愛颯らのね

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お題 1年後


1年あったら、みんなどのくらい変わるのかな。

勉強が得意になる人。
恋人ができる人。
お友達が増える人。
得意なことができる人。

でもきっと、いい事ばかりではない。

家族がなくなってしまう人。
勉強についていけなくなる人。
学校に行けなくなってしまう人。
恋人と別れてしまう人。

私の一年後は、奇跡でも起きない限りいいものではない。

1年後で私を待っているのは〝死〟だから。

周りの人、特に今目の前で泣いてる君は奇跡を強く信じてる

でも私は違う。

奇跡なんて都合のいいものは存在しない。

これは私の生きてきた17年でしっかり証明されている。

本当は今そうやって言ってやりたいけど、今君に言ったら
きっと収拾がつかないほど泣いてしまうだろう。
(もう手遅れな気もするけど)

この1年は、私にとって最後の1年。

私はずっと前から心の準備はできていた。

それは彼も一緒だと言っていたが
実際、余命1年とは想像よりもはるかに恐ろしいものだった

高校生にもなった男が声を上げてわんわん泣いているのが
何よりも証拠だ。

「ねね。あと1年になったからさ、前言ってたのやろうよ」

『…あれ、本当にやるの?』

「もちろん!どうせならなにか残しておきたいし。」

残しておきたいという言葉に、また彼は少し
顔を歪めた。

〝あれ〟というのは、もし私に余命宣告されることが
あったら、私たちの今までの人生を小説にして書く
というものだった。

入院が多かった私と、よくこの部屋に来てくれていた彼は
よくここで本を読んでいた。

そこで私は、人生で1度くらい書いてみたいと思ったのだ。

でも私は飽き性だから、彼と一緒に書こうってわけ。

「いいよね?」

少し止まったあと、控えめに頷いてくれた。

「やった!そうと決まれば早くやろ!」

こうして私たちの人生を振り返っていった。

笑ったり、時々君が泣いたりしながら
たくさんたくさん時間をかけて、書いていった。

思い出話だけで終わってしまう日もあった。
とても楽しい日々だった。
本当にずっと続いて欲しかった。

それでも、完成が近づくにつれて、だんだん私の
元気はなくなっていき、早1年が経とうとしていた。

最後の力を振り絞って、君に伝える。


「この物語の最後は、君に託したよ。」


5/8/2024, 1:09:39 PM