お題 愛を叫ぶ
「好きだー!!!!」
私はほぼ毎日、この誰もいない丘で好きだと叫んでいる。
誰かに見られたら確実に怪しまれる。
それでもこの行き場のない好きを叫び続ける。
私が好きなのは、幼なじみの颯人。
小さい頃からいつも一緒で、いつも助けてくれる。
そんな私だけのスーパーかっこいいヒーローだった。
でもそんな思いも、今は持ってていいのか悩んでいる。
今日の声が小さいのもそのせいだ。
私は見てしまった。颯人が私以外の女子といるところを。
1度では無い。何度か一緒にいた。
凄く仲が良さそうだった。
その女子が颯人のことが好きなのかはわからない。
でも明らかに普通ではなかった。
嫌だって思った。
だって私の颯人だもん。
いつも私が1番でいてくれてたもん。
それなのに、
私はその場にしゃがみこむ。
誰もいないのをいいことに、我慢していた涙を流す。
壊れたように泣いた。泣き続けた。
「好きなのに。大好きなのに。」
『なにがそんなに好きなんだ?』
え!?
振り向かなくても分かる。
私の大好きな声。
「は、颯人?なんでここにいるの?」
『最近お前の様子がおかしかったから、探してた。
お前が来るならここだろうと思ったから、
すぐ見つかったけどな。』
探してくれてたんだ。
それだけで嬉しくて思わずのやけそうになる。
『で。どうして泣いてんの?何がそんなに好きなんだ?』
「颯人には、言えないよ…」
『なーんで。いつもなんでも喋ってくれてただろ?
なんでも聞くからさ?』
もういっそ、言ってしまった方が楽なのかもしれない。
そう思えてきた。
あぁ言ってしまおう。もうどうでもいいや。
「…颯人が好き。」
とても小さい声になった。
『え?もう1回言って?』
「だから、颯人が好きなの!」
言っちゃった。
『…そっか。』
やっぱ言わなきゃよかった。
コロコロと変わる感情に自分でもついていけなくなる。
『先に言われちゃったなぁ。』
ん?
「何を?」
『何をって、好きだって。』
「どういうこと?だって前…」
『俺、ずっとお前のことが好きなの。』
なんで。じゃぁ前いたのは誰?
『前いたのは従兄弟ね。』
え?え?
『お前、俺が他の奴といたの気にしてんだろ?
それは悪かったと思うけど 、従兄弟だから許してくれ。』
そっか。全部私の勘違いか。
そっか。そっか!そっか!やった!
「じゃぁ颯人は私の事好きなの!?私と付き合っ」
『まーって。俺が言いたいの。』
息を飲む。心臓からドクドク音がする。
『好きだよ。大好き。だから、付き合ってください。』
「はい。もちろんです!」
『あー好き。ほんと好き。好きだー!!!』
「ちょっと。急に叫ばないでよ〜。
まぁ私も毎日叫んでたけど笑」
こうして私たちの幸せな日々が始まりました。
お題 モンシロチョウ
私の心の中には、いつもモンシロチョウがいる。
物心ついて少しした頃から確かいたと思う。
このモンシロチョウの正体を私は知っている。
これはきっと、私の母だ。
私の本当の母は、私が小さい頃に亡くなっている。
家も、写真も、母も、全て燃えてしまったから、
私は母の顔を知らない。
でも家が燃える前の日に、私はその家でモンシロチョウ見た
母と育てていた芋虫だった。
ちょうど前日にさなぎから蝶になった。
その瞬間に、子供ながら酷く心打たれたことを
鮮明覚えている。
それが母との最後の記憶。
だから私の心の中で、母はまだモンシロチョウとして
生きている。
困った時、辛い時、誰かと話したい時、私はいつも
心のモンシロチョウに話しかける。
でも最近、このモンシロチョウと話すだけではどうしようも
ならない問題に頭を抱えている。
家での私の立場
家が燃えた日、仕事で家にいなくてまだ生きている父と
しばらく2人で暮らしていた。
でもある日、
父は再婚した。
その再婚した女性には私の一個下になる娘もいた。
そして2人とも私を毛嫌いした。
私は母にあたる人の奴隷になった。
妹に当たる人の雑用係になった。
そして父はそのことに気づかなかった。
いや、多分気づかない振りをしていた。
唯一血の繋がった父に見捨てられたのが1番辛かった。
新しい服も学校で必要な物も買って貰えなかった。
人間は、自分と違う人間を除け者にする。
だから私は、虐められた。
約3年。耐えた。
でももう無理。生きていけない。
私は心のモンシロチョウに言った。
今から会いに逝くね。
お題 忘れられない、いつまでも
「あんたのせいで忘れられなくなった!!もう許さない!」
そういって取り出した果物ナイフを振りかざすも、
闇雲な攻撃は全てかわされ、先に私が力つきた。
さすがに自分よりも大きな男性には勝てなかった。
『別に特別何かした訳ではないだろう?』
少し息の上がっている彼は、少し苦しそうだ。
夜の公園に急に呼び出されて殺されそうになったのにも
関わらず、正気を保っているあんたがまた尺に触れる。
「あんたが!私の人生を狂わせた!!あんたなんかいなければ!」
私の怒りは収まらない。
あんたに全て狂わされたから。
あれだけ優しくしてきて、好きにさせておいて
…あんなにこっぴどく振るなんて。
約2年。私に足りてなかった愛を
両手では持ちきれないほどたくさんくれた。
いっぱい遊んで喋って笑って。
〝特別〟をたっくさんくれた。
それなのに、それなのに、
浴びせられたのは私の心を壊すには十分すぎる言葉だった。
〔頑張りたいことあるから別れるって言ってるやん?〕
〔何回同じ説明させんの〕
〔お前といたせいで2年間人生無駄にしたわ〕
〔まじで邪魔だった〕
急に人が変わったようになった口調で私の心は壊れた。
毎日毎日泣いた。
そして、その悲しみはだんだん怒りに変わっていった。
なんで私を裏切ったの?
ずっと一緒って言ってくれてたよね?
私が1番って言ってくれてたのに、
私より大事なものがあるの?それってなんなの?
ウザイ、ウザイウザいウザいウザいウザいウザいウザい
だから今日呼び出した。
そして今、少しづつ距離を詰めている。
この奥にある壁は角になっていて、きっと逃げられない。
今日、殺してやる。
私は大好きだったのに。
大好きって言ってくれてたのに。
真後ろにある壁にもう逃げられないことを知ったのだろう。
彼の顔が少し曇った。
ふっと微笑んだ後、大きくナイフを振り上げる。
飛び散る血紅色。
少し遅れて響く汚い叫び声は…私の声。
彼が感じるはずの痛みは、今私が感じている痛み。
「お、お前、何を!」
『ふぅ〜危なかった。ちゃんと撮れてるかな〜。』
そう言っズボンのポケットからスマホを出して確認しだした
思い出すと、カメラだけが少し見えていた。
私は最後の力を振り絞り、お前を刺すため足に力を入れた。
…はずだったが、立てなかった。
『あ、無理に動かない方がいいよ。
といっても、多分もう死ぬけど。』
『じゃあね。今までたくさんのご迷惑ありがとう。」
嫌味を込めた言い方に腹が立つも、どうしようもできない。
あぁ、死ぬんだ。
最期に聞こえた声は、頭の中に響く
優しく名前を呼んでくれる、大好きな人の声だった。
お題 1年後
1年あったら、みんなどのくらい変わるのかな。
勉強が得意になる人。
恋人ができる人。
お友達が増える人。
得意なことができる人。
でもきっと、いい事ばかりではない。
家族がなくなってしまう人。
勉強についていけなくなる人。
学校に行けなくなってしまう人。
恋人と別れてしまう人。
私の一年後は、奇跡でも起きない限りいいものではない。
1年後で私を待っているのは〝死〟だから。
周りの人、特に今目の前で泣いてる君は奇跡を強く信じてる
でも私は違う。
奇跡なんて都合のいいものは存在しない。
これは私の生きてきた17年でしっかり証明されている。
本当は今そうやって言ってやりたいけど、今君に言ったら
きっと収拾がつかないほど泣いてしまうだろう。
(もう手遅れな気もするけど)
この1年は、私にとって最後の1年。
私はずっと前から心の準備はできていた。
それは彼も一緒だと言っていたが
実際、余命1年とは想像よりもはるかに恐ろしいものだった
高校生にもなった男が声を上げてわんわん泣いているのが
何よりも証拠だ。
「ねね。あと1年になったからさ、前言ってたのやろうよ」
『…あれ、本当にやるの?』
「もちろん!どうせならなにか残しておきたいし。」
残しておきたいという言葉に、また彼は少し
顔を歪めた。
〝あれ〟というのは、もし私に余命宣告されることが
あったら、私たちの今までの人生を小説にして書く
というものだった。
入院が多かった私と、よくこの部屋に来てくれていた彼は
よくここで本を読んでいた。
そこで私は、人生で1度くらい書いてみたいと思ったのだ。
でも私は飽き性だから、彼と一緒に書こうってわけ。
「いいよね?」
少し止まったあと、控えめに頷いてくれた。
「やった!そうと決まれば早くやろ!」
こうして私たちの人生を振り返っていった。
笑ったり、時々君が泣いたりしながら
たくさんたくさん時間をかけて、書いていった。
思い出話だけで終わってしまう日もあった。
とても楽しい日々だった。
本当にずっと続いて欲しかった。
それでも、完成が近づくにつれて、だんだん私の
元気はなくなっていき、早1年が経とうとしていた。
最後の力を振り絞って、君に伝える。
「この物語の最後は、君に託したよ。」
お題 初恋の人
初恋の人、思い出すとぐーっと胸が苦しくなる。
まだ中学生だった私の甘酸っぱい恋。
私が人生で1番好きだった人。
まだ好きかもしれない人。
一日中彼のことを考えていた。
夢の中にもいつも彼がいた。
好きだなって気づいたのは
ある日、私が座って君のことを見つめていた時、
彼は少し手を丸めて
「そんな目で俺を見るな」
って少し照れながら言われた時。
触られたところが、妙にドキドキじんじんとした。
その時の手の温かさが今でも忘れられない。
特別扱いも沢山してくれた。
学校帰りに一緒に帰って、近くの公園で毎日喋った。
私が分からないところを、私がわかるまで
分かりやすくして教えてくれた。
2人っきりだったのが、嬉しかったけど緊張した。
髪の毛をといて、結んでくれたこともあった。
綺麗なポニーテールだったな。
毎日毎日楽しかった。
そんな私の初恋は一瞬で崩れて、なくなった。
いっぱいいっぱい好きにさせてきた彼には、彼女がいた。
2年ほど付き合っていたそうだ。
当時中学生私にとって2年とはとてもとても長い時間だった
諦めたくなかった。絶対私のが彼のことが好きだと
確信できるほど好きだった。
それでもどうしようもなかった。
彼がこっちを見てくれることはなかったし、
私が告白することもなかった。
何度も好きだと言おうとした。
でもその度浮かんでくるのが、顔も知らない彼女さん。
そうやって私の初恋は終わりを告げていった。
…はずだったんだけどね。