愛颯らのね

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6/14/2024, 2:55:39 AM

お題 あじさい
[別れてくれない?]
一通のメールで終わらされた私の恋。
本気で愛していたのは私だけ。
彼のくれた好きは全て偽り。
私の初恋はちゃんとあったようですべて偽りだったらしい。
いや、私からの愛だけは嘘偽りないものだった。更新された彼のSNSにはあじさいを背景に知らない女とのツーショッの写真。そこには1ヶ月と書かれていた。

あじさいの花言葉は〝浮気〟

6/8/2024, 9:31:39 AM

お題 世界の終わりに君と


「寒いね。」
『寒いわ。』

当たり前だ。地球は今、氷期にある。
世界は今、終わろうとしている。

大気中に飛び交う無数の塵。
育たなくなる作物。食料を巡り戦う者。
そして、僕らのように諦めた者。

醜い世界だ。たったひとつの隕石によって
地球は変わってしまった。

きっとみんなわかっている。僕らはもう助からない。
それでも戦っているものが馬鹿らしく思える。
この寒い中、どうしてそうも動けるのか。
こんな世界に縛られているのはもうごめんだと思う。

「もうやりたいことはない?」
無意味な質問を君になげかける。
『あったとしても、できないでしょう?』
その通りである。この状況で実現できない夢を思い描くことはとても残酷だ。

「今日で俺らは自ら死ぬ。それであってるね?」
『ええ。そうよ。とても残念で仕方がないわ。』

僕たちは愛し合っていた。
この世界の誰よりも幸せな世界を生きていた。
だからこそ、僕らは死ぬ。

いつ死ぬか分からないこの世界に縛られるよりも
来世を願い自ら命を絶つことを願ったのだ。
そしてそれは、君も同じだった。

君の美しい黒髪を凍えるような冷たい風が抜けていく。
君の瞳からひとつ、涙がこぼれた。
そんな君を、僕は綺麗だと思った。

『あなたに出会えて、私はとても幸せだった。
それは私だけかしら?』
「それはないよ。僕だってとても幸せだった。
君とはまだ離れたくない。来世も僕と一緒になって
くれますか?」
『ええ。もちろんよ。私もそう願っていたわ。』
「それはよかった。」

再び沈黙が流れる。
こんな世界とはいえ、自ら命を絶つことには
多少の恐怖心が湧いてくる。

それでも僕らは死ぬ。
この地球に殺される。

僕らの死まで、あと一歩のところまで来た。

『本当に君はいいんだね?この世界を去っても。』
「あなたと一緒にいられるならどこでもいいわ。
貴方となりが私にとっての居場所なのよ。」

君の方を見る。
僕は近づいてきつく抱きしめる。
お互いの涙で肩を濡らしあった。
君の温もりは本当に温かくて一時も離したくないと願う。
それは、少なくともこの世界を生きている間には
叶わない願いだった。
ひとしきり泣いたあと、触れるだけのキスを交わす。
『それじゃ、一緒に逝こうか。』
「よろこんで。」

こうして僕らは、今にも崩れそうな高いビルから
解放への一歩を歩み始めた。




6/6/2024, 12:14:13 PM

お題 最悪

6/3/2024, 7:27:40 AM

お題 正直

私は、空気が読めないらしい。
じゃぁみんなは何が読めているんだろう。どんなことが書いてあるのだろう。
その答えを教えてくれる人は、今までに出会ったことがない。
きっとこれからも出会うことはないだろう。

私は、思ったことはすぐに言っちゃうし、みんなが今どういう雰囲気かなんてわからない。
“常識的に”とか“普通は”とか言われるけど、そんなこと学校で習っていない。
学校はいつも、人間として大事なことはほとんど教えてくれない。
だから私はわからない。

嘘をついちゃいけないということはわかる。
じゃぁ全部正直に言えばいいと思ったけど、そうはいかないらしい。

「私、字が書くの苦手なんだよね。」
といった子に、
「上半分は上手けど、下はちょとね。」
と言った。ただそう思ったからだ。

「女子としゃべるの苦手でよく男子と喋ってる。」
といった子には
「えーなんか男好きみたい。変なの。」
と言った。

その時、その子たちは少し黙った。それが何なのかもわからない。

ある日、私はふと周りを見渡した。
わたしは一人ぼっちになっていた。
別に悲しくはなかったけど、学生は友達がいないと何かと不便だ。

そこで、前は仲良くしていた柑奈に声をかけた。
「ねぇ柑奈?最近私と喋ってくれなくない?どうしたの?」
柑奈はわかりやすくため息をついた。
「またあんた?もううんざりなんだけど。何回言ったらわかるの?
 もっと空気読んでよ。今彼氏と喋ってるでしょ?」
空気を読む?今彼氏と喋ってる?彼氏と喋ってるときは話しかけちゃダメなのか。
私は「ごめんね」と言ってその場を立ち去った。

またある日。
私にはいつも一緒にいてくれる友達と呼べる人ができていた。
お昼休みに一緒にご飯を食べているときにそれは起こった。

「今何時だろ~」
そう言って私は、目の前にあった誰かのスマホの電源を付けた。
「あ、ライン来てるよ!えーと、【今何してる?今日も会いたいな~!】だって!
 すごーい!彼氏?」
私は、何も考えず画面に表示されていたメッセージを読み上げた。
「ちょっと、何するの!勝手に人のスマホ見ないでよ!本当常識ないよね。」
あれ、怒られた。
「ごめん。常識とかわかんなくって。というかスマホに見られちゃダメなものでもあるの?笑」
「はぁ?普通に考えればわかるでしょ?スマホなんて見られたくない人もいるんだよ?」
なんか、カチンとくる。そもそも私は時間確認したかっただけだし。
ちょっと話題を出してあげただけだし。
「そもそも普通って何よ!わからないものはしょうがないでしょ!あんたの基準押し付けてこない    
 でよね!」

そう言って私は席を外した。それから私たちが関わることはなった。
私からかかわりを絶ったのだ。

本当にどうしたらいいんだろう。
みんなはどうやって何も書いていない空気を読んでるのだろう。
全部正直に言えばいいのに。もっと広い心を持てばいいのに。

そう考えながら永い眠りにつく準備を進めていった。

6/1/2024, 12:20:16 PM

お題 梅雨


梅雨が好きな人なんて、いないと思ってた。
じめじめするし、髪の癖がでるし、何より〝雨〟が降る。

濡れるし空は暗いし気分が上がるはずがない。

きっと誰しもがそう思っていると
僕は決めつけていた。


君と出会うまでは。


「梅雨は憂鬱な気分になっちゃいますね。雨ばっかで。」

僕の隣の席に座った転校生。
よく手入れされているだろう美しく、黒く長い髪を持
君は顔を少しだけしかめた。

『私は、梅雨が好きです。人間の生活に必要な水が降ってく
るんですよ?素晴らしいことだと思います。それにお花も
育ちます。雨は悪いことってみんな言うけど、それは雨の
一面しか見ていないし、ただの思い込みのところもあると
思います。』

僕は唖然とする。
確かにそうだ。雨がない国が大変なのはきっとみんな知っている。そんな中、雨が嫌なんて贅沢だったのだろうか。

『それに、雨には縁起のいい言葉が沢山あるでしょう?』

「そうなの?ごめん。あまり詳しくなくて。」


「例えば、雨垂れ石を穿つ。
小さな努力も辛抱強く続けていればいつかは必ず成功するって意味。他には、雨降って地固まるとかこの言葉から、
雨の日の結婚式は演技がいいって言われてるんだよ!」

すごい。雨だけでこんなにあるのか。
きっとまだまだあるのだろう。
きっととても雨が好きなのだろう。
気づくと口調が少し砕けていた。

すると、君の顔が少しだけ赤く染まる。

「ご、ごめんね!私。こんなペラペラと喋って何様だよって感じだよね。本当にごめん!」

困り眉で顔の前に手を合わせる君。

そんな姿が可笑しくて思わず笑ってしまう。

『全然大丈夫だよ。それより、もっとお話聞かせてよ。』

「うん!」

ぱぁっと花火のように君の顔が明るくなる。
そんな君を見てどこか不思議な、苦しいような
ほわほわするような、そんな気持ちをこの時初めて感じた。

この気持ちの正体を知るまでは
きっとそう長くはかからないだろう。

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