某ゲーム二次創作
ゲッコ族…二足歩行をする、トカゲに非常に外見が似ている種族。
ゲッコ族の青年ゲラ=ハが子猫を拾ったのは二日前の某港だった。
どうやら母親がいないらしくみゃーみゃー一匹で鳴いているところを見捨てられず船内に引き取った。
しかし船にはネズミ取りのため既に先住の猫がいる。
子猫を見たら酷い有り様になる事は容易に予想がついた。
里親を探すため寄港先の港の居酒屋・神殿・商店街・娼館等片っ端の店に声を掛け子猫の引き取り手を探すことに。
小さな港町の方方に張り紙をし子猫の里親の面接もきっちりするつもりだった。
しかし思わぬ壁にぶち当たる。
「あんたこいつを食うのかい。」
ゲッコ族は主にリガウ島に多く住んでいる。
普段見慣れぬ種族に住民はトカゲが子猫を食べるのではと訝しんでなかなか相手にしない。
「かーっ!そいつらの目ん玉揃ってくり抜いてやるか!」
激怒するのは長年の相棒、キャプテン=ホーク。
「キャプテン、それでは里親を探すにも探せなくなってしまいます。」
ホークは度量の広い親分肌で頼りがいある男だが身内の裏切り者や仲間をバカにする者には容赦しない冷徹な面も持つ。
むしろ冷酷さも持ち合わせないと海賊船の頭目等到底務まらないのだが。
「仕方ねえうちで引き取るかい?」
「まだ小さ過ぎて船旅に連れて行くにはもちませんよ、すぐに死んでしまいます。」
おぉ!と天を仰ぎながらホークは帽子を顔で隠す。
「少々お待ち下さい、手間は取らせません。」
ゲラ=ハは海賊船のNo2、日常の事務仕事から戦闘まで様々な事を取り仕切る。
ホークが安心して背中を預けられる片腕である。
「出港までには見つかるさ。」
子猫は甲斐甲斐しく世話を焼くゲラ=ハにみゃーみゃーみゃーみゃー鳴きながら小さな身体で取り付いている。
暫くはこの港で水・食料等積荷の運搬をしなくてはならない時間はある。
「お客様、声は掛けてるんですがねあいにくまだ見つかりませんねえ…」
雑貨店の店主はすまなさそうに言う。
「そうですか、まだ暫く滞在するので引き続きお願いします。」
積荷の発注の合間に暇を見つけては聞いてみるが手応えはない。
夜、自室でゲラ=ハはみゃーみゃー鳴く子猫にヤギのミルクを与えながら呟く。
「波高しか…負けるなよ。」
エメラルドグリーンの瞳を輝かしながら子猫はミルクを一生懸命飲む。
早朝、ホークが朝帰りをしてきた。
「やあやあ諸君!俺なりに情報収集して来たぞ!残念至極…収穫は無しだ。」
「あー…はいはい。」
某武器屋店内━
「キャプテンすいませんねぇ。」
「悪い、こういうのは運もあるしな。」
「ここもダメか…。」
里親探しが難航していると聞きやホークなりに発奮したのか今日は精力的に聞いて回ってくれる。
しかしとあるバーに入った時━
「ああん、キャプテン=ホークが猫の里親探し。トカゲとか猫とか見世物小屋かよ?」
「あ?俺の相棒バカにしてくれたな?」
「キャプテン止めて下さい!」
室内は一触即発の空気だった。
乱闘が起きては里親探しもできやしない、何とかして収めて貰うが━
「ああいうのは殴るのが一番だって!マジで!」
その日のホークは始終不機嫌だった。
翌日、食料品店の店長に連れられて親子連れが馬車に乗ってやってきた。
「あの、張り紙を見ました。うちで引き取らせて頂けないでしょうか。」
聞けば郊外の葡萄農園の園主らしい、お近づきにと渡された葡萄酒を貰ってホークは酷くご機嫌だった。
「猫の替わりに上等な酒!いや結構結構!」
「お前は葡萄園の主か、凄い出世だな。」
ゲラ=ハは子猫を抱き上げる子猫は満足気な鳴き声でみゃーと鳴く。
父親の影に隠れてた少女が出てきてゲラ=ハから子猫を受け取る。
「可愛いね…ありがとう。」
「良かったな。」
「大事にしてやって下さい。」
受け渡された子猫はびっくりしたような顔をしたが状況がよくわからずみゃーみゃーみゃーみゃー鳴いている。
親子連れの幌馬車は町を後にした、子猫も一緒に。
船には水・食料等必要な積荷の荷揚げも終わった。
少し名残り惜しそうなゲラ=ハをホークはチラと目にしながら大きな声で告げる。
「よし出航だな!」
「了解!」
こうしてお互いの生がすれ違いこれから新しい旅が始まる。
「子猫」
ネタが尽きたかなと思います、ありがとうございました。
某ゲーム二次創作
「…また〝車〟の調子が悪いですね…。」
「また?ってトラブルは一昨日もあったわよね?」
「ナタリー降りてあっちのタイヤ見てくれないかい?」
「はーい。」
私はバーバラ、踊り子であり小さな劇団の座長でもある。
会計のエルマン、歌い手のナタリーがメンバーだ。
この〝車〟は大都市のごくごく一部でしかまだ流通していない代物だが私をご贔屓にしてくれる太客に懇願して1台なんとか融通して貰った奴だ。
移動は勿論のこと興行の際には〝車〟を見たこと無い地域のお客様には大いにアピールできる大変高価な代物なので本当に重宝している。
しかし正直オイルの値段がバカ高いしこうしてトラブルが起きては馬車の方が良かったんじゃないかなと思う時が度々ある。
今は多くの地域で収穫祭が行われる書き入れ時なのに肝心の「足」が使えないんじゃね…。
ここはフロンティアのニューロード。
モンスターが多い地域だがチャンスがこれから沢山出てくるであろう期待の地域だ。
皆が我先に開拓に日々勤しんでいる、そんな地域に〝車〟なんて持って行ったら注目されるに違いないのに。
時間だけが刻一刻と過ぎる。
「皆が待っているんだよ…早く直して…。」
「宝石の化け物に見つかりませんように…。」
「エルマンさん!不吉なこと言わないで下さい〜。」
風の噂では街道には宝石を纏った巨大モンスターもいるらしい。
人を食べたり何もかも壊して回るとか村が全滅したとか嫌な噂はあちこちで聴いた。
まさか〝車〟は食べられないわよね、あれが私の全財産に近いから…。
空に渡り鳥が群れをなして飛んで行く。
秋風を捕まえ高く飛んでいく鳥達が私は羨ましかった。
「姐さん、ボルトが一つ緩んでいたようです。悪路を通った時の影響でしょうかね。」
「上等!行きましょう着いたら速攻で仕度するよ。」
「お願いなるべくスピード出し過ぎないで…。」
「ナタリー、外の景色を見ていなさい楽しいわよ。」
街道は至極単純真っ直ぐだ。
目的地は昼過ぎてからだろうけど収穫祭の夜の部には間に合う。
私は踊ることしかできない。
この仕事は浮き沈みが激しいけれどそれは承知。
辛い時もあった、リスクは常に付いて回るものだから。
でもナタリーは天性の歌声を持っていて才能がある、エルマンも会計の傍らいい戯曲を書く。
この3人で成功したい。
街道の向こうには私達を楽しみにしてくれる人達が待っている。
もし例え一人でも楽しみにしてくれる人がいるのならその人のために踊り続けるだろう。
「頑張って行きましょう!」
「合点です。」
「はい!」
エンジン音がけたたましく鳴り響き〝車〟は動き出した。
秋風と共に軽快に走り出す。
「秋風」
某ゲーム二次創作
「また会いましょう」って何回も聞いた正直聞き飽きてる。
あたしはとある事情で家から逃げ出した所謂「家出少女」タチアナ。
自分で言うのも何だけど結構可愛いから冒険者が拾ってくれる、街から街へ行ったり来たり。
今ではこっちも名前をエクレアとかクリームとか適当に変えたり生きている。
でも最初は皆優しくしてくれるんだけど時間が経つとお互いもて余すのよね。
あたしのどこに不満あるんだろう。
子どもだから?あたしこれでもいいとこの家の娘だしちゃんとしてるつもりなんだけどな。
適当に言う事聞いてヘラヘラ笑って適当に合わせてあげてるじゃん。
こうなったのは親が悪いの、兄弟が悪いの、あたしは何にも悪くない!
「ちくしょーっ!」
街の広場で愚痴をこぼす、誰かに八つ当たりしてやりたい気分だったけど街の人達は家出少女ってわかってるから誰も話しかけもしない。
この街ではあたしは完全な空気だ、アウェーだ、派手なカッコしてるけど。
「今日はどうしよ。」
考えるのは今日寝るところ、だから冒険者を探している。
あたしのことは何も知らないから。
でもアイツら気軽に街から街へ連れてってくれるけどすぐにオサラバ「また会いましょう」って…。
私は私の居場所が無い…。
今日はどっかで引っ掛けるしかないかな…。
「タチアナ=ラザイエフ!」
銀髪のショートカットの女が話しかけてくる。
エクレアでもクリームでも無く久しぶりに聞いた本当の名前、懐かしい名前…。
「あ、お姉さん〜!どうしたの?」
今日はコイツかな…思い切り猫撫で声で話しかけてやる。
「ちょっと小耳に挟んでね、私はカタリナ=ラウラン。あなたを正式にスカウトしに来ました。」
「スカウトって?あたし可愛いからな〜。」
「私と一緒に行かないかしら?これは契約書です待遇は悪くないわよ。」
「時給高いね…お姉さんお金持ち?」
「契約書のサインはOKね。はい、メイス。」
「え、モンスター討伐とか?あの、あたしそういう肉体労働はちょっと。」
「行くところないんでしょ?」
「え、またどっかの人捕まえるから…。」
「人に期待しない!自分の道は自分で切り拓く!はいこれはあなたの分のメイスよ持って下さい。」
このおばはん、なんか押しが強いな…。
「手伝ってくれたら私も嬉しいわ、お互いwin-winの関係で行きましょう。」
「え?う?うそーっ。」
騙された…。
こんな奴からは逃げ出してやる!
こっちから綺麗に「また会いましょう」とか言ってやりたいわ!
「もし逃げたらお宅に請求書が届いてすぐに居場所が知らされる手筈になっています。」
「ふぁ?ズルい!卑怯者!」
「さあ、行きましょう。これからよろしくね。」
こうしてあたしは正式にカタリナの相棒として旅に出ることになった。
「また会いましょう」
某ゲーム二次創作
スポットライトが当たると小高い真紅のビロードの椅子に長い髪の男が座っている。
「この立場は退屈なんですよ、だから人の冒険に飢えているところもあるんですがね。」
黒いシルクハットのつばをクイと引きながら軽薄そうに男は嗤う。
「え?そういう自分はどうだって?まあ私だってたまには自転車に乗ったりしてますよ、それはそれで楽しいんですがねえ。」
「やっぱり!第三者の視点で生き様を見るのが愉しいんです、喜怒哀楽・艱難辛苦…人生模様は様々にあるでしょう?」
「私ではとてもとても辿り着けません。それに至る過程、その境地、真に尊敬申し上げます…。」
「私はかみ…これを読んだあなたの今後のご活躍を楽しみにしております。」
「あ?怒った?いやあこれはスリルあるなあ…。」
「スリル」
某ゲーム二次創作
飛べない翼、狩人にとってはただの〝肉〟である。この世の非情な現実だ━
塔の最上階、竜の子は項垂れていた。
《ボクハトベナイ…》
「大丈夫だ、君はまた飛べるようになる。」
傍らの青年が励ます。
竜の子は母竜と共に空を飛んでいた。
しかし刹那に沸き起こった積乱雲に巻き込まれ強風に煽られ墜落した時に翼が折れてしまった。
墜落した竜の子は散々母竜を呼んで鳴いていたが何故か来たのは竜語を解するこの青年ノエルだった。
当地は今は危ない状況というので別の空間に一時避難することになりノエルに連れられ竜の子は塔の最上階に来た。
こうして不安の中迎えを待って夜の風に吹かれている。
《ココニイタラ…ボクハタベラレル?》
「大丈夫、これから迎えが来るよ。」
ノエルは縮れた雲に爛々と街光に照らされているまばらな星空を見上げた。
竜の子が墜ちたこの地は━今、危険に満ち溢れていた。
「アルファ!ブラボー!チャーリー!標的はあの塔に逃げた!」
「デルタ了解!」
アサルトライフルを装備した人影は長い螺旋階段を素早く駆け上がっていく。
「すげーよ、この〝あんしスコープ〟って奴は暗闇でも遠くのものまで良く見える性能ガチだぜ!」
「モノクロ世界から解き放たれたってだけでもう十分よ!」
「この世界の〝肉〟を食べたらどうなるのか。最上層に熱源反応、近いぞ。」
「一番上ね!GOGOGO!」
上空の星空が歪に歪み始める闇夜に射し込まれる神々しい光と共に一体の霊獣麒麟が出現した。
麒麟は空間と重力を操る。
その力で全ての世界の行き場の無い子ども達を自らが作った世界で見守っている。
竜の子が狙われているというので急遽保護にやって来たのだった。
麒麟はその意で竜の子を地面から空中へふわり舞い上げる。
「行き場の無い子どもは私の世界へ、さあ行きましょう。」
《アリガトウ…》
「良かったな、後でお母さんに会えるように取り計らうから。」
「ちょっと待った〜!私達の獲物なんですけど!」
金髪の女が塔の下から直接〝飛んで〟きた。
〝肉〟を追う者達の一人でサイキック能力を使う。
女の前にノエルが立ち塞がる。
「やれやれ君たちは〝肉〟が関わると目の色を変えてこちらの話を聞きやしないな。」
「〝肉〟を食べたいって子がいるの、皆好きでしょ?」
「今回は無理な話だ、お取り引き願えないなら私も容赦しません。」
傍若無人な狩人の挑戦にノエルは膨大な闇の力の一端を開放する。
「う…流石に一対一じゃ…。」
「よっしゃー!」
「間に合った!」
「お待たせ!」
塔を階段から登ってきた3人が合流する。
「ワオ!グッドタイミング、あちらさんガチギレだよ〜!」
「いくよ令和最新装備!」
「とりまバズーカ撃っとくか?」
「援護は任せろ!」
一人対四人緊張の瞬間━
「こぉらあ〜!いけませんっ!!!」
一つ目の黄色い小柄なスライムが背後から物凄い勢いで走ってきた。
「せんせい!」
「やべ…!」
「うす!」
「どうするよ?」
「この度は生徒達がとんでもないことを…!」
「本当はこちらも私闘を禁じられていますので…。」
せんせいは小さな身体に大量の汗をかきながらノエルに謝る。
振り返りキッと四人に向けられた大きな瞳には呆れと悲しみと怒りが満ち溢れていた。
「キミたちっ!!この世界の〝肉〟は食べられないの!」
正座した四人を前にせんせいの怒涛の説教が始まる━
ヒトの性が起こした騒動はこうして決着した。
「本当にんげんって愚かね!それで?竜の子はママに会えたのかしら。」
ロックブーケは心底呆れはてた表情をしながら兄を見る。
「会えたよ、傷も癒えた頃だし今は同じ空を飛んでるだろう。」
ノエルは雲一つ無い晴天を見上げ同じ空に生きる竜の子を思いやる。
「飛べない翼」