白糸馨月

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お題『やさしくしないで』

「もう私に優しくしなくていいよ」
 私は銀製のナイフを手に、彼女を見据えてこう言った。
 すると、目の前の友達は一瞬目を見開く。すこしの沈黙が流れた後、今度は顎を上げ、私を見下ろすように視線を下にした。
「なんだ、気づいてたの?」
「昨日、ね」
 私は昨日の夜、彼女がクラスメイトの首筋に噛みつき、貪り食っているところを見てしまった。
 あの時は気が動転してその場から逃げ出した。あんなに自分に対して優しくしてくれた人が吸血鬼だったなんて。
 私の正体はヴァンパイアハンターだ。仕事の関係上、いろんな場所を転々としなければいけない私たち一族は、その関係で友達を作りにくかった。
 今の学校で、いつの間にか友達の作り方を忘れた私の前に目の前の彼女が現れたのだ。
 だけど、その友だちが討伐すべき相手だったなんて。
 今までの優しい笑みが嘘みたいに残酷な顔を浮かべて笑ってる友だちに私はナイフを手にその場から駆け出し、彼女に攻撃をしかけた。

2/3/2025, 11:36:23 PM