愛颯らのね

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お題 正直

私は、空気が読めないらしい。
じゃぁみんなは何が読めているんだろう。どんなことが書いてあるのだろう。
その答えを教えてくれる人は、今までに出会ったことがない。
きっとこれからも出会うことはないだろう。

私は、思ったことはすぐに言っちゃうし、みんなが今どういう雰囲気かなんてわからない。
“常識的に”とか“普通は”とか言われるけど、そんなこと学校で習っていない。
学校はいつも、人間として大事なことはほとんど教えてくれない。
だから私はわからない。

嘘をついちゃいけないということはわかる。
じゃぁ全部正直に言えばいいと思ったけど、そうはいかないらしい。

「私、字が書くの苦手なんだよね。」
といった子に、
「上半分は上手けど、下はちょとね。」
と言った。ただそう思ったからだ。

「女子としゃべるの苦手でよく男子と喋ってる。」
といった子には
「えーなんか男好きみたい。変なの。」
と言った。

その時、その子たちは少し黙った。それが何なのかもわからない。

ある日、私はふと周りを見渡した。
わたしは一人ぼっちになっていた。
別に悲しくはなかったけど、学生は友達がいないと何かと不便だ。

そこで、前は仲良くしていた柑奈に声をかけた。
「ねぇ柑奈?最近私と喋ってくれなくない?どうしたの?」
柑奈はわかりやすくため息をついた。
「またあんた?もううんざりなんだけど。何回言ったらわかるの?
 もっと空気読んでよ。今彼氏と喋ってるでしょ?」
空気を読む?今彼氏と喋ってる?彼氏と喋ってるときは話しかけちゃダメなのか。
私は「ごめんね」と言ってその場を立ち去った。

またある日。
私にはいつも一緒にいてくれる友達と呼べる人ができていた。
お昼休みに一緒にご飯を食べているときにそれは起こった。

「今何時だろ~」
そう言って私は、目の前にあった誰かのスマホの電源を付けた。
「あ、ライン来てるよ!えーと、【今何してる?今日も会いたいな~!】だって!
 すごーい!彼氏?」
私は、何も考えず画面に表示されていたメッセージを読み上げた。
「ちょっと、何するの!勝手に人のスマホ見ないでよ!本当常識ないよね。」
あれ、怒られた。
「ごめん。常識とかわかんなくって。というかスマホに見られちゃダメなものでもあるの?笑」
「はぁ?普通に考えればわかるでしょ?スマホなんて見られたくない人もいるんだよ?」
なんか、カチンとくる。そもそも私は時間確認したかっただけだし。
ちょっと話題を出してあげただけだし。
「そもそも普通って何よ!わからないものはしょうがないでしょ!あんたの基準押し付けてこない    
 でよね!」

そう言って私は席を外した。それから私たちが関わることはなった。
私からかかわりを絶ったのだ。

本当にどうしたらいいんだろう。
みんなはどうやって何も書いていない空気を読んでるのだろう。
全部正直に言えばいいのに。もっと広い心を持てばいいのに。

そう考えながら永い眠りにつく準備を進めていった。

6/3/2024, 7:27:40 AM