お題 無人島に行くならば
無人島に行くなら何を持ってくかって話は誰しも一度はしたことがあると思う。食料を持っていくとか、ナイフを持っていくとか。
大学生になった今、久しぶりにその質問をされて出た答えは
そんなものじゃなかった。
───あなたを連れていきたい
意図して名もない無人島に行くことができるなら、間違いなく
そうするだろう。
そうしたら私だけがあなたを独り占めできる。
いつも横にいるあの煩わしい女からあなたを奪うことができる。
自分たちだけの世界で2人だけの時間を生きて、生きて生きて死ぬ。
どう頑張ってもあなたは私を認識せざるおえなくなって、
あなたは私のことを好きになるでしょう。
そんなことが実現できるなら、私はどれだけ厳しい生活でも
耐えられる。苦痛すら感じない。
あぁ、あなたが愛おしい。狂わしいほど愛してる。
付き合いたいとか結婚したいとかそんな在り来りの愛じゃない。
私のあなたに対する愛は、そんなにも軽々しい言葉で
表せるものではないもの。
なんて妄想を膨らませなから私はあなたに
「やっぱり、あなたのような頼もしい方がいると安心できるわ!」
なんて冗談めかしく言う。
私は本気よ。死ぬまであなたを想い続けます。
お題 手放す勇気
私には、勇気がない。何かと別れる勇気だ。
小学生の頃、物と別れる勇気がなかった。
私の部屋は、物まみれになった。
中学生の頃、人と別れる勇気がなかった。
自分の学力には全く合ってない、友達が行く高校を選んだ。
高校生の頃、いじめっ子と別れる勇気が出なかった。
友達だと思ってた人に、笑顔を奪われた 。
そして、大学生の今、彼から離れる勇気がない。
彼に支えられてると思ってるからだ。
この世界に私を見てくれるのは、彼だけ。
彼のためならなんでも出来る。彼がいないと生きていけない。
彼に捨てられるのが怖い。独りじゃ歩く道も分からない。
だから今日も私は、借りたお金を渡して、シャンパンを飲む。
お題 桜
桜が咲いた。
綺麗な桜を写真に撮った。
送りたいと思う人がいるから。
すると、ピコンと通知が鳴った。
【写真が送信されました】
すぐにタップすると、画面に桜の写真が映っていた。
何も文が添えられていないのが彼らしい。
同じタイミングて同じ写真を送ろうとしていたことが
ちょっと嬉しくって、嫌でも口角が上がっちゃう。
私も今撮った写真を送った。
『私も今ちょうど送ろうと思ってた笑』
という文と一緒に。
「そうなんだ笑」
『うん!綺麗に咲いたね〜』
この写真を送ろうと思ったのは、ただ綺麗な桜を見せたかった以外に理由がある。
『お花見行きたいな〜』
それは、彼をお花見に誘うため!
「親と行かないの?笑」
『だってみんな友達とかと行ってるもん
ちょっと寂しいじゃん?笑』
「つまり?笑」
断られませんように。
『一緒にお花見行かない?』
「笑笑」
「いいよ。行こ。」
お題 記憶
真冬の暗い夜道を冷たい風に身を震わせながら歩く。
今日はなんだか左手が冷たい。風の音もよく聞こえる。
いつもの公園まで来てベンチに腰かけた。
頭の上から振ってくる温かい声がない。
公園に響く笑い声もない。
しばらく1人で震えてから、立ち上がった。
握るもののなくなった左手で涙を拭う。
まだ鮮明なあなたのことを思いながら
今日から1人、この道を歩く。
お題 秋晴れ
今日は秋晴れ。
昨日まで雨だったから晴れはすっごく嬉しい。
だって今日は、
秋祭り
秋祭りと言っても私の地区で開かれる小さなお祭りだけど、
大事なのは誰と行くかだよね!
そう、そのお相手が…
私の最愛の彼氏なのです!
この前の夏に付き合ったばかりのだいっすきな彼氏。
受験生だから一緒に遊びにけることはほとんどなかった。
でも寂しくはないの。だって今日は会えるから!
集合場所はブランコの下。
集合時間より20分も早く来ちゃった。
それでも待ったのはほんの数分。タイトな黒ズボンの白い服の上に黒いジャケットを羽織っていた。
「ごめん、待った?」
「ううん!ぜーんぜん!楽しみすぎて早く来ちゃった。」
「俺も一緒。」
行こっかって彼が言ってさりげなく私の手を取った。
ドキンとしたのは多分彼も一緒。耳が真っ赤っかだもん。
そんなところも大好きだけど!
早速私たちは、ずっといい匂いがしていたキッチンカーの列に並んだ。お目当てはチーズハットグ。
だいぶ長い列かと思ったけど、2人でいればあっという間だった。チーズハットグは美味しくて、それから……
不意に眩しさを感じて目を開ける。
あぁ、朝か。
また同じ夢。もう何回目だろ。
さらに私を憂鬱な気分にさせたのは、壁にかかってる
カレンダー。
今日、10月19日欄には、小さく『秋祭り』と書かれていた。
体が重たくて、二度寝しようと思ったけど、
どうにも寝れなくて諦めた。
仕方なく起きて、顔を洗って、歯を磨いて、朝ごはんを食べる。いつもの朝。
そして気づいたら夜だった。
今日の夜は親が誰もいないから、お祭りで夜ご飯買ってねっ
言われた。
正直行きたくないけど、夜ご飯のためなら仕方ない。
可愛いヘアアレンジをしたり、かわいい服を選んだりすることも無く、それなりの服で1000円を握りしめて家を出た。
お祭りのやってる場所まで、こんなに遠かったっけ。
周りのことがこんなに気になったっけ。
お店の列はこんなに長かったっけ。
何も握っていない左手が寂しさを際立てた。
イヤホンで爆音で音楽を流しながら、わざわざ2回も並んで
唐揚げと焼きそばを買った。チーズハットグは、買わなかった。
目に入るカップルがこんなに鬱陶しく思うなんて知らなかった。
彼がいなくなってから、新しく知ることばかりだった。
もう、帰ろう。
目的は果たしたし、もうここにいる意味はない。
そう思ったけど、やっぱりお祭りの雰囲気には勝てなくて
少しだけ遠回りをして、お祭りを見て回ろうとした。
でも、それが間違いだった。
聞こえた気がしたんだ。私を呼ぶ声が。
一瞬、気づかなかったし、幻聴だと思った。
だってもう彼は、
そこには
薄く光る彼がいた。
永遠の別れをしたはずの、元彼が。