』
旅におけるハプニングはいっそ楽しむものだと思う。さすがに道中話しかけてきた相手がスリのグループとかでないかぎりは。
ちなみに最近、私が旅をしていて起きたハプニングは、私の無知から起こるものだった。
推しのライブへ行くために東京駅から新大阪駅まで行くことがあった。東京駅へ行くまで、乗る時間を遅らせたりして、正直会場に着いたころにはグッズが売り切れているのではないかと不安でたまらなかった。
正直、あせっていたんだと思う。私は東京駅へ着き、駅弁を買った後、すぐに出発する新大阪行きの新幹線があったからタイミングよく乗った。
そう、タイミングよく乗ったと思ったのだ。
その乗った新幹線が『こだま』なのは分かっていたが、それにしてもやけに停車駅が多すぎる。私はスマホで乗り換え案内を開き、それでも飽き足らず『こだま』の発車時間と到着時間を調べて愕然とした。これでは、物販はおろか、会場に着くのが開演時間ギリギリになってしまう、と。
幸い、新幹線は新横浜に着く前だった。だから、そこで降りてたまたま次に来たのぞみに乗り換えたら着くのが早かった。乗り換え案内を調べて一安心する。
しかし、とんだハプニングだと思う。だが、旅の途中で笑い話が一つ増えたのはいい思い出だ。