白糸馨月

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お題『1件のLINE』

 普段、自分から友達を誘うことなんてない。ましてや、異性にアプローチした経験なんて皆無だ。
 それが今、メッセージをあらかた打ち終わった後、送信ボタンを押すのを躊躇している。
 内容はただ「よかったら今度飲みに行きませんか?」と誘うだけだ。送信先は、マッチングアプリで知り合った女性。
 マッチングアプリでやり取りしてた時も趣味の話に終始して誘う勇気が出ず、結局、女性の方からお茶の話を持ちかけられた。LINEの交換してくれたのも彼女の方からだった。
 送信ボタンを押す前にお茶の時を思い出す。僕と会ってくれた彼女を前にして緊張してなにも喋れなかったことを。
 だが、LINEを送らないことには何も進まない。たった一件のLINEに僕は、おそれをふりきって送信ボタンを押した。
 さぁ、もう見ないぞ。僕は、LINEの画面を消すと間髪入れずに通知が来る。あの人からだ。
 返信がすぐ来て、「誘ってくれて嬉しいです! ぜひ、一緒に行きましょう!」という言葉を見て思わず目を疑う。
 僕からの誘いを受けてくれると思わなかったのと、安堵のあまり、僕はその場にへたりこんでしまった。
 

7/12/2024, 5:26:21 AM