お題 君と出会って
君と出会って私の人生は大きく変わった。
死にたがりの私に楽しさをくれたのは君だった。
だから私のヒーローだね。
喧嘩もいっぱいしたけど、好みはどんどん似ていった。
考えることも一緒になっていった。
今では喋らなくても君が言いたいことがわかる。
それはきっと君も一緒。
私たちはずっと一緒だった。
毎日毎日いっぱい喋った。
それでも私たちは喋り飽きなかった。
いつまでもいつまでも喋って、笑い続けると思ってた。
──あの日が来るまでは。
その日、私たちはいつもの場所で待ち合わせをしてた。
少し寝坊した私は、少し急いでそこに向かった。
案の定、そこにはもう君が待っていた。
道路を挟んだ向かいの場所。
私は信号が青なことを確認して渡った。
だけど、気づくと何かに突き飛ばされていた。
目の前に広がるのは血紅色。
そして、そこにいるはずのない私のヒーロー、時ちゃんが
倒れていた。
「時ちゃん!」
時ちゃんが私を助けてくれたんだ。
あの衝撃は時ちゃんが私押したんだ。
そのせいで、時ちゃんが。
すぐに近寄ったが、圧倒的な出血量。
動かない体。冷たくなりつつある時ちゃん。
あぁだめだ。私を庇って時ちゃんは死ぬんだ。
自然と涙が零れる。周りの人の声が雑音にしか聞こえない。
私は時ちゃんにずっと声をかけ続けた。
届かない声を送り続けた。
しばらくして、遠くから救急車の音がした。
そこからのことは、あまり覚えていなかった。
そして今日、時ちゃんの命日から49日。
私は今、学校の屋上にいる。
久しぶりに学校に来たから、ほんの少しだけクラスメイトが
騒いでいた気がする。
でも声をかけてくれる人は私にはいない。
だからもう、何も気にせず会いに逝ける。
時ちゃんは今日、きっと天国に行く。
私は今日、殺人を起こす。
自分殺す。
だからきっと地獄に逝く。
それでもいい。こんな世界もう嫌だ。
少しでもヒーローの近くにいたいから。
今から逝くね。時ちゃん。
5/5/2024, 1:08:49 PM