白糸馨月

Open App
7/12/2024, 5:26:21 AM

お題『1件のLINE』

 普段、自分から友達を誘うことなんてない。ましてや、異性にアプローチした経験なんて皆無だ。
 それが今、メッセージをあらかた打ち終わった後、送信ボタンを押すのを躊躇している。
 内容はただ「よかったら今度飲みに行きませんか?」と誘うだけだ。送信先は、マッチングアプリで知り合った女性。
 マッチングアプリでやり取りしてた時も趣味の話に終始して誘う勇気が出ず、結局、女性の方からお茶の話を持ちかけられた。LINEの交換してくれたのも彼女の方からだった。
 送信ボタンを押す前にお茶の時を思い出す。僕と会ってくれた彼女を前にして緊張してなにも喋れなかったことを。
 だが、LINEを送らないことには何も進まない。たった一件のLINEに僕は、おそれをふりきって送信ボタンを押した。
 さぁ、もう見ないぞ。僕は、LINEの画面を消すと間髪入れずに通知が来る。あの人からだ。
 返信がすぐ来て、「誘ってくれて嬉しいです! ぜひ、一緒に行きましょう!」という言葉を見て思わず目を疑う。
 僕からの誘いを受けてくれると思わなかったのと、安堵のあまり、僕はその場にへたりこんでしまった。
 

7/11/2024, 2:28:26 AM

お題『目が覚めると』

 目が覚めると、スマホが鳴りっぱなしだった。
通知はXからで私は心臓が痛いほど高鳴るのを身を以て感じる。おまけに変な汗がでる。

「え、私なにか変なこと呟いた?」

 昨日なにを呟いたか思い出す。えぇと、日頃から推しが尊すぎて昨日も推しについての妄想を呟いたっけ。あぁ、そういえば推しとその相棒の落書き漫画をあげたけど、もしかして

「公式に把握されたとか?」

 大変だ。もしそうならすぐアカウントごと消さないと。なぜなら、私は推しについては純粋に「好き」というだけじゃなくて、いわゆる腐女子だからBL的な妄想もしてしまっているわけで。
 非実在人物だから公開アカウントだけど、それにしても公式バレは怖い。昨日の呟きは、「推しくん、やっぱえっちだぁ」から始まるしょうもない呟きだ。こんなのが公式に把握されたからきっと通知がやまないんだ。
 えぇいままよと、おそるおそるXを開くとそこには嬉しいコメントばかりが並べられていた。

「ひぃ、AくんとBくんの関係性が尊すぎる」
「はぁ~好き」
「作者のAくんに対する愛を感じる」

 要するに昨日あげた漫画がバズっていたのだ。おまけにその感想ツイートの中に私が以前から崇め奉っている商業BL描かれてる方も泣いてる絵文字と共に「尊い」と言いながら、私にフォロバしていたのだ。
 その信じられない光景に私は自然と口角が上がり、ぐへへ、ぐへへという笑いがこみあげてきた。

7/9/2024, 4:32:53 PM

お題『私の当たり前』

 当たり前というのは、所属するコミュニティによって違うと思う。
 親との仲とか、学歴とか、働き方とか、お金の使い方や友達といる時の振る舞い方とか
 生きているとそれらがある日突然当たり前だと思えなくなる日がくることがあるし、そもそも当たり前だと思っていない人に出くわすことがあった。
 これからも自分が生きやすいように『当たり前』をアップデートしながら生きていこうと思う。

7/8/2024, 10:55:31 PM

お題『街の明かり』

 会社から出ると、人々の喧騒と夜でも明るい街に毎回のように驚かされる。
 明るすぎる飲み屋街で、だいたいお店の前に客引きがいてたまに人と帰ったりしていると声をかけられたりする。
 会社がその中に位置しているからどうしてもこれは逃れようがない。騒がしいのも楽しくていいが、いつもこれだとさすがにしんどいと思う。
 かといって、僕の地元のように夜になると明かりが消えてお店がすぐに閉まってしまうような寂れた街も勘弁だ。
 飲み屋のキャッチをかわしながら帰路について、やっと自分の最寄り駅に着く。閑静な住宅街で、駅前はスーパーがあって、しばらく歩けば等間隔に並べられたランプが街をほんのり明るく照らす。
 家に着いて街の喧騒から離れられたことに安堵しながら、我ながらいい場所に住めたなと思う。

7/8/2024, 6:46:09 AM

お題『七夕』

 地元の商店街に大きな笹が用意された。そこには色とりどりの短冊がすでに吊るされている。
 子供から大人までこぞって短冊に願い事を書いている。
 正直、そのつもりはなかった。
 だが、お姉さんと目が合う。お姉さんは人懐こそうな笑顔を浮かべながら私に短冊を渡してきた。
 ペンは笹の前に用意された机の上のペンケースに置かれている。
 流されるまま参加した私は、切実な願いを短冊にこめた。

『最近忙しすぎて休日出勤が増えてます。たのむから休みをください!!!!』

Next