愛颯らのね

Open App
5/9/2024, 1:04:15 PM

お題 忘れられない、いつまでも


「あんたのせいで忘れられなくなった!!もう許さない!」

そういって取り出した果物ナイフを振りかざすも、
闇雲な攻撃は全てかわされ、先に私が力つきた。

さすがに自分よりも大きな男性には勝てなかった。

『別に特別何かした訳ではないだろう?』

少し息の上がっている彼は、少し苦しそうだ。

夜の公園に急に呼び出されて殺されそうになったのにも
関わらず、正気を保っているあんたがまた尺に触れる。

「あんたが!私の人生を狂わせた!!あんたなんかいなければ!」

私の怒りは収まらない。
あんたに全て狂わされたから。

あれだけ優しくしてきて、好きにさせておいて

…あんなにこっぴどく振るなんて。

約2年。私に足りてなかった愛を
両手では持ちきれないほどたくさんくれた。

いっぱい遊んで喋って笑って。
〝特別〟をたっくさんくれた。

それなのに、それなのに、

浴びせられたのは私の心を壊すには十分すぎる言葉だった。

〔頑張りたいことあるから別れるって言ってるやん?〕
〔何回同じ説明させんの〕
〔お前といたせいで2年間人生無駄にしたわ〕
〔まじで邪魔だった〕

急に人が変わったようになった口調で私の心は壊れた。

毎日毎日泣いた。

そして、その悲しみはだんだん怒りに変わっていった。

なんで私を裏切ったの?
ずっと一緒って言ってくれてたよね?
私が1番って言ってくれてたのに、
私より大事なものがあるの?それってなんなの?

ウザイ、ウザイウザいウザいウザいウザいウザいウザい

だから今日呼び出した。

そして今、少しづつ距離を詰めている。

この奥にある壁は角になっていて、きっと逃げられない。

今日、殺してやる。

私は大好きだったのに。
大好きって言ってくれてたのに。

真後ろにある壁にもう逃げられないことを知ったのだろう。
彼の顔が少し曇った。

ふっと微笑んだ後、大きくナイフを振り上げる。

飛び散る血紅色。

少し遅れて響く汚い叫び声は…私の声。

彼が感じるはずの痛みは、今私が感じている痛み。

「お、お前、何を!」

『ふぅ〜危なかった。ちゃんと撮れてるかな〜。』

そう言っズボンのポケットからスマホを出して確認しだした

思い出すと、カメラだけが少し見えていた。

私は最後の力を振り絞り、お前を刺すため足に力を入れた。

…はずだったが、立てなかった。

『あ、無理に動かない方がいいよ。
といっても、多分もう死ぬけど。』

『じゃあね。今までたくさんのご迷惑ありがとう。」

嫌味を込めた言い方に腹が立つも、どうしようもできない。

あぁ、死ぬんだ。

最期に聞こえた声は、頭の中に響く

優しく名前を呼んでくれる、大好きな人の声だった。






5/8/2024, 1:09:39 PM

お題 1年後


1年あったら、みんなどのくらい変わるのかな。

勉強が得意になる人。
恋人ができる人。
お友達が増える人。
得意なことができる人。

でもきっと、いい事ばかりではない。

家族がなくなってしまう人。
勉強についていけなくなる人。
学校に行けなくなってしまう人。
恋人と別れてしまう人。

私の一年後は、奇跡でも起きない限りいいものではない。

1年後で私を待っているのは〝死〟だから。

周りの人、特に今目の前で泣いてる君は奇跡を強く信じてる

でも私は違う。

奇跡なんて都合のいいものは存在しない。

これは私の生きてきた17年でしっかり証明されている。

本当は今そうやって言ってやりたいけど、今君に言ったら
きっと収拾がつかないほど泣いてしまうだろう。
(もう手遅れな気もするけど)

この1年は、私にとって最後の1年。

私はずっと前から心の準備はできていた。

それは彼も一緒だと言っていたが
実際、余命1年とは想像よりもはるかに恐ろしいものだった

高校生にもなった男が声を上げてわんわん泣いているのが
何よりも証拠だ。

「ねね。あと1年になったからさ、前言ってたのやろうよ」

『…あれ、本当にやるの?』

「もちろん!どうせならなにか残しておきたいし。」

残しておきたいという言葉に、また彼は少し
顔を歪めた。

〝あれ〟というのは、もし私に余命宣告されることが
あったら、私たちの今までの人生を小説にして書く
というものだった。

入院が多かった私と、よくこの部屋に来てくれていた彼は
よくここで本を読んでいた。

そこで私は、人生で1度くらい書いてみたいと思ったのだ。

でも私は飽き性だから、彼と一緒に書こうってわけ。

「いいよね?」

少し止まったあと、控えめに頷いてくれた。

「やった!そうと決まれば早くやろ!」

こうして私たちの人生を振り返っていった。

笑ったり、時々君が泣いたりしながら
たくさんたくさん時間をかけて、書いていった。

思い出話だけで終わってしまう日もあった。
とても楽しい日々だった。
本当にずっと続いて欲しかった。

それでも、完成が近づくにつれて、だんだん私の
元気はなくなっていき、早1年が経とうとしていた。

最後の力を振り絞って、君に伝える。


「この物語の最後は、君に託したよ。」


5/7/2024, 1:01:07 PM

お題 初恋の人

初恋の人、思い出すとぐーっと胸が苦しくなる。

まだ中学生だった私の甘酸っぱい恋。

私が人生で1番好きだった人。
まだ好きかもしれない人。

一日中彼のことを考えていた。

夢の中にもいつも彼がいた。

好きだなって気づいたのは
ある日、私が座って君のことを見つめていた時、
彼は少し手を丸めて
「そんな目で俺を見るな」
って少し照れながら言われた時。
触られたところが、妙にドキドキじんじんとした。

その時の手の温かさが今でも忘れられない。

特別扱いも沢山してくれた。

学校帰りに一緒に帰って、近くの公園で毎日喋った。

私が分からないところを、私がわかるまで
分かりやすくして教えてくれた。
2人っきりだったのが、嬉しかったけど緊張した。

髪の毛をといて、結んでくれたこともあった。
綺麗なポニーテールだったな。

毎日毎日楽しかった。

そんな私の初恋は一瞬で崩れて、なくなった。

いっぱいいっぱい好きにさせてきた彼には、彼女がいた。
2年ほど付き合っていたそうだ。

当時中学生私にとって2年とはとてもとても長い時間だった

諦めたくなかった。絶対私のが彼のことが好きだと
確信できるほど好きだった。

それでもどうしようもなかった。

彼がこっちを見てくれることはなかったし、
私が告白することもなかった。

何度も好きだと言おうとした。
でもその度浮かんでくるのが、顔も知らない彼女さん。

そうやって私の初恋は終わりを告げていった。


…はずだったんだけどね。

5/6/2024, 11:53:40 AM

お題 明日世界が終わるなら


「ねね。これみて。」
歩きスマホは危ないぞと言おうと思ったのをやめ、スマホを覗き込む。
そこに書かれていたのは、明日でこの世界が終わるという
占いが出たという、いかにも胡散臭いニュースだった。

なんにも、その占い師は今までに多くのことを
予言し、ことごとく当ててきたそうだ。

まぁ、俺は信じてないけど。

『こんなの俺は信じないよ?』

「それは私も一緒。でもさ、想像してみるのはいいじゃん」

それもそうだ。

『君だったらどうするの?』

「んー美味しいものいっぱい食べる。
あと、ママとパパにいっぱいありがとうって言う。」

君らしい回答だなって思う。

『じゃぁ、幸樹だったらどうするの?』

俺だったらか。
少しだけ、面白い回答をしたいと思ったのは
君の驚く顔が見たかったから。

「好きなやつに告る。」

『え!?あの幸樹が!?嘘でしょ!?好きな人いるの!?』

なかなか失礼なやつだ。
俺だって人生で1人くらい好きな人がいるのに。

『ねね。どんな人どんな人?かわいい?』

「んー時々失礼で鈍感な人。」

『なにそれ。本当に好きな人なの?』

「うん。昔から。」

『へぇ〜。まぁ世界が終わるとならないと送れないのは
幸樹っぽいけどね。』

「じゃぁお前は告れるのかよ。」

『もちろん!やってみようか?』

やってみようか?もう好きなやつがいたのか…
LINEでも送るのかな。

振られちゃえばいいのに

なんて思いたくもないけど、思ってしまう。
こんな俺が嫌いだ。

君大きな目でこっちを見ている。

やめろ。そんな目で見るな。これ以上好きにさせるな、

『…好きだよ?幸樹』



『ずっと昔から大好き』


『でも、幸樹には好きな人がいたんだね。ざーんねん』

「ちがっ。俺が好きなのは──」

昔から君だけなんだよ。彩春。

そういうと君は溢れんばかりの笑顔で
俺に抱きついてきた。

これが俺らの幸せの始まりだった。

5/5/2024, 1:08:49 PM

お題 君と出会って


君と出会って私の人生は大きく変わった。

死にたがりの私に楽しさをくれたのは君だった。

だから私のヒーローだね。

喧嘩もいっぱいしたけど、好みはどんどん似ていった。

考えることも一緒になっていった。

今では喋らなくても君が言いたいことがわかる。

それはきっと君も一緒。

私たちはずっと一緒だった。

毎日毎日いっぱい喋った。

それでも私たちは喋り飽きなかった。

いつまでもいつまでも喋って、笑い続けると思ってた。

──あの日が来るまでは。


その日、私たちはいつもの場所で待ち合わせをしてた。
少し寝坊した私は、少し急いでそこに向かった。

案の定、そこにはもう君が待っていた。

道路を挟んだ向かいの場所。

私は信号が青なことを確認して渡った。

だけど、気づくと何かに突き飛ばされていた。


目の前に広がるのは血紅色。

そして、そこにいるはずのない私のヒーロー、時ちゃんが
倒れていた。

「時ちゃん!」

時ちゃんが私を助けてくれたんだ。
あの衝撃は時ちゃんが私押したんだ。

そのせいで、時ちゃんが。

すぐに近寄ったが、圧倒的な出血量。
動かない体。冷たくなりつつある時ちゃん。

あぁだめだ。私を庇って時ちゃんは死ぬんだ。

自然と涙が零れる。周りの人の声が雑音にしか聞こえない。
私は時ちゃんにずっと声をかけ続けた。
届かない声を送り続けた。

しばらくして、遠くから救急車の音がした。

そこからのことは、あまり覚えていなかった。


そして今日、時ちゃんの命日から49日。

私は今、学校の屋上にいる。

久しぶりに学校に来たから、ほんの少しだけクラスメイトが
騒いでいた気がする。

でも声をかけてくれる人は私にはいない。

だからもう、何も気にせず会いに逝ける。

時ちゃんは今日、きっと天国に行く。

私は今日、殺人を起こす。

自分殺す。

だからきっと地獄に逝く。

それでもいい。こんな世界もう嫌だ。

少しでもヒーローの近くにいたいから。

今から逝くね。時ちゃん。

Next