お題 明日世界が終わるなら
「ねね。これみて。」
歩きスマホは危ないぞと言おうと思ったのをやめ、スマホを覗き込む。
そこに書かれていたのは、明日でこの世界が終わるという
占いが出たという、いかにも胡散臭いニュースだった。
なんにも、その占い師は今までに多くのことを
予言し、ことごとく当ててきたそうだ。
まぁ、俺は信じてないけど。
『こんなの俺は信じないよ?』
「それは私も一緒。でもさ、想像してみるのはいいじゃん」
それもそうだ。
『君だったらどうするの?』
「んー美味しいものいっぱい食べる。
あと、ママとパパにいっぱいありがとうって言う。」
君らしい回答だなって思う。
『じゃぁ、幸樹だったらどうするの?』
俺だったらか。
少しだけ、面白い回答をしたいと思ったのは
君の驚く顔が見たかったから。
「好きなやつに告る。」
『え!?あの幸樹が!?嘘でしょ!?好きな人いるの!?』
なかなか失礼なやつだ。
俺だって人生で1人くらい好きな人がいるのに。
『ねね。どんな人どんな人?かわいい?』
「んー時々失礼で鈍感な人。」
『なにそれ。本当に好きな人なの?』
「うん。昔から。」
『へぇ〜。まぁ世界が終わるとならないと送れないのは
幸樹っぽいけどね。』
「じゃぁお前は告れるのかよ。」
『もちろん!やってみようか?』
やってみようか?もう好きなやつがいたのか…
LINEでも送るのかな。
振られちゃえばいいのに
なんて思いたくもないけど、思ってしまう。
こんな俺が嫌いだ。
君大きな目でこっちを見ている。
やめろ。そんな目で見るな。これ以上好きにさせるな、
『…好きだよ?幸樹』
え
『ずっと昔から大好き』
『でも、幸樹には好きな人がいたんだね。ざーんねん』
「ちがっ。俺が好きなのは──」
昔から君だけなんだよ。彩春。
そういうと君は溢れんばかりの笑顔で
俺に抱きついてきた。
これが俺らの幸せの始まりだった。
お題 君と出会って
君と出会って私の人生は大きく変わった。
死にたがりの私に楽しさをくれたのは君だった。
だから私のヒーローだね。
喧嘩もいっぱいしたけど、好みはどんどん似ていった。
考えることも一緒になっていった。
今では喋らなくても君が言いたいことがわかる。
それはきっと君も一緒。
私たちはずっと一緒だった。
毎日毎日いっぱい喋った。
それでも私たちは喋り飽きなかった。
いつまでもいつまでも喋って、笑い続けると思ってた。
──あの日が来るまでは。
その日、私たちはいつもの場所で待ち合わせをしてた。
少し寝坊した私は、少し急いでそこに向かった。
案の定、そこにはもう君が待っていた。
道路を挟んだ向かいの場所。
私は信号が青なことを確認して渡った。
だけど、気づくと何かに突き飛ばされていた。
目の前に広がるのは血紅色。
そして、そこにいるはずのない私のヒーロー、時ちゃんが
倒れていた。
「時ちゃん!」
時ちゃんが私を助けてくれたんだ。
あの衝撃は時ちゃんが私押したんだ。
そのせいで、時ちゃんが。
すぐに近寄ったが、圧倒的な出血量。
動かない体。冷たくなりつつある時ちゃん。
あぁだめだ。私を庇って時ちゃんは死ぬんだ。
自然と涙が零れる。周りの人の声が雑音にしか聞こえない。
私は時ちゃんにずっと声をかけ続けた。
届かない声を送り続けた。
しばらくして、遠くから救急車の音がした。
そこからのことは、あまり覚えていなかった。
そして今日、時ちゃんの命日から49日。
私は今、学校の屋上にいる。
久しぶりに学校に来たから、ほんの少しだけクラスメイトが
騒いでいた気がする。
でも声をかけてくれる人は私にはいない。
だからもう、何も気にせず会いに逝ける。
時ちゃんは今日、きっと天国に行く。
私は今日、殺人を起こす。
自分殺す。
だからきっと地獄に逝く。
それでもいい。こんな世界もう嫌だ。
少しでもヒーローの近くにいたいから。
今から逝くね。時ちゃん。
お題 耳を澄ますと
耳をすまして聞こえてくるのは、青春の詰まった音。
吹奏楽部の少しズレた音。
運動部の大きな声。
時々廊下を歩く生徒の楽しげな声。
怒鳴る顧問の声はあまり好きじゃないな。
こんな音の中に入れてないのが私。
私だけの屋上で空を見ながら耳を澄ます。
これがいつもの私。
世界に入れていない私。
屋上に登れることを知ってる人は極わずか。
知ったとしてもバレた時のことを考えると、のぼてくる人は
ほとんどいない。
そんな中、私ともう1人、のぼってくるやつがいる。
耳に届く階段を上ってくる音。
あぁ。また来たのか。
「また来たの?来ないでって言ってるでしょ。」
『そういう時の君の顔はいつも少し苦しそうだ。』
「だからそんなことないってば。勝手な勘違い。」
私は人と関わるのが苦手だ。
多分喋れなくはない。でもものすごく疲れる。
なんで関わらないといけないのかいつも疑問に思う。
いつもこんなことを話したあと、
彼は私の少し離れたところに寝転ぶ。
今日もそうなると思ってた。
『ねぇ。世界に入ってみない?』
は?
こいつは何を言い出すんだ。
私には無理だし嫌だ。
『少しくらい見てみたくない?君がいつも聞いてる世界を』
なんで私が世界を聞いてるって思ったんだろうか。
『そんな顔してるからだよ。』
全部お見通しってわけか。
確かにみんなが生きる世界について気になることはある。
なんでわざわざ人と関わるのか。
なんで汗を流してベトベトになりながら部活をするのか。
なんであんなに楽しそうに輝いて生きているのか。
そのことを少しでも知れるなら行ってみる価値はあるのかもしれない。
具体的なことは知らない
でもきっと、こいつが全部みせてくれるのだろう。
私は彼を信じてみる。
「いいよ。少しだけ入ってみる。みんなの生きてる世界に」
『よしのった。いくぞ。』
彼は立ち上がって、私の手をとった。
その横顔はすごく輝いて見えた。
これが私の人生を大きく変えるきっかけとなったのは
また別のお話。
お題 2人だけの秘密
「好きなんだよ」
え、
「浮気者にしたい訳じゃないけどさ、まぁ、ね?」
そんなこと、今更言わないでよ。
私、彼氏いるもん、。
もう遅いじゃん。
こんなことを急に言ってきたのは、私が約2年間も片思いをして、諦めたばっかの純平という男だ。
ずっとずっと大好きで、一日中彼のことを考えていた。
夢でも見るほどだ。
でも、私の初恋は終わった。
彼には長く付き合っている彼女がいた。
その事を知った日は、大好きなチョコも味がなかった。
毎日が憂鬱で、辛くて辛くてたまらなかった。
クラスでひとりぼっちの私にとって
純平は私の最後の希望だった。
それがなくなった今、私の生きる意味って何?
そんなことを考えながらも、毎日しぶとく生きていた。
そんな時に声をかけてくれたのが、今の彼氏。
彼はとことん優しかった。でも、優しいだけだった。
その優しさも、今に私にはもう向けてくれない。
だから別れようと思ってたのは事実。
そんな中での告白。
私は迷った。
別れる予定とはいえ、まだ付き合っている彼氏がいる。
でも気の変わりやすい純平。
大好きだった。いや、きっとまだ好きな人。
きっと今しかない。
私は覚悟を決めた。
純平の目を真っ直ぐみる。
にこっと笑って、ずっと言いたかったセリフを言う。
「私も純平のことが好きだよ!」
あぁ言ってよかった。
悩んでいたとは思えないほどすんなりと
このときを待ってたように飛び出してきた。
純平はキツく私を抱きしめる。
彼特有の赤ちゃんのような甘い、優しい匂いが鼻腔を埋める
「ほんと可愛い好き。でも、まだみんなには内緒だからね」
これが私と彼の2人だけの秘密
そういえば、純平と純平の彼女さんはこの時
どんな関係だったのでしょう。
お題 優しくしないで
もう、優しくしないで。
偽りの優しさなんていらない。
わかってるんだよ。みんなが本当は私の事嫌いだって。
だって、いつも言ってるじゃん。
みんながいない時は「死ね」とか「消えろ」とか。
なのに自分の評価ばっか気にして、今度は道具として使う。
みんなの前では、優しくしてくる。
その優しさが、だいきらい
優しくして欲しいって思うのに、優しさが大嫌いなんて。
私は壊れちゃったのかな。
壊れちゃったから、今こんなことしてるのかな。
首にはハンドタオルが結ばれてる。
あとは手すりにかけるだけ。
頭に何かが集中して集まる感覚がする。
息が吸えない。足の力は抜いている。
自分の体重全部が首にかかる。
人間、死ぬのは簡単だ。
ただ気持ちが決まらないだけ。
そんなことに今気づきながら死んでいく。
今更気づいても遅いかな
気づいた時には何も無かった。
天国も地獄もない。【無】
それでもいい。私には生きる勇気がなかっただけ。
天国に行きたかったんじゃなくて、地獄から逃げたかっただけ。ただそれだけの人生だった。