白糸馨月

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10/9/2024, 11:49:16 PM

お題『ココロオドル』

 久々に複数の人達とカラオケに行った。いつもは一人でカラオケに行く。歌うのが好きで、時折どうしても歌いたくなる時ってあるから。
 今日も一人でカラオケに行こうとしたら、目が合った職場のグループに声をかけられ、ご飯を食べ、そのノリでカラオケに行くことになった。
 課長クラス以上はいないとはいえ、先輩社員がなにを歌うのか読めず、無難にどの世代でも歌われてそうな曲を入れようかと悩んでいたら、ノリのいい音楽が流れてきた。
 あっ、この曲は懐かしい。懐かしすぎる。
 流れるクリーンなギターのイントロが終わった後、この場にいる全員が叫んだ。
「エンジョイ!」

10/9/2024, 3:41:02 AM

お題『束の間の休息』

 働き詰めだった一週間が終わり、土曜日がやってくる。
 とはいえ、深夜まで仕事しかしておらず、寝て過ごすつもりだ。
 なにも考えずに動画配信サービスのドラマを寝ながら一気見する予定だった。
 だが、土曜日の昼頃、仕事用スマホの電話が鳴った。
「君がリリースしたツールでエラーが起きた。今すぐ調べてほしい」
「承知いたしました」
 俺は電話を切った後、舌打ちをして社用PCの電源を入れた。
 くそ、せっかくの『休』日がパァじゃねぇかよ。

10/7/2024, 11:47:06 PM

お題『力を込めて』

 ゲーセンでパンチングマシーンで新記録に挑戦しようとした時、とつぜん異世界に転移させられた。なんでこんなことになったのか、私にはよく分からない。
 どうやら洞窟の奥の方みたいで、私の目の前にパンチングマシーン台程度の大きさの石板が置かれている。石板は青い炎に包まれていた。
 上から女性の声が聞こえてくる。
「よく来ました、異界の方。お願いです。目の前の石板に一発、拳を入れてください」
 わけもわからず、私は拳を握る。
「これを破壊すれば元の世界に帰してもらえるんですよね?」
「えぇ」
 言っていることが本当ならば、と、私は拳に力を込めてありったけの力で石板を殴りつけた。
 いつもムカつく上司や、同僚の顔を思い浮かべながら殴っている成果が出たのか、石板はあっけなく砕かれ、轟音とともに私の体が浮かび上がり――気がつくと、もとの世界に戻ってきていた。
 さきほどいた世界がどうなったか、知らない。私は困惑しながら自分の拳を見つめていた。

10/6/2024, 3:27:54 PM

お題『過ぎた日を思う』

 思えば人生は後悔の連続だったように思う。
 最初の小学校入学の時から人生詰んでた。
 先生から『学校では喋ってはいけません』と言われて、その言葉を真に受けた私は、真面目に学校で一言も話さないでいたら友達が一人もできなかった。嘘みたいだが本当の話である。
 それから人に話しかけるのですら声が出なくて苦労して、小学校、中学、高校とマトモな友達ができなかった。
 いや、いたにはいたけど、同じようにクラスで居場所がない子とか――まぁそれはいいよ、一緒につるんでる割に別の友達に対して「あいつといるとつまらない」と吹聴する奴とか、私が他の子とつるんでるのが許せない奴とか、マトモな友達にありつけたことなんてない。
 大学でどうにか自分から無理矢理話すことを覚えて友達が一人もいないなんて事態にはならなかったけど、私が人付き合い下手すぎて今もなお交流してるのなんて一人しかいない。一人親友がいればいいか、なんてね。
 最初の小学校入学の時点で先生の言うことを真に受けなければよかったとか、学校で仲良くしたい子に自分から話しかけに行くとか、嫌なことは嫌と言うとか(今でも家族にすら言えないんだけど)、いろいろあるけど過去は変えられない。
 憂鬱になるくらいなら、そこから目を逸らして自分で未来を変えていくしかない。過ぎた日にとらわれると途端に生きるのが辛くなって仕方がないからね。

10/6/2024, 2:23:49 AM

お題『星座』

 夜空を見あげながら、昔、幼馴染と会話していたことがある。その頃、俺たちはたまたま夜空を見あげながら星座の話をするのにハマっていた。
『俺さ、大人になったら星座になりたい!』
『……星座って増えないんじゃないの?』
『俺が神話を作って伝説になったら新しく星座もできんだろ!』
『たとえば?』
『ほら、アルマゲドンみたいに隕石から地球救ったりとか?』
『あはは、楽しみにしてるよ。でも、その時は生きて帰ってこいよ』
『おう、あたりめーだろ!』
 なんて会話をしていた。

 あれから数十年後、本当に地球に隕石が襲来して、宇宙飛行士になった幼馴染は仲間と一緒にその隕石を破壊しにいった。
 結果、隕石は破壊され、地球に降り注ぐことなく、なにも起きずに済んだ。だが、宇宙船は帰ってこなかった。
 あの後、彼らの功績をたたえて勲章が授与され、新たに星座が制定されることになるという。
 あいつがいなくなって、たしかにあいつの願いは叶ったけど、俺の胸中は複雑だ。だけど、宇宙行く前にあいつから渡された発信機があって、そこにはモールス信号で「今日も無事」と伝えられている。
 それを信じて俺は伝説としてまつりあげられそうになっている友達の帰りを待っている。

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