愛颯らのね

Open App

お題 忘れられない、いつまでも


「あんたのせいで忘れられなくなった!!もう許さない!」

そういって取り出した果物ナイフを振りかざすも、
闇雲な攻撃は全てかわされ、先に私が力つきた。

さすがに自分よりも大きな男性には勝てなかった。

『別に特別何かした訳ではないだろう?』

少し息の上がっている彼は、少し苦しそうだ。

夜の公園に急に呼び出されて殺されそうになったのにも
関わらず、正気を保っているあんたがまた尺に触れる。

「あんたが!私の人生を狂わせた!!あんたなんかいなければ!」

私の怒りは収まらない。
あんたに全て狂わされたから。

あれだけ優しくしてきて、好きにさせておいて

…あんなにこっぴどく振るなんて。

約2年。私に足りてなかった愛を
両手では持ちきれないほどたくさんくれた。

いっぱい遊んで喋って笑って。
〝特別〟をたっくさんくれた。

それなのに、それなのに、

浴びせられたのは私の心を壊すには十分すぎる言葉だった。

〔頑張りたいことあるから別れるって言ってるやん?〕
〔何回同じ説明させんの〕
〔お前といたせいで2年間人生無駄にしたわ〕
〔まじで邪魔だった〕

急に人が変わったようになった口調で私の心は壊れた。

毎日毎日泣いた。

そして、その悲しみはだんだん怒りに変わっていった。

なんで私を裏切ったの?
ずっと一緒って言ってくれてたよね?
私が1番って言ってくれてたのに、
私より大事なものがあるの?それってなんなの?

ウザイ、ウザイウザいウザいウザいウザいウザいウザい

だから今日呼び出した。

そして今、少しづつ距離を詰めている。

この奥にある壁は角になっていて、きっと逃げられない。

今日、殺してやる。

私は大好きだったのに。
大好きって言ってくれてたのに。

真後ろにある壁にもう逃げられないことを知ったのだろう。
彼の顔が少し曇った。

ふっと微笑んだ後、大きくナイフを振り上げる。

飛び散る血紅色。

少し遅れて響く汚い叫び声は…私の声。

彼が感じるはずの痛みは、今私が感じている痛み。

「お、お前、何を!」

『ふぅ〜危なかった。ちゃんと撮れてるかな〜。』

そう言っズボンのポケットからスマホを出して確認しだした

思い出すと、カメラだけが少し見えていた。

私は最後の力を振り絞り、お前を刺すため足に力を入れた。

…はずだったが、立てなかった。

『あ、無理に動かない方がいいよ。
といっても、多分もう死ぬけど。』

『じゃあね。今までたくさんのご迷惑ありがとう。」

嫌味を込めた言い方に腹が立つも、どうしようもできない。

あぁ、死ぬんだ。

最期に聞こえた声は、頭の中に響く

優しく名前を呼んでくれる、大好きな人の声だった。






5/9/2024, 1:04:15 PM